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第5回

【コラム】子供のためのお祭「地蔵盆」ワールド

2018.05.14更新

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【 この連載は… 】 元来、神社仏閣や日本庭園巡りは年齢層の高い人たちの趣味とされてきましたが、昨今ではSNSが身近になり幅広い世代が楽しんでいます。なかでも1200年の歴史がある京都はこの町でしか見ることのできない景色が残っており、そのひとつである日本庭園には様々な見どころがあります。本連載では、京都在住の庭園デザイナー・烏賀陽百合氏による、石組や植栽などの「しかけ」に注目して庭園を楽しむ方法を紹介します。

 八月後半、京都では「地蔵盆」という子供のためのお祭が行われる。

 各町内には「お地蔵さん」と呼ばれる祠に祀られた石のお地蔵さんがあり、赤い前掛けを付け、お花が飾られ、大切にされている。地蔵盆の日はその祠の前に敷物が敷かれ、子供はお菓子を貰い、福引きで景品も貰える。その日は夏休みの宿題をしなくても怒られないので、子供は一日近所の子とお地蔵さんの前で遊ぶ。大人達も集まって、のんびり喋って過ごす。何かドラマチックなことが起こるわけではないのだが、町内の人で運営される、アットホームなお祭だ。

 この地蔵盆、大人にとっては準備が大変。当番の人は事前に予算内でお菓子を買い、袋に小分けする。福引きの景品は、それぞれの子供の年齢を考えて見合ったものを購入。そして福引きのチケットも作らないといけない。面白い町内は、町家の二階からかごに載せた景品を下にいる子供にロープで渡している。一大エンターテイメントだ。

 私の友人は、町内に子供のいる世帯が少ないので毎年当番に当たり、かれこれもう10年やっている。彼女は大阪から引っ越して来たので、それまで地蔵盆というお祭の存在自体知らなかった。しかしすっかり地蔵盆の中心的存在になり、今では町内長さんに意見できるほどになった。本人曰く「地蔵盆のエキスパート」だそうだ。

 こういうお祭に参加する良い面は、地域のコミュニティに入りやすいという点だ。京都は閉鎖的と言われるが、こういうお祭が他の土地から引っ越して来た人を受け入れる窓口になる。神戸から京都に引っ越して来て町屋のゲストハウスをやっている人も、地蔵盆の当番をこなし、打ち合わせ場所を提供して、近所とのお付き合いを円滑にしている。

 京都では、お祭が果たす役割は大きい。お祭りに参加すると見えてくる、京都人との付き合い方がある。地元の人とのコミュニケーションの手段として、お祭は今も大切なツールになっている。地蔵盆は子供のためのお祭だけでなく、大人の手腕も発揮されるお祭なのだ。

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著者

烏賀陽 百合

京都市生まれ。庭園デザイナー、庭園コーディネーター。同志社大学文学部日本文化史卒業。兵庫県立淡路景観園芸学校、園芸本課程卒業。カナダ・ナイアガラ園芸学校で3 年間学ぶ。イギリスの王立キューガーデンでインターンを経験。2017年3月にN Yのグランドセントラル駅構内に石庭を出現させ、プロデュースした。現在東京、大阪、広島など全国のNH K文化センターで庭園講座、京都、鎌倉でガーデニング教室を行う。また毎日新聞旅行で庭園ツアーも開催。著書に『一度は行ってみたい 京都絶景庭園』(光文社)がある。

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