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マンガでわかる「オペラ」の見かた 監修/小畑恒夫 イラスト/ヤギワタル

第5回

サロメ

2018.05.22更新

読了時間

「フィガロの結婚」「トゥーランドット」「椿姫」「トリスタンとイゾルデ」などなど……。オペラには、女と男の愛、騙し騙され合いの駆け引き、生死を賭けた戦い…などなど、人間のドラマが色濃く描かれています。本連載では『マンガでわかる「オペラ」の見かた』単行本出版を記念して、書籍から厳選コンテンツを特別公開!
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ドイツの名作

銀の盆に乗った憧れの男の生首に接吻するサロメ
サロメ

作曲:R・シュトラウス
原作:オスカー・ワイルド『サロメ』
台本:ヘドヴィッヒ・ラハマン(ドイツ語)
初演:1905年12月9日 ドレスデン/宮廷歌劇場 構成:1幕/約1時間45分

R・シュトラウスのオペラ出世作 不道徳で官能的な世紀末的作品

R・シュトラウスは、交響詩といわれる文学や絵画などのイメージを取り入れた楽曲を多く作曲しましたが、ワーグナーの影響でオペラも手掛けるようになりました。オスカー・ワイルドの劇『サロメ』から題材を得て、そのドイツ語訳に付曲しました。元々は新約聖書マルコ伝の話ですが、戯曲では少女が憧れの預言者の生首に接吻するという衝撃的な場面が加えられています。

前奏曲も間奏曲もなく、最初から最後まで一貫してワーグナー風の音楽が流れ、異様な緊張感がもたらされています。合わせて、シュトラウスらしい交響詩的で魅惑的な管弦楽が使われているのが特徴です。

この作品の見せどころはなんといっても第4場のサロメの舞曲でしょう。7つのベールを一枚一枚身体から取り去りながら官能的に踊り、生首を手に入れた後に長大な独り語りを歌います。踊りは10分を要し、最初から最後までほとんど舞台に出突っ張りのサロメ役は難役中の難役といわれています。

シュトラウスのオペラ出世作で、初演で成功した後、欧米各地で続々と上演されました。しかし、筋に不道徳な要素が含まれ、あまりに官能的刺激が強いため、いくつかの都市では上演禁止となった作品なのです。

リヒャルト・シュトラウス 交響詩の作曲家が転身して進んだオペラの道

プロフィール

生名:リヒャルト・シュトラウス
誕生日:1864 年6 月11 日
出身地:ドイツ/ミュンヘン
死没:1949 年9 月8 日

主なオペラ作品

・サロメ(1905年 ドレスデン)
・エレクトラ(1909年 ドレスデン)
・ばらの騎士(1911年 ドレスデン)
・ナクソス島のアリアドネ(1916年 ウィーン)
・影のない女(1919年 ウィーン)
・アラベッラ(1932年 ドレスデン)
・カプリッチョ(1942年 ミュンヘン)

モーツアルトを基礎にワーグナー的オペラを作曲

R・シュトラウスは交響詩という、詩、文学、絵画などの要素を取り入れた形式の音楽を最も得意としていました。交響詩『英雄の生涯』の後、オペラ作曲家の道を歩んでいきます。
父親がホルン奏者で、徹底した音楽の英才教育を受けます。モーツァルトやメンデルスゾーンなどの作品を模範として作曲をしていました。父親はワーグナーには否定的でしたが、本人は結局ワーグナーの影響を受けてオペラ作曲家となります。指揮者としても活躍し、ミュンヘンの宮廷劇場の楽長、ベルリン第一宮廷楽長も務めました。

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著者

著者:小畑恒夫 イラスト:ヤギワタル

小畑 恒夫:昭和音楽大学教授、日本ヴェルディ協会理事、日本ロッシーニ協会運営委員。東京藝術大学卒業。オペラと声楽を中心に教育、研究、評論、啓蒙活動を行う。音楽専門誌での批評活動、オペラ公演のプログラムやCD解説の執筆、オペラ講座・放送などでも活躍。著書に『ヴェルディのプリマ・ドンナたち』(水曜社)『ヴェルディ 作曲家・人と作品』(音楽之友社)、共著に『オペラ・キャラクター解読辞典』(音楽之友社)、訳書に『ロッシーニ 仮面の男』(音楽之友社)『評伝ヴェルディ』(草思社)など多数。

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