第4回
「後悔」の解剖図鑑
2017.03.21更新
【 この連載は… 】 悲しみ、怒り、喜び、名誉心……「感情」の成り立ち、脳内作用、操り方を苫米地博士が徹底解剖! 単行本出版を記念して、書籍の厳選コンテンツを特別公開いたします。
「目次」はこちら
【後悔】kokai
──────────────────
「後悔」とは……
後になって、自分が過去にしたことやしなかったことを悔やむこと。後悔の感情を持ち続けていると、判断やパフォーマンスに悪い影響を与えてしまうこともある。
──────────────────
■人が後悔するのは、進化の結果
後悔も不安と同様、ほかの動物には無く、人間だけに与えられた感情です。
後悔は、「あのとき、別の行動をとっていたら、今とは違う結果になっていたかもしれない」といった具合に、「過去の選択によっては、現実になっていた可能性のある世界」(可能世界)を想定し、それと現実とを比較し、「可能世界の方が良かった」と感じることによって生まれます。
現実世界と同じくらいリアルに可能世界を想定するためには、時空を超えた推論ができなければなりません。つまり、後悔するには、高度に発達した前頭前野の働きが不可欠なのです。
ですから、もし後悔の念がわきおこったときには、まず、「いま、自分が後悔しているのは、人類が進化した結果なのだ」と思うようにしましょう。
■後悔は、百害あって一利なし
しかし、進化の結果である後悔は、とても非生産的な感情です。
どれほど過去の可能世界をリアルに想定しようと、私たちが生きているのは、この現実世界一つだけです。もちろん、想像して楽しむのは自由ですが、それと現実世界を比較し、「可能世界の方が良い」などと考えることに、まったく意味はありません。
また、ある過去の出来事についてくよくよと後悔し続けていると、その記憶がトラウマとなり、現実世界における判断や選択、パフォーマンスに悪い影響を与えることがあります。
たとえば「仕事が忙しくて、大事な人の臨終に立ち会えなかったことを後悔するあまり、仕事に身が入らなくなる」ケースなどが、それにあたるでしょう。
後悔はまさに、百害あって一利なしなのです。
■現実世界と可能世界を比べるのは無意味
人生のある時点での選択が正しかったかどうかを、正確に評価することは不可能です。別の選択をした場合の人生を実際に歩むことはできないからです。
また、仮に現実世界と可能世界とを比べるにしても、現時点で比べるのか、10 年後を比べるのか、20 年後を比べるのかによって、評価は大きく変わります。
たとえばある人が、就職の際にA社を蹴り、B社を選んだことを後悔しているとします。その人は現時点では、「A社に入った方が、仕事が楽で給料がよかった」と思っているかもしれません。しかしもしA社に入っていたら、嫌な上司のもとで働くことになっていた可能性もあります。あるいは10 年後、A社の業績が悪化し、リストラされてしまう可能性もあります。
知り得ない以上、その比較は無意味と言わざるをえません。
■後悔せずに生きる方法
ここでは、後悔せずに生きる方法を3つ、紹介しましょう。
1 現実世界に良い評価を下す
考え方次第で、現実世界と可能世界の評価はいくらでも変わります。それなら、ありもしない可能世界より、現実世界に良い評価を下す方がはるかに前向きで健全ではないでしょうか。
そもそも何らかの選択をするとき、人はたいてい、良さそうな方を選ぶものです。あえて悪そうな方を選ぶ人はいません。つまり現実は常に、ベターだと思われる選択を繰り返した末にたどりついた、最高の結果だといえるのです。
2 やりたいことをやり続ける
わざわざ現実に対して悪い評価を下す人は、自己評価が低い人、自分への信頼度が低い人だといえます。
こうした人は、人生においてなんらかの選択を迫られたとき、自信がないために、世間体や世間の常識、他人の意見などを基準にしがちです。自分が明確な意思をもって選んだ結果ではないため、どうしても「他の選択をすればよかった」という思いが消せないのです。
ですから、後悔しないための、もっとも単純な方法は、「自分がやりたいことをやり続けること」だといえます。常に、「こうしたい」という自分の気持ちにしたがって選択をしていれば、たとえ期待通りの結果が得られなかったとしても「やりたいことができたからいい」「あのときは、こちらを選びたかったのだから、これでいい」と思えるはずです。
【単行本好評発売中!】
この本を購入する
感想を書く