Facebook
Twitter
RSS

第28回

79〜81話

2020.02.04更新

読了時間

 「超訳」本では軽すぎる、全文解説本では重すぎる、菜根譚の全体像を把握しながら通読したい人向け。現代人の心に突き刺さる「一文超訳」と、現代語訳・原文・書き下し文を対照させたオールインワン。
「目次」はこちら

79 自分の本心をしっかりと確立する


【現代語訳】
耳目など五官による欲望は、外部から侵入してくる賊のようなものであり、情欲や我意・雑念は、心の内部にいる賊のようなものである。ただ主人公である自分の本心が、これらに惑わされることなくどっしりとしておれば、内外の賊も家来のように手なずけておくことができる。

【読み下し文】
耳目見聞(じもくけんぶん)(※)は外賊(がいぞく)為(た)り、情欲(じょうよく)意識(いしき)(※)は内賊(ないぞく)為(た)り。只(た)だ是(こ)れ主人(しゅじん)翁おう((※)、惺惺不昧(せいせいふまい)(※)にして、中堂(ちゅうどう)に独坐(どくざ)せば、賊(ぞく)便(すなわ)ち化(か)して家人(かじん)と為(な)らん。

(※)耳目見聞……耳目など五官(目、耳、鼻、舌、身の五つの感覚器官)による欲望。
(※)情欲意識……情欲や我意。雑念。
(※)主人翁……主人公。ここでは自分の本心。本性をいう。本項の解釈については、本書の前集181条、後集128条も参照。
(※)惺惺不昧……心が明らかな状態。しっかりとした自分の本心。

【原文】
耳目見聞爲外賊、情欲意識爲內賊。只是主人翁、惺惺不昧、獨坐中堂、賊便化爲家人矣。

80 過去の失敗を悔やむより、反省して将来に備えよ


【現代語訳】
まだ着手していない新しいことに力を入れるより、すでに完成して動いているものを維持、発展させるほうが、賢いやり方である。過去の失敗を悔やんでいるより、それを反省した上で、将来に失敗しないために備えるのが、賢いやり方である。

【読み下し文】
未(いま)だ就(な)らざる(※)の功(こう)を図(はか)るは、已(すで)に成(な)るの業(ぎょう)を保(たも)つ(※)に如(し)かず。既往(きおう)の失(しつ)(※)を悔(く)ゆるは、将来(しょうらい)の非(ひ)を防(ふせ)ぐに如(し)かず。

(※)就らざる……着手していない。動いていない。なお、これを成就していないと解する説もある。どちらとも解釈できる。
(※)業を保つ……維持、発展させる。ただし、吉田松陰は「凡(およ)そ天下(てんか)の事(こと)、創業(そうぎょう)は難(かた)きに似(に)て易(やす)く、守成(しゅせい)は易(やす)きに似(に)て難(かた)し」(『曹参論(そうしんろん)』)と述べている。
(※)失……過失。本項の解釈については、本書の前集90条、146条、218条も参照。

【原文】
圖未就之功、不如保已成之業。悔旣徃之失、不如防將來之非。

81 理想と現実のバランスをうまくとる


【現代語訳】
理想は、高く広く持つべきだが、現実の世のなかから離れすぎてもいけない。思考は、用意周到で細かくなければいけないが、枝葉末節にこだわりすぎてはならない。趣味は、あっさりとした気持ちでやるべきだが、あまりにも片寄りすぎて無味となってはいけない。節操は、厳しく守らなければならないが、あまりにも過激すぎるのは良くない。

【読み下し文】
気象(きしょう)は高曠(こうこう)(※)を要(よう)して、而(しか)も疎狂(そきょう)(※)なるべからず。心思(しんし)は縝密(しんみつ)(※)を要(よう)して、而(しか)も琑屑(させつ)(※)なるべからず。趣味(しゅみ)は沖淡(ちゅうたん)(※)を要(よう)して、而(しか)も偏枯(へんこ)(※)なるべからず。操守(そうしゅ)は厳明(げんめい)を要(よう)して、而(しか)も激烈(げきれつ)なるべからず。

(※)高曠……高く広い。
(※)疎狂……現実の世のなかから離れすぎている。
(※)縝密……用意周到。綿密。
(※)琑屑……枝葉末節にこだわること。細かくてわずらわしいこと。
(※)沖淡……あっさりとしていること。執着のないこと。
(※)偏枯……片寄りすぎて無味。片寄ってひからびる。片寄って面白くない。

【原文】
氣象要高曠、而不可疎狂。心思要縝密、而不可瑣屑。趣味要沖淡、而不可偏枯。操守要嚴明、而不可激烈。

「目次」はこちら

【単行本好評発売中!】 
この本を購入する

シェア

Share

感想を書く感想を書く

※コメントは承認制となっておりますので、反映されるまでに時間がかかります。

著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。海外に進出し、日本および日本人が外国人から尊敬され、その文化が絶賛されているという実感を得たことをきっかけに、日本人に影響を与えつづけてきた古典の研究を更に深掘りし、出版企画を行うようになる。近年では古典を題材にした著作の企画・プロデュースを手がけ、様々な著者とタイアップして数々のベストセラーを世に送り出している。著書に『超訳 孫子の兵法』『吉田松陰の名言100-変わる力 変える力のつくり方』(共にアイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術─相手の心を動かす「義」の思考方法』『全文完全対照版 論語コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 孫子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 老子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』(以上、誠文堂新光社)などがある。

矢印