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第13回

34〜36話

2020.01.14更新

読了時間

 「超訳」本では軽すぎる、全文解説本では重すぎる、菜根譚の全体像を把握しながら通読したい人向け。現代人の心に突き刺さる「一文超訳」と、現代語訳・原文・書き下し文を対照させたオールインワン。
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34 自分がすべて正しい、自分は何でも知っているという人は成長しない


【現代語訳】
利益を求める欲望の心は、それがすべて自分の精神をだめにするとは限らない。しかし、本当は正しくない自分の考えや意見が、いつも正しいものだという思い込みや独善が、その人をだめにするおそろしい害虫となる。美しい音楽やすてきな異性を求める心は、必ずしも道(正しい生き方)に入る障げとなるとは限らない。道を障げるのは、知ったかぶりの聡明さ(独善)である。

【読み下し文】
利欲(りよく)は未(いま)だ尽(ことご)とくは心(こころ)を害(がい)せず、意見(いけん)(※)は乃(すなわ)ち心(こころ)を害(がい)するの蟊賊(ぼうぞく)(※)なり。声色(せいしょく)(※)は未(いま)だ必(かなら)ずしも道(みち)を障(さまた)げず、聡明(そうめい)は乃(すなわ)ち道(みち)を障(さまた)ぐるの藩屛(はんぺい)(※)なり。

(※)意見……ここでは我見のこと。自分だけの偏った見解。
(※)蟊賊……害虫。蟊は根を食い、賊は節を食う。
(※)声色……良い声と美しい色。音楽と女色。
(※)藩屛……垣根。障害物。「藩」は垣根、おおいを言い、そこから諸侯の国、日本では大名それぞれの国を指した。「屛」も同じく、おおい、へいなどを意味する。

【原文】
利欲未盡害心、意見乃害心之蟊賊。聲色未必障衜、聰明乃障衜之藩屛。

35 人に譲ることでうまくいく


【現代語訳】
人の心は変わりやすく、人生航路には厳しいものがある。だからたやすく通れないところでは、自分の方から一歩退いて人を先に行かすようにすべきである。また、楽に通れるところでも、十のうち三分は人に譲る心がけが大切である。

【読み下し文】
人情(にんじょう)は反復(はんぷく)し(※)、世路(せろ)は崎嶇(きく)(※)たり。行(い)き去(さ)られざる処(ところ)は、須(すべか)らく一歩(いっぽ)を退(しりぞ)くるの法(ほう)を知(し)るべし。行(ゆ)き得(え)去(さ)る処(ところ)は、務(つと)めて三分(さんぶ)を譲(ゆず)るの功(こう)を加(くわ)うべし。

(※)人情は反復し……人の心が軽薄で変わりやすい。なお、本項については本書の前集13条および前集17条参照。
(※)崎嶇……山道の険しいこと。

【原文】
人情反復、世路崎嶇。行不去處、須知退一步之法。行得去處、務加讓三分之功。

36 人によって自分を見失うことがあってはならない


【現代語訳】
つまらない人(小人)に対して、厳しい態度で接するのは易しい。しかし、その人のことをすべて否定しないようにするのは難しい(行為を非難しても人格まで憎まないようにしたい)。偉い人や立派な人(君子)に対して、へりくだって接するのは易しい。しかし、卑屈になってしまわずにふるまうのは難しい(過不足のない礼は失わないでいたい)。

【読み下し文】
小人(しょうじん)を待(ま)つ(※)は、厳(げん)に難(かた)からずして悪(にく)まざるに難(かた)し。君子(くんし)を待(ま)つは、恭(きょう)に難(かた)からずして礼(れい)有(あ)るに難(かた)し。

(※)待つ……ここでは接する、対処するの意。

【原文】
待小人、不難於嚴而難於不惡。待君子、不難於恭而難於有禮。

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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。海外に進出し、日本および日本人が外国人から尊敬され、その文化が絶賛されているという実感を得たことをきっかけに、日本人に影響を与えつづけてきた古典の研究を更に深掘りし、出版企画を行うようになる。近年では古典を題材にした著作の企画・プロデュースを手がけ、様々な著者とタイアップして数々のベストセラーを世に送り出している。著書に『超訳 孫子の兵法』『吉田松陰の名言100-変わる力 変える力のつくり方』(共にアイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術─相手の心を動かす「義」の思考方法』『全文完全対照版 論語コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 孫子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 老子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』(以上、誠文堂新光社)などがある。

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