第9回
【認知症介護の本】ケアは一連の物語
2018.09.18更新
ユマニチュードは、フランスで生まれ、その効果の高さから「まるで魔法」と称される介護技法です。ユマニチュードの哲学では、ケアをするときに「人とは何だろう」と考え続けます。人は、そこに一緒にいる誰かに『あなたは人間ですよ』と認められることによって、人として存在することができるのです。「見る」「話す」「触れる」「立つ」の4つの柱を軸にした「技術」で、相手を尊重したケアを実現します。この連載では、ユマニチュードの考え方と具体的な実践方法を紹介します。
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ケアの5つのステップ
これまでユマニチュードの基本的な考え方(哲学)と「あなたを大切に思っている」ことを相手がわかる形で伝えるための「ユマニチュードの4つの柱」についてご紹介してきました。しかし、「ユマニチュードでは近くから見ることが大事、と聞いたので近くから話しかけてみたら、いきなり殴られてしまいました」というような相談を受けることがあります。そんなときには、実はうまくいかなかった理由があります。この章では、相手とよい関係を結ぶための手順について考えてみます。
ユマニチュードでは、ケアの目的を「相手とよい関係を結ぶこと」と定めています。人が誰かとよい関係を結んで楽しい時間を過ごすときに自然に行っていることを、ケアの場においても同様に行います。まるで一連の物語のように行うこの技術を「ケアの5つのステップ」と呼んでいます。
◆ 友人宅を訪問するとき
◆ 介護をするとき
ステップ1 出会いの準備[来訪を告げる]
誰かが会いに来てくれるのは、誰にとってもうれしいことです。友人の家に招かれたときには、まずドアベルを鳴らして、返事を待ちます。ケアを行うときも同じです。まずは自分の来訪を告げ、あなたのプライベートな空間に私が入ってもいいですか、と了承を得るための手順をふみます。
会いに行くときは、必ずノック
具体的にはノックをします。日本家屋でふすまや障子のお部屋であっても、ノックをします。物をたたくことで生じる音は、聴力が低下している人にも聞き取りやすいという特徴があるからです。
3回ノックして、3秒待ちます。返事がなければ、再びノックをして3秒待ちます。
認知症の人の特徴として、物事の理解や判断に時間がかかるようになることがあります。つまり、ノックの音を聞いてから「あ、誰か来たのかな?」と思い、「どうぞ」と迎える準備をするまでに、以前より時間がかかるようになっている可能性があります。待つことも大切な技術なのです。
返事があった場合はすぐに、返事がなかった場合は再びノックを3回行って様子を見た後で、部屋に入って行きます。
※ステップ2~5については、書籍で紹介しています。ぜひ手に取ってみてください。
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