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家族のためのユマニチュード その人らしさを取り戻す、優しい認知症ケア イヴ・ジネスト ロゼット・マレスコッティ 本田美和子

第12回

【認知症介護の本】愛情を表現することをためらわない

2018.09.27更新

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ユマニチュードは、フランスで生まれ、その効果の高さから「まるで魔法」と称される介護技法です。ユマニチュードの哲学では、ケアをするときに「人とは何だろう」と考え続けます。人は、そこに一緒にいる誰かに『あなたは人間ですよ』と認められることによって、人として存在することができるのです。「見る」「話す」「触れる」「立つ」の4つの柱を軸にした「技術」で、相手を尊重したケアを実現します。この連載では、ユマニチュードの考え方と具体的な実践方法を紹介します。
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「日本人には、こんなことはできません」という意見を、ユマニチュードを日本に紹介して以来たくさんお受けしました。とても近い位置に立ち、相手に触れながら目と目を合わせることは恥ずかしく思えます。「フランス人ならできるでしょうけれど、日本人には無理です」と思われても不思議ではありません。

 でも、家族や友人と日常的に頬にキスを交わし、挨拶として抱擁する文化のあるフランスでも、ケアの現場においては、近づいて目と目を合わせることも、ケアの場で言葉をあふれさせることもできていないことが多いのです。

 文化は国によって異なります。そして、それは後天的に、社会規範としてその国に暮らす人々が身につけていきます。しかし、認知症が進行していくと、後天的に身につけた社会規範は失われていきます。そして最後に残るのは、人が生まれ持った人間としての特性です。「ユマニチュード」はその人間の特性に着目して開発されたケアの技法です。

 私たちは、フランスをはじめとする欧州各国、米国、カナダ、タイ、中国、それから日本でユマニチュードを使ったケアを行ってきました。そして、ケアの現場で起きていること、ユマニチュードのケアへの反応に国による違いはないことを体験してきました。

 ユマニチュードでは、「人とは何だろうか」といつも考えます。そして、「あなたは大切な人間なのですよ」と相手が理解できる形で伝え続けます。伝えるためのその技術が、「見る」「話す」「触れる」「立つ」のユマニチュードの4つの柱を常に組み合わせて行う「マルチモーダル・コミュニケーション」と、すべてのケアを一連の物語として行う「ケアの5つのステップ」です。

 もちろん、最初は気恥ずかしいです。しかし、これは相手とよい関係を結ぶための技術なのです。「あなたのことを大切に思っています」と相手が理解できる形で伝えるためにはこれが不可欠だと私たちは考えています。まずは勇気を出してやってみてください。

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著者

イヴ・ジネスト/ ロゼット・マレスコッティ/本田美和子

【イヴ・ジネスト】ジネスト‐マレスコッティ研究所長。トゥールーズ大学卒業。体育学の教師で、1979年にフランス国民教育・高等教育・研究省から病院職員教育担当者として派遣され、病院職員の腰痛対策に取り組んだことを契機に、看護・介護の分野に関わることとなった。【ロゼット・マレスコッティ】ジネスト‐マレスコッティ研究所副所長。SASユマニチュード代表。リモージュ大学卒業。体育学の教師で、1979年にフランス国民教育・高等教育・研究省から病院職員教育担当者として派遣され、病院職員の腰痛対策に取り組んだことを契機に、看護・介護の分野に関わることとなった。【本田美和子(ほんだ・みわこ)】国立病院機構東京医療センター総合内科医長/医療経営情報・高齢者ケア研究室長。1993年筑波大学医学専門学群卒業。内科医。国立東京第二病院にて初期研修後、亀田総合病院等を経て米国トマス・ジェファソン大学内科、コーネル大学老年医学科でトレーニングを受ける。その後、国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センターを経て2011年より現職。

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