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第17回

「感動」の解剖図鑑

2018.03.13更新

読了時間

【 この連載は… 】 悲しみ、怒り、喜び、名誉心……「感情」の成り立ち、脳内作用、操り方を苫米地博士が徹底解剖! 単行本出版を記念して、書籍の厳選コンテンツを特別公開いたします。

【感動】kando



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「感動」とは……


美しいもの、素晴らしいものなどに接して、強い印象や深い感銘を受け、心を奪われたり動かされたりすること。感動の度合いが大きいと、「気分が高揚する」「胸がつまる」「涙が出る」などの身体的反応が起こることもある。

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■感動も、相手に共感した結果、生まれる


 感動も同情と同様、他者と仮想空間を共有し、その空間に臨場感を持った結果、生じる感情です。共感した相手がネガティブな感情を抱いていれば同情が、ポジティブな感情を抱いていれば感動が生まれます。

 当然のことながら、感動にも、ミラーニューロンがある程度関わっていると考えられます。実在する身の回りの人であれ、映画やお芝居の登場人物であれ、他人と自分とを同一視し、他人の身に起こった感動的な出来事や喜ばしい経験を自分のことのように感じるからこそ、人は「感動」という強い感情を持つことができるのです。


■感動は、人間ならではの感情


 感動も、人類が社会を築くうえで必要な感情であり、人間ならではの感情であるといえるでしょう。

 行ったこともないような場所で行われる、自分ではやったこともないスポーツの試合で、実際に会ったこともないような選手が逆転優勝するのを映像で観て、感動することができるのは、やはり人間だけなのです。

 ですから、もし何かに感動していたときには、まず「自分は人間なのだな」と思うようにしましょう。


■相手が自分に近いほど、感動は大きくなる


 感動の大きさは、さまざまな条件によって左右されます。まず、相手が自分に近い存在であればあるほど、共有する情報が多くなるため、自分と相手をますます同一視しやすくなり、感動も大きくなります。

 たいていの人は、ロボットよりは動物、ほかの動物よりは人間に共感し、感情移入することが多いはずです。また、外国の人が経験した感動的な出来事よりも、同じ国の人が経験した感動的な出来事の方に、より強く心を動かされるでしょう。日本人がスポーツの国際試合を観ていて、外国の選手よりも、日本の選手が勝ったときに大きな感動を覚えるのは、そのためです。


■感動の大きさは、臨場感の強さにも左右される


 感動の大きさは、その情報空間に対し、臨場感をどれだけ強く持つことができるかによっても左右されます。

 たとえば、野球の試合であれば、映像で観るよりも、実際にスタジアムで観戦した方が、感動は大きいでしょう。情報量が圧倒的に多く、強い臨場感を持つことができるからです。

 また、「野球」というものに対して臨場感を持てる人でなければ、野球を観て感動することはできません。野球をしている人、過去に野球をした経験がある人ならば、他人の試合を観ているときでも、まるで自分自身がプレーをしているような臨場感を持つでしょう。また、野球をしたことがなくても、サッカーなどほかのスポーツをした経験がある人や、野球に少なからず興味や関心を抱いている人、野球のルールを多少なりとも知っている人であれば、やはり臨場感を持つことが可能です。

 しかし、野球にまったく興味のない人、野球のルールさえ知らない人が、野球に臨場感を持つのは困難です。国際試合で、日本チームがどれほど劇的な逆転勝利をおさめても、感動するどころか、何が起こっているか理解することすらできないかもしれません。



■感動を覚えたときに注意しなければならないこと

ここでは、感動に関する注意事項を2つ、紹介しましょう。


1.人は感動を覚えやすいものに洗脳されやすい

 感動を覚えやすいもの、つまり臨場感を持ちやすいものは、少々危険なものでもあります。人は臨場感を持ちやすいものに洗脳されやすいからです。

 たとえば、第二次世界大戦後、GHQは日本を支配する際に「3S政策」をとりいれたといわれています。3Sとは「スポーツ」「スクリーン」「セックス」のことであり、3S政策とは、これらの娯楽を用いて大衆の関心を政治から逸らせる政策のことです。

 それが本当かどうかはわかりませんが、いずれにせよ、日本人の多く(日本人だけではありませんが)は子どものころから映像(スクリーン)とスポーツに慣らされているため、この両者に対し臨場感を持ちやすく、共感や感動を抱きやすい傾向があります。その2つが組み合わさったスポーツ中継の視聴率が高いのも、当然といえるでしょう。

 オリンピックをはじめ、スポーツの国際大会の開催地や放映権をめぐって、熾烈な争いが繰り広げられるのは、そのためです。スポーツ中継が好な人は、映像とスポーツに臨場感を持ちやすい人であり、中継の合間に流されるCMにも共感しやすく洗脳されやすいといえます。より高い視聴率が見込める時間に試合を放送できれば、より多くの消費を促せるというわけです。


2.人は誰でも、何らかの洗脳を受けている

 ここで注意しておきたいのは、臨場感を持ちやすい人、感動しやすい人だけが洗脳されやすいわけではない、ということです。

 人は必ず、何らかの情報空間に対して臨場感を持ちます。実際に見たもの以外にはあまり臨場感を持たない人、文字で読んだ情報に強い臨場感を持つ人、映像で観たものに強い臨場感を持つ人など、それぞれ違いはあるかもしれませんが、まったく臨場感を持たない人はいません。臨場感を持たなければ、社会の中で生きていくことができないからです。

 そして人は、臨場感を持った情報空間から、必ず何らかの洗脳を受けています。文字情報に臨場感を持ちやすい人は雑誌や書籍などのメディアに、映像情報に臨場感を持ちやすい人はテレビや映画などのメディアに洗脳されやすい人だといえるでしょう。

 すでにお話ししたように、感動は人類に必要な感情であり、人類ならではの感情でもあります。

 そのため、感動すること自体を否定することはありませんが、もし何かに感動を覚えたときは、「自分はこのメディアによって洗脳されやすいのだ」と考えるようにしましょう。


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著者

苫米地 英人

1959年、東京都生まれ。認知科学者、計算機科学者、カーネギーメロン大学博士(Ph.D)、カーネギーメロン大学CyLab兼任フェロー。マサチューセッツ大学コミュニケーション学部を経て上智大学外国語学部卒業後、三菱地所にて2年間勤務し、イェール大学大学院計算機科学科並びに人工知能研究所にフルブライト留学。その後、コンピュータ科学の世界最高峰として知られるカーネギーメロン大学大学院に転入。哲学科計算言語学研究所並びに計算機科学部に所属。計算言語学で博士を取得。徳島大学助教授、ジャストシステム基礎研究所所長、通商産業省情報処理振興審議会専門委員などを歴任。

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