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よみものどっとこむ

胎内記憶でわかった こどももママも幸せになる子育て 産婦人科医 池川明

第8回

疲れているお母さんを休ませるために、逆子になることもある

2017.10.16更新

読了時間

【 この連載は… 】 人間の神秘「胎内記憶」から子育てを考える。胎内記憶研究の第一人者の医師がたどり着いた境地とは? 親の論理ではなく「子どもの本音」に耳を傾けた、子どもの「才能=生きる力」を強くする胎教法と育児法を紹介。

 赤ちゃんが逆子だということで悩んでいるお母さんがいました。逆子を正常な向きに戻すため、良いといわれているいろいろな方法を試しているのですが、なかなかうまくいかなかったようです。

 私のクリニックでは、たいわ士さんと呼んでいる、お腹の中の赤ちゃんや生まれて間もない赤ちゃんとコミュニケーションをとるのが上手な方が、妊婦さんたちの相談に乗ってくださっています。なぜ、しゃべりもできない赤ちゃんとコミュニケーションができるのかと不思議に思うかもしれません。確かに不思議です。でも、お母さんは、赤ちゃんの泣き声や表情から、赤ちゃんが何を言いたいのかわかることがありますよね。そういう感性が、普通の人より少しだけ敏感な方と考えてもいいと思います。

 私は、お産に不安を抱えているお母さんがいると、たいわ士さんを紹介することがあります。ほとんどのお母さんは、たいわ士さんから、お腹の赤ちゃんがどんなことを思っているのかを聞くと、とても安心して、出産がとてもスムーズにいくのです。どうやって、赤ちゃんの気持ちをキャッチするのか、その理屈はわかりませんが、お母さんを安心させることは、出産がうまくいくためにはとても大切なことです。そういう意味で、たいわ士さんは、私にとっては、強力な助っ人です。

 逆子が治らないと悩んでいるお母さんも、たいわ士さんとお話をして、解決策を見つけてくれることがあります。そのときのたいわ士さんからのアドバイスは、簡単なもので、

「赤ちゃんとお話しすることが大事ですよ」

 ということだけでした。そんなことくらいで逆子が良くなるんですかって、だれもが首を傾げます。でも、実際に、「お母さん、とっても困っているから元に戻ってね」と話すだけで逆子が治ったという例もあります。うそみたいな本当の話です。今は、話をすることの大切さが忘れられていますね。話せばわかる! これは、お腹の赤ちゃんにも言えることです。

 お腹の中で赤ちゃんが逆子になるのは理由があってのことです。赤ちゃんが何かを訴えているのです。にもかかわらず、お母さんも医療者も、赤ちゃんの意志を聞こうとしません。逆子だと、帝王切開になるから早く元に戻しましょうと、それだけが頭にあるのですから、赤ちゃんの立場からすれば、一番の当事者を無視してどうするのというところではないでしょうか。

 逆子になる赤ちゃんには、いろいろな言い分があります。逆子で生まれることを自ら選ぶこともあるので、逆子がすべてダメということではないことは知っておいていただきたいと思います。

 このお母さんは、ちょっと、お父さんとうまくいってなかったこともあったりして、とても寂しい思いをしていました。出産に対する不安もありました。離婚することになったら生活はどうすればいいだろうと、そんなことでも悩んでいました。そういう寂さ、悩みは、赤ちゃんに伝わっていきます。赤ちゃんは、お母さんのことがとっても心配でした。きっと、なでなでしたり、おいしいものを思い浮かばせたりしたのでしょう。それでも効果が出なかったので、逆子になって、お母さんに自分の方を向いてもらって、いろいろなことをお話ししようとしたのだと思います。

 お母さんは、たいわ士の方のアドバイスに従って、自分の寂しい気持ち、出産が心配なことを、正直に赤ちゃんに話しました。そうしたら、なんとその夜に、赤ちゃんは正常な向きに戻ってくれたのです。

 赤ちゃんは、お母さんにこう言いたかったのだと思います。

「もっと正直になって」「自分の気持ちをごまかさないで」

 お母さんは、赤ちゃんに自分の心のうちを話して、気持ちがすっきりしました。そして、自分は1人じゃないんだ。寂しくなんかないじゃないか。この赤ちゃんとだったらどんな苦労だって耐えられる。そんなふうに思えるようになりました。もし、お腹の中の赤ちゃんが、逆子にもならず、何の問題もなければ、そんな機会もなかったかもしれません。

 もう1人紹介します。その方は、自分が逆子だったことで母親を苦しめたのではないだろうかと、大人になっても気になっているという人でした。記憶を戻して、お腹の中にいるときに戻るという瞑想をしました。そして、胎児になった自分に、なぜ逆子になったのだろうと、問いかけてみました。そうしたら、声らしきものが聞こえてきました。

「お母さんを休ませたかったんだ」

 はっとしました。確かに、自分がお腹にいるとき、お母さんはとても忙しかったと聞いていました。くたくたに疲れていても、責任感の強い人だったので、休むことができませんでした。少しでも休ませてあげるにはどうしたらいいか? これは、何か体に異変を起こすしかない。そんなことで、自分は逆子になったのだと、その方は、思い出したのです。母親を苦しめるために逆子になったのではなくて、逆に、母親のためを思って逆子になったということがわかり、とても心が安らいだと言っていました。切迫流産なども、同じようなことがあります。これらの症状が「体に無理をしないで」という赤ちゃんからのメッセージのこともあるのです。

 赤ちゃんは、お母さんを困らせようとは、決して思いません。すべて、お母さんのためにやっていることです。

 妊娠中にトラブルが生じた場合、まず、赤ちゃんと話をしてください。中には、緊急事態が発生しているので、すぐに病院へ行ってと伝えてくる場合もあります。お母さんは、わからなくても、いつも赤ちゃんに話しかけて、赤ちゃんとのコミュニケーションできる感性を磨いておいてください。いざというときに、適切な行動ができるようになります。

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著者

池川 明

1954年東京生まれ。帝京大学医学部大学院修了。医学博士。上尾中央総合病院産婦人科部長を経て、1989年に池川クリニックを開設。胎内記憶・誕生記憶について研究を進める産婦人科医としてマスコミ等に取り上げられることが多く、講演などでも活躍中。母と子の立場に立った医療を目指している。著書に『おぼえているよ。ママのおなかにいたときのこと』『ママのおなかをえらんできたよ。』(以上、二見書房)『笑うお産』(KADOKAWA)など多数。

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