第7回
「名誉心」の解剖図鑑
2017.04.11更新
【 この連載は… 】 悲しみ、怒り、喜び、名誉心……「感情」の成り立ち、脳内作用、操り方を苫米地博士が徹底解剖! 単行本出版を記念して、書籍の厳選コンテンツを特別公開いたします。
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【名誉心】meiyoshin
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「名誉心」とは……
名誉(自分の能力や行為に対する良い評判や評価)を重んじ、名誉を手に入れようとする気持ち。
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■名誉心は、身も心も「奴隷」となっていることの証
正確にいえば、人に名誉心が生まれるのは、大人になってからです。
もちろん、子どものころに親や友だち、学校の先生などから褒められたい、と思うことはあるでしょう。しかし、褒められることを「名誉だ」などと思うのは、大人だけです。
そして名誉心というのは、自分が身も心も「奴隷」となっていることの証です。なぜなら名誉心は、「権力」から与えられるものを、何の疑問もなく「ありがたい」「欲しい」と思ったときに抱く感情だからです。
■社会には、人を奴隷化する仕掛けがたくさんある
奴隷というのはみじめなものです。心身を拘束され、選択の自由もなく、やりたくもないことをやらされる毎日。生まれつき「奴隷になりたい」と思っている人など、基本的にはいないはずです。
しかし支配されることに慣れきってしまうと、人は奴隷でいることを心地よく感じるようになり、時間、信念、命など、自分の大事なものを、自ら支配者側に渡すようになります。奴隷でいることがコンフォートゾーンとなり、その状態にとどまらせようと、ホメオスタシスが働くからです。
現代社会にも、人々を奴隷化して支配し、自由を奪い、真に自分らしい人生を送れないようにするための仕掛けがたくさんあります。その中でいい思いができるのは、0.0000001%くらいの、ほんの一握りの人だけです。
そして名誉心という感情もまた、支配に利用されています。
■奴隷たちは、自分の鎖の上等さを自慢し合う
奴隷たちは、「自分の鎖がいかに上等か」を自慢し合うといいます。「奴隷の中で、自分の方が待遇が良い」「主人から目をかけられている」と感じると、嬉しくなってしまうのです。
このように、奴隷同士が主人の寵愛をめぐって競い合ってくれるのは、支配者にとっては願ってもないことです。奴隷たちがどんどん従順になり、やる気を出して働いてくれるからです。
名誉はまさに、鎖の象徴です。戦時中の軍隊では、「名誉」を得るために、たくさんの兵士が死んでいきました。またノーベル賞や勲章、各団体の「名誉会員」といった賞や章や地位は、支配者が奴隷に与える、上等の鎖のようなものです。そのような鎖を素直にありがたがる感情、すなわち名誉心は、支配されることを全面的に受け入れて、初めて生まれます。
■人間には、奴隷化しない生き方を選ぶことができる
支配され奴隷となることに甘んじてしまう人が多いのは、ある意味、仕方がないことかもしれません。
というのも、あらゆる生物の中に、そうした遺伝子が組み込まれているからです。奴隷化し、与えられた役割を淡々とこなす個体が多い方が、種としては生き延びやすいのです。働き蟻や働き蜂がせっせと働かなければ、蟻や蜂はとっくに滅びていたでしょうし、生殖を担わされている女王蟻や女王蜂もまた、「種」というものに仕える奴隷だといえます。
しかし人間は、思考や意思によって、本能や感情に振り回されずに生きることができます。特に現代の日本社会は、厳しい身分制度があるわけでもなく、法律によって行動ががんじがらめに制限されているわけでもありません。奴隷化することを良しとしない生き方を選ぶことも、十分可能なのです。
■名誉心との付き合い方
ここでは、名誉心との付き合い方を2 つ、紹介しましょう。
1 賞や勲章を与えられることになったら
自分という存在に自信を持ち、自分の目指すゴールだけを見つめて生きている人であれば、たとえ権威ある賞や勲章などを与えられることになっても、戸惑いやためらい、嫌悪感などを覚えるでしょう。実際、ノーベル賞を辞退した人も、過去に何人かいます。
あるいは、心の中で「こんなものもらっても、まったく嬉しくない」と思いながら、「もらっておけば商売に利用できる」「要りません、というのも、いささか子どもじみている」といった考えから、受け取っている人もいるかもしれません。
こうした人たちは、奴隷ではありません。自分の価値観をしっかりもち、そのうえでどうふるまったらいいかを考えているからです。
危険なのは、何の疑いもなく、本気で「名誉だ」「嬉しい」と思うことです。
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