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第3回

4〜6話

2019.12.25更新

読了時間

 「超訳」本では軽すぎる、全文解説本では重すぎる、菜根譚の全体像を把握しながら通読したい人向け。現代人の心に突き刺さる「一文超訳」と、現代語訳・原文・書き下し文を対照させたオールインワン。
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4 権謀術数(けんぼうじゅっすう)を使わない人は最高にすばらしい


【現代語訳】
地位が高くて勢いのある人やお金がいっぱいあって派手な人に近づかない人は、清潔で良い。もっとも清潔なのは、それらに近づいてもまったく影響を受けず、自分を通し続ける人である。また、権謀術数を知らない人は、高尚な人だ。もっとも高尚なのは、それを知っていても使わない人である。

【読み下し文】
勢利紛華(せいりふんか)(※)は、近(ちか)づかざる者(もの)を潔(きよ)しと為(な)し、之(これ)に近(ちか)づきて而(しか)も染(そ)まざる者(もの)を尤(もっと)も潔(きよ)しと為(な)す。智械機巧(ちかいきこう)(※)は、知(し)らざる者(もの)を高(たか)しと為(な)し、之(これ)を知(し)りて而(しか)も用(もち)いざる者(もの)を尤(もっと)も高(たか)しと為(な)す。

(※)勢利紛華……「勢利」は権勢と利益、「紛華」は粉色と華美。なお、『論語』でも孔子は「未(いま)だ貧(ひん)にして楽(たの)しみ、富(と)みて礼(れい)を好(この)む者(もの)に若(し)かざるなり」(学而第一)と、本項と同趣旨のことを述べている。
(※)智械機巧……権謀術数。智巧機械ともいう。西郷隆盛も「作略(さりゃく)は平日(へいじつ)に致(いた)さぬものぞ。作略(さりゃく)を以(もっ)てやりたる事(こと)は其(そ)の迹(あと)を見(み)れば善(よ)からざること判然(ばんぜん)にして、必(かなら)ず悔(く)いあるなり」(『西郷南洲遺訓』)と本項と似たことを述べている。

【原文】
勢利紛華、不近者爲洯、近之而不染者爲尤洯。智械機巧、不知者爲高、知之而不用者爲尤高。

5 つらいことがないと人は成長しない


【現代語訳】
日ごろ、まわりからあれこれと気にくわない忠告や意見を言われ、また、思い通りに進まないことがあることによって、人は徳を磨き日々成長していける。これらは人生の砥石(といし)なのだ。もし、お世辞のような良い言葉ばかりを言われ、何事も思いのままに進んでいると、それは自分の人生を猛毒のなかに入れてしまうようなものである(いずれ、必ずひどいことになってしまう)。

【読み下し文】
耳中(じちゅう)、常(つね)に耳(みみ)に逆(さか)らうの言(げん)(※)を聞(き)き、心中(しんちゅう)、常(つね)に心(こころ)に払(もと)るの事(こと)有(あ)りて、纔(わず)かに是(こ)れ(※)徳(とく)に進(すす)み行(おこな)いを修(おさ)むるの砥石(しせき)なり。若(も)し言言(げんげん)耳(みみ)を悦(よろこ)ばし、事事(じじ)心(こころ)に快(こころよ)ければ、便(すなわ)ち此(こ)の生(せい)を把(と)って鴆毒(ちんどく)(※)の中(なか)に埋在(まいざい)せん。

(※)耳に逆らうの言……気にくわない忠告や意見。なお、アメリカの芸術家マヤ・リンは「飛ぶためには抵抗がなければならない」と、本項と同趣旨のことを言っている。
(※)纔かに是れ……であることによって。かろうじて。「纔か」は僅少の意味。
(※)鴆毒……鴆という鳥の羽を酒にひたしてつくる猛毒。鴆は中国広東省の山奥にいたという

【原文】
耳中常聞逆耳之言、心中常有拂心之事、纔是進德修行的砥石。若言言悅耳、事事快心、便把此生埋在鴆毒中矣。

6 人生は毎日、喜びと楽しい気持ちがなければならない


【現代語訳】
強い風や激しい雨のときは、鳥さえも不安でおびえている。良い天気ですがすがしい風が吹いているときは、草や木も生き生きとしてうれしそうである。これでわかるように天地の間には、一日も欠かすことなく和気が必要だし、人の心には、一日も欠かすことなく喜びと楽しい気持ちがなければならない。

【読み下し文】
疾風(しっぷう)怒雨(どう)には、禽鳥(きんちょう)(※)も戚戚(せきせき)(※)たり。霽日光風(せいじつこうふう)(※)には、草木(そうもく)も欣欣(きんきん)(※)たり。見(み)るべし、天地(てんち)は一日(いちにち)も和気(わき)無(な)かるべからず、人心(じんしん)は一日(いちにち)も喜神(きしん)(※) 無(な)かるべからず。

(※)禽鳥……鳥類一般のこと。
(※)戚戚……不安で、おびえている。びくびくしている。なお、『論語』には「小人(しょうじん)は長(つね)に戚戚(せきせき)たり」(述而第七)とある。
(※)霽日光風……晴れて、良い天気ですがすがしい風が吹いている様子。
(※)欣欣……うれしそうな様子。楽しい様子。なお、後集102条の「欣然」参照。
(※)喜神……喜び楽しむ心。「神」は心、精神のこと。本項の解釈については、本書の前集61条、70条および1 0 4 条、107条も参照。

【原文】
疾風怒雨、禽鳥戚戚。霽日光風、草木欣欣。可見、天地不可一日無和氣、人心不可一日無喜神。

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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。海外に進出し、日本および日本人が外国人から尊敬され、その文化が絶賛されているという実感を得たことをきっかけに、日本人に影響を与えつづけてきた古典の研究を更に深掘りし、出版企画を行うようになる。近年では古典を題材にした著作の企画・プロデュースを手がけ、様々な著者とタイアップして数々のベストセラーを世に送り出している。著書に『超訳 孫子の兵法』『吉田松陰の名言100-変わる力 変える力のつくり方』(共にアイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術─相手の心を動かす「義」の思考方法』『全文完全対照版 論語コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 孫子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 老子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』(以上、誠文堂新光社)などがある。

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