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第10回

「恨み」の解剖図鑑

2018.01.23更新

読了時間

【 この連載は… 】 悲しみ、怒り、喜び、名誉心……「感情」の成り立ち、脳内作用、操り方を苫米地博士が徹底解剖! 単行本出版を記念して、書籍の厳選コンテンツを特別公開いたします。
「目次」はこちら

【恨み】urami


 

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「恨み」とは……


自分に対する他人のひどい態度や仕打ちを不満に思い、「機会があれば復讐したい」といった、強い気持ちを抱くこと。恨みの感情が高まるとIQが下がり、冷静な判断ができなくなる。

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■恨みと怒りはよく似ている


 恨みと怒りは、いずれも「他者から一方的に、理不尽な危害を加えられた」と感じることにより生まれます。

 ただし、怒りはその場で発生し、恨みは少し時間をおいてから発生します。たとえば、「真面目に働いていたのに、突然クビになった」「信頼していた友だちに裏切られた」「自分は安全運転をしていたのに、事故に巻き込まれた」といった出来事に遭遇すると、人はまず怒りを覚えます。そして「なかなか新しい仕事が見つからない」「裏切られて、精神的に大きなダメージを受け、立 ち直れない」「事故のせいでしばらく動けない」など、自分にとって不本意な状況が訪れ、それが続くと、怒りは恨みに変わっていくのです。


■「自分は間違っていない」という思いが、恨みを生む


 恨みを抱かないようにする一番の方法は、「人を恨むような人間にならない」ことです。

 恨みの感情の前提となっているのは、「自分は間違ったことをしていない」「自分は被害者である」という思いです。しかし、その思いは本当に「正しい」のでしょうか?

 先ほどの例でいえば、会社をクビになった人は、自分では「真面目に働いている」と思っているかもしれませんが、上司や同僚からは「言われたことしかやらない」「コミュニケーション能力が低い」などと思われていたかもしれません。

 また、友だちに裏切られたとしたら、実はその前に、自分が友だちに対し、知らないうちに傷つけるようなことを言ってしまったのかもしれません。

「理不尽な目に遭わされた」と感じ、恨みを抱きそうになったら、まずはこのように、自分自身を客観的に眺め、相手の事情を考えてみましょう。その結果、「自分にも問題があった」と気づくことができれば、恨みの感情は生まれませんし、前頭前野を働かせることで、感情の増幅を抑えることもできます。


■恨みに支配されると、判断を誤りがち


 恨みも、基本的には、人間にとって必要のない感情です。

 世の中には「恨みをバネにして頑張る」という人もいますが、一度恨みを抱くと、その感情はたいてい、扁桃体で増幅されます。つまり大脳辺縁系が活性化し、前頭前野の働きが抑えられて、IQが下がってしまうのです。

 そのため、恨みの感情に支配されてとった行動は、多くの場合、正しい結果をもたらしません。


■恨みをコントロールする方法

 ここでは、恨みをコントロールする方法を2つ、紹介しましょう。


1 徹底した危機管理で、恨みの発生を防ぐ

 恨みの感情を抱かないためには、「日ごろから、危機管理をしっかりする」ことが大事です。

「他者から理不尽な危害を加えられた」と感じたとき、それが想定外の出来事であればあるほど、人は怒り、やがて恨みを抱くようになります。ですから、行動するときは常に、さまざまな危険性を想定し、できるかぎり備えておくのです。

 たとえば「同じ会社でずっと働いていられるとは限らない」「何があっても絶対に自分を裏切らない人などいない」と、ふだんから考えていれば、クビになったり裏切られたりしたときのダメージは少なくてすむでしょう。交通量の多い道路では、できるだけ車の運転をしないよう心がけていれば、事故に巻き込まれる可能性も少なくなるはずです。



2 復讐を考えることで、恨みは抑えられる

 生きていれば、自分には問題がなく、いくら危機管理を徹底していても、理不尽な目に遭わされることはあります。

 しかしそういうときこそ、怒りや恨みの感情をうまくコントロールし、IQを維持するように努めましょう。IQが下がり、冷静な判断力を失うと、ますます被害が拡大してしまうからです。

 将来的に恨みにつながりそうなことが起こったときや、自分が誰かを恨んでいると感じたときは、まず「自分にとって理不尽な出来事が起きた」「自分はいま、怒っている(もしくは恨んでいる)」と客観的に自分を眺めましょう。「あー、嫌な目に遭ったなあ」などと、声に出して呟いてみてもいいでしょう。

 それから、怒りを感じたときと同様、復讐の方法を考えます。理不尽な危害を加えられたときは、相手をより理不尽な目に遭わせる方法を、一生懸命考えましょう。

 もちろん怒りと同じで実際に実行する必要はありません。徹底的に考えるだけで十分です。実行すれば、自分に不利になることも多いでしょう。方法を考えるだけで、前頭前野が活性化され、扁桃体で恨みの感情が増幅されるのを抑えてくれるはずです。



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著者

苫米地 英人

1959年、東京都生まれ。認知科学者、計算機科学者、カーネギーメロン大学博士(Ph.D)、カーネギーメロン大学CyLab兼任フェロー。マサチューセッツ大学コミュニケーション学部を経て上智大学外国語学部卒業後、三菱地所にて2年間勤務し、イェール大学大学院計算機科学科並びに人工知能研究所にフルブライト留学。その後、コンピュータ科学の世界最高峰として知られるカーネギーメロン大学大学院に転入。哲学科計算言語学研究所並びに計算機科学部に所属。計算言語学で博士を取得。徳島大学助教授、ジャストシステム基礎研究所所長、通商産業省情報処理振興審議会専門委員などを歴任。

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