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第111回

271〜273話

2021.08.31更新

読了時間

  「超訳」本では軽すぎる、全文解説本では重すぎる、孟子の全体像を把握しながら通読したい人向け。現代人の心に突き刺さる「一文超訳」と、現代語訳・原文・書き下し文を対照させたオールインワン。
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2‐1 歴史は大事


【現代語訳】
北宮錡が問うて言った。「周の王室では、爵位や俸禄を分け与える制度はどのようになっていたのでしょうか」。孟子は答えた。「詳しいことは聞くことができません(今はわかりません)。というのも諸侯たちは、周のそうした制度があると、(諸侯同士で争い土地を侵略したり、身分を越えて王を自称するなど)勝手できないものだから、憎んでその制度が書かれた典籍を破棄してしまったからです。しかし、私は、かつてそのあらましを聞いたことがあります」。

【読み下し文】
北宮錡(ほくきゅうき)(※)問(と)うて曰(いわ)く、周室(しゅうしつ)爵(しゃく)禄(ろく)を班(はん)(※)するや、之(これ)を如何(いかん)。孟子(もうし)曰(いわ)く、其(そ)の詳(しょう)は聞(き)くことを得(う)べからざるなり。諸侯(しょこう)其(そ)の己(おのれ)を害(がい)するを悪(にく)むや、皆(みな)其(そ)の籍(せき)(※)を去(さ)れり。然(しか)れども軻(か)(※)や、嘗(かつ)て其(そ)の略(りゃく)を聞(き)けり。

(※)北宮錡……衛の人。詳しいことはわかっていない。
(※)班……ここでは、わけて決め並べる基準。
(※)籍……典籍。爵位や俸禄などの制度を記載した書物のこと。
(※)軻……孟子の名。

【原文】
北宮錡問曰、周室班爵祿也、如之何、孟子曰、其詳不可得聞也、諸侯惡其害己也、而皆去其籍、然而軻也、嘗聞其略也。

 

2‐2 周の位の決め方


【現代語訳】
〈前項から続いて孟子は言った〉。「まず(天下の爵位は)天子(の位)が一階級、公が一階級、侯が一階級、伯が一階級、子・男が(合わせて)一階級で、全部で五階級である。また、天子と諸侯の国では(国内における爵位は)、君が一階級、卿が一階級、大夫が一階級、上士が一階級、中士が一階級、下士が一階級で、全部で六階級である」。

【読み下し文】
天子(てんし)一位(いちい)(※)、公(こう)一位(いちい)、侯(こう)一位(いちい)、伯(はく)一位(いちい)、子(し)・男(だん)同(おな)じく一位(いちい)、凡(およ)そ五等(ごとう)なり。君(きみ)(※)一位(いちい)、卿(けい)一位(いちい)、大夫(たいふ)一位(いちい)、上士(じょうし)一位(いちい)、中士(ちゅうし)一位(いちい)、下士(かし)一位(いちい)、凡(およ)そ六等(ろくとう)なり。

(※)一位……一階級。なお明治から昭和の新憲法制定前までに存して公、侯、伯、子、男の爵位(華族制度)は、周の制度から採用されていたものである。
(※)君……天子と諸侯の国では。なお、これに対し諸侯だけと見る説もある。

【原文】
天子一位、公一位、候一位、伯一位、子・男同一位、凡五等也、君一位、卿一位、大夫一位、上士一位、中士一位、下士一位、凡六等。

 

2‐3 領土


【現代語訳】
〈前項から続いて孟子は言った〉。「また、俸禄の制度によれば、天子の土地(天子の直轄地)は千里四方であり、公・侯はそれぞれ百里四方であり、伯は七十里四方であり、子・男は五十里四方であり、全部で四等級となっていた。五十里四方に足りない小国で、直接天子へ参観できなくて、諸侯に取り次いでもらう者を附庸と言った。(天子の直轄地において)天子の卿の領土は侯の国に準じ(百里四方)、天子の大夫の領土は伯の国に準じ(七十里四方)、天子の上士の領土は子・男に準じていた(五十里四方)」。

【読み下し文】
天子(てんし)の制(せい)(※)は、地(ち)、方(ほう)千里(せんり)、公(こう)・侯(こう)は皆(みな)方百(ほう)里ひゃく(り)、伯(はく)は七十里(しちじゅうり)、子(し)・男(だん)は五十里(ごじゅうり)、凡(およ)そ四(し)等(とう)なり。五十里(ごじゅうり)なること能(あた)わず、天子(てんし)に達(たっ)せず、諸侯(しょこう)に附(つ)くを、附庸(ふよう)と曰(い)う。天子(てんし)の卿(けい)は、地(ち)を受(う)くること侯(こう)に視(なぞら)え、大夫(たいふ)は地(ち)を受(う)くること伯(はく)に視(なぞら)え、元士(げんし)(※)は地(ち)を受(う)くること子(し)・男(だん)に視(なぞら)う。

(※)制……制度、決まり、掟。
(※)元士……上士のこと。

【原文】
天子之制、地、方千里、公・候皆方百里、伯七十里、子・男五十里、凡四等、不能五十里、不逹於天子、附於諸侯、曰附庸、天子之卿、受地視侯、大夫受地視伯、元士受地視子男。


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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。海外に進出し、日本および日本人が外国人から尊敬され、その文化が絶賛されているという実感を得たことをきっかけに、日本人に影響を与えつづけてきた古典の研究を更に深掘りし、出版企画を行うようになる。近年では古典を題材にした著作の企画・プロデュースを手がけ、様々な著者とタイアップして数々のベストセラーを世に送り出している。著書に『超訳 孫子の兵法』『吉田松陰の名言100-変わる力 変える力のつくり方』(共にアイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術─相手の心を動かす「義」の思考方法』『全文完全対照版 論語コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 孫子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 老子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 菜根譚コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』(以上、誠文堂新光社)などがある。

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