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10代のための疲れた体がラクになる本 「朝起きられない」「集中できない」「やる気がでない」自分を救う方法 長沼睦雄

第2回

ストレスについて知っておこう

2023.07.04更新

読了時間

「授業に集中できない」「すぐにイライラする」「記憶力が低下した」……。これらは、慢性疲労が原因かもしれません。HSP第一人者の長沼睦雄医師が、疲れのメカニズム、疲労からの快復方法などを易しく解説した本が発売。本文から一部を特別公開します!
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 まずは「ストレス」の話から始めましょう。
 心身にかかる環境からの刺激のことを「ストレス刺激」といいます。
 友人関係がうまくいかない、クラスになじめない、先生が苦手、部活の先輩・後輩関係が大変、といった人間関係の悩みがありますね。
 授業についていけない、苦手な科目がある、成績が下がった、テストが近くなってもやる気が全然起きない、といった勉強に関する不安、心配ごともあります。
 進路の悩み、体形や容姿の悩み、家庭環境の問題を抱えている人もいるでしょう。
 人よりも感覚が過敏で、みんなは気にならないようなことも繊細に感じとってしまうためにすごく疲れる、というような人もいます。
 このような心理的なものばかりでなく、音や光や気圧などの物理的なもの、匂いや味や薬などの科学的なもの、感染や外傷などの炎症的なもの、さらには脱水や低血糖やアレルギーなどの体的なもの、これらはすべてストレス刺激です。
 体がさらされるこういったストレス刺激に対して、脳や体に生じる嫌だ・不快だと感じる反応を「ストレス反応」といいます。
 みなさんなにげなく「ストレス」という言葉を使っていて、精神的に負担がかかることだと思っていることが多いのですが、実際には、「脳や体に嫌悪・不快反応が起きている」ことを指します。心だけでなく、実際に体に影響をおよぼすのです。
 とくに、過剰なストレスがいろいろ重なったり、一度に強烈にふりかかったり、長期にわたって続いたりすると、脳や体に炎症が慢性化し、体の状態を調節している自動機能に異常が起き、長びく体調不良が発生してしまうのです。
 ストレスというのは、けっして心理的なものだけではなくて、実際に脳や体を乱すものになりうるのだということを、しっかり覚えておきましょう。

▼腸の不具合は腸だけの問題じゃない

 たとえば、緊張すると「お腹が痛くなって困る」という人がいます。10代にはかなり多いです。
 よく腹痛がある、下痢や便秘をひんぱんにくり返す、便秘が続いていたと思ったらいきなり下痢になる、お腹が張ってガス(おなら)がよく出る、といった腸の不調が出る。こうした症状があるのが「過敏性腸症候群」です。
 慢性的なストレス反応によって、自律神経の自動調節機能の乱れ、腸内細菌叢(腸内フローラ)の乱れ、腸粘膜の慢性炎症による乱れなどが起きていることが関係しています。
 そもそも腸は、副交感神経が優位になると運動が活発になり、交感神経が優位になると運動が停滞する仕組みになっています。そのため、緊張して交感神経が過剰に働いて腸管運動が抑制されるようなときには便秘や食欲低下になりやすく、緊張をゆるめようとして副交感神経が過剰に働くと腸管運動が促進され、腹痛や下痢になりやすくなります。
 ところが、変調を起こしている腸は、やがて、ストレス刺激に対して異常に過敏になり、少しの刺激にも反応するようになります。それで、緊張したときなど「いま痛くなったらすごく困るんだけど」と思う前に腸が反応してしまうのだと考えられています。
 自律神経の乱れ方によって、下痢になりやすい(高止まり)タイプ、便秘になりやすい(シャットダウン)タイプ、交互にくり返す(切り替わり)タイプ、両方が起こる(乱高下)タイプなどがあります。
 また、ストレス反応は交感神経を通して胃にも作用して、食欲が低下したり、胃もたれを起こしたりすることもあります。

 過敏性腸症候群の症状をかかえている人は、どうしても腸の不調のことばかり意識しがちですが、じつはほかにもいろいろな症状が出ていることがあります。腸の不具合だけでなく、倦怠感、不眠、過敏、頭痛、めまい、頭のモヤモヤなどの慢性疲労症候群の諸症状も起こしやすいのです。
 体の不調の原因と症状は、体だけの問題ではありません。こんなにいろいろな症状が出てしまうのは、脳にも慢性の炎症が起きていて、影響しあっているからなのです。
 けれども、これらがすべて脳の炎症から生じているとは思ってもみないというのが一般的なんですよね。
 脳と体は密接につながり、影響しあっています。
 とくに、脳と腸のつながりや、やりとりは、双方向でありとても密接です。そういう「相互関係」という視点をもって自分の体調と向き合う必要があるのです。

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著者

長沼 睦雄

十勝むつみのクリニック院長。1956年山梨県甲府市生まれ。北海道大学医学部卒業後、脳外科研修を経て神経内科を専攻し、日本神経学会認定医の資格を取得。北海道大学大学院にて神経生化学の基礎研究を修了後、障害児医療分野に転向。北海道立札幌療育センターにて14年間児童精神科医として勤務。平成20年より北海道立緑ヶ丘病院精神科に転勤し児童と大人の診療を行ったのち、平成28年に十勝むつみのクリニックを帯広にて開院。HSC/HSP、神経発達症、発達性トラウマ、アダルトチルドレン、慢性疲労症候群などの診断治療に専念し「脳と心と体と食と魂」「見えるものと見えないもの」のつながりを考慮した総合医療を目指している。

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