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第10回

環境を変えれば、行動パターンも変わる

2019.04.11更新

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臆病、意地っ張り、せっかち…。あなたは自分の「性格」に苦労していませんか? 性格は変えられないというのはじつはウソ。性格とは、人が生きていく上で身に付けた「対人戦略」なのです。気鋭の認知科学者である苫米地英人博士が、性格の成り立ちや仕組み、変え方などを詳しく解説します。
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 ではこれから、いかにマイナスの自己イメージや、思考や行動の傾向を変えていくか、その方法について、具体的に考えていきましょう。

 最初に、もっとも手っ取り早い方法をお伝えしましょう。
 それは「自分を分析し、そのうえで、周りの人よりも『理想的な』ふるまいをする」というものです。
 人が抱いている自己イメージのほとんどは、「身のまわりの何人かと自分を比べて、自分に勝手に貼ったレッテル」にすぎません。
 たとえば、「自分は暗い性格だ」と思っている人の場合、単に「家族や友人と比べて、自分のものの考え方や行動がネガティブだと感じている」とか「その人と周りの人の行動を比べた第三者に『暗いね』と言われた」といったことから、その自己イメージができあがっているケースが多いのです。
 ですから、「自分は暗い性格だから、明るくなりたい」と思っている人は、周りの人よりも少し、「明るい」と評価されそうなものの考え方やふるまいをするよう心がけましょう。
 人の思考や行動が明るいか暗いかを判断する、絶対的な基準などありません。
 相対的に明るくなるだけでいいのです。

 さて、次に考えられるのが、「環境を変える」という方法です。
 思考や行動の傾向は、ブリーフシステムと環境(特に、対面している相手や一緒にいる相手)の組み合わせによって決まります。
 脳の前頭前野には、過去の経験をもとに作られた無数のブリーフシステムが蓄えられており、そのときの環境や置かれている状況に応じて、「このような場面では、このように行動するべきである」「このタイプの人に対しては、このようにふるまうべきである」といった決定を下すわけです。

 多くの人が、家族の前と職場で異なる行動の傾向を見せるのは、ブリーフシステムが「家族の前では、こういったふるまいをしなければならない」「職場では、こういったふるまいをしなければならない」と決定しているからです。
 上司の前と部下の前で態度が違う人の脳内には、「上司の前では低姿勢にふるまう」「部下の前では強気にふるまう」といったブリーフシステムができあがっているのでしょう。
 私たちは相対する環境によって、無意識にブリーフシステムを使い分けているのです。

 ですから、環境が変われば、自ずと思考や行動の傾向も変わります。

 たとえば、「すぐにくよくよしてしまう自分」に悩んでいる人は、一度考えてみてください。

 あなたは、いつもくよくよしていますか?
 それとも、「この人と一緒にいるとくよくよしてしまう」「このような場面だとくよくよしてしまう」など、特にくよくよしてしまう状況はありますか?
 逆に、「この人となら、この場面なら、あまりくよくよしない」と思うことはありますか?

 もし、特にくよくよしてしまう環境があるなら、そこからできるだけ遠ざかることを考えましょう。
 特定の友だちの前でくよくよしてしまうなら、その友だちと距離を置いてつきあう。
 職場でくよくよしてしまうなら、職場を変える。
 そうすれば、くよくよすることは、かなり少なくなるでしょう。

「いつもくよくよしている」という人なら、海外など、まったく違う土地にある程度の期間旅行したり、住んでみたりするのもいいかもしれません。

 一方で、くよくよしないでいられる人と過ごす時間、くよくよしないでいられる場面を増やしていきましょう。

「職場を変える」「海外に住む」というのは、いささか極端かもしれませんが、本当に思考や行動の傾向を変えたいのであれば、ときには大きな変化も必要です。
「どうしても、そこまで思い切れない」という場合は、「新しい知り合いをつくる」「新しい場所に行ってみる」など、環境を変えるために、できる範囲のことから始めてみてください。

 なお、「思考や行動の傾向は、相手によって変わる」という考え方は、対人戦略にも応用できます。
 ビジネスにおいては、上司や部下、取引先などに「望ましい『性格』」になってもらうことで、物事がスムーズに進むようになります。
 おそらくみなさんも、「上司がもっと大らかな性格だったら」「部下に、もう少し慎重になってほしい」などと思ったことがあるのではないでしょうか。
 そんなとき、いったいどうすればいいのか。
「性格を変える」のは不可能ですが、相手の行動の傾向を変えることは可能です。

 人は、対面している、もしくは一緒にいる相手の態度や行動にひきずられがちです。
「穏やかな考え方をする人と一緒にいると、自分も穏やかになる」「喧嘩腰の人と話していると、自分も喧嘩腰になってしまう」といった経験は、誰にでもあるはずです。
 同様に、「上司に大らかになってほしい」と思ったら、まず自分が大らかな態度を示し、「部下に慎重になってほしい」と思ったら、まず自分が慎重になってみましょう。
 必ず効果が現れるとは限りませんが、試してみる価値は十分にあると思います。

■ ポイント

・私たちは置かれた環境によって、無意識にブリーフシステムを使い分けている。
・環境を変えると、使うブリーフシステムも変わり、性格が変わる。
・職場や住む場所など、大きな環境の変化は行動パターンに強く影響する。

 

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著者

苫米地 英人

1959年、東京都生まれ。認知科学者、計算機科学者、カーネギーメロン大学博士(Ph.D)、カーネギーメロン大学CyLab兼任フェロー。マサチューセッツ大学コミュニケーション学部を経て上智大学外国語学部卒業後、三菱地所にて2年間勤務し、イェール大学大学院計算機科学科並びに人工知能研究所にフルブライト留学。その後、コンピュータ科学の世界最高峰として知られるカーネギーメロン大学大学院に転入。哲学科計算言語学研究所並びに計算機科学部に所属。計算言語学で博士を取得。徳島大学助教授、ジャストシステム基礎研究所所長、通商産業省情報処理振興審議会専門委員などを歴任。

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