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第30回

85〜87話

2020.02.06更新

読了時間

 「超訳」本では軽すぎる、全文解説本では重すぎる、菜根譚の全体像を把握しながら通読したい人向け。現代人の心に突き刺さる「一文超訳」と、現代語訳・原文・書き下し文を対照させたオールインワン。
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85 暇なときでも何もしないで時間を無駄に過ごさない


【現代語訳】
暇なときでも、何もしないで無駄に過ごさなければ、多忙になったときに役に立つ。何もない静かなときにおいても、心をゆるめないようにしておけば、活動するときに役に立つ。人に見えないところでも、人を欺き自分の悪事を隠すようなことをしなければ、人前に出て活動するときに役に立つ。

【読み下し文】
間中(かんちゅう)に放過(ほうか)(※)せざれば、忙処(ぼうしょ)に受用(じゅよう)(※) 有(あ)り。静中(せいちゅう)に落空(らくくう)(※)せざれば、動処(どうしょ)に受用(じゅよう)有(あ)り。暗中(あんちゅう)に欺隠(ぎいん)(※)せざれば、明処(めいしょ)に受用(じゅよう)有(あ)り。

(※)放過……何もしないで無駄に過ごす。ぼんやり過ごす。
(※)受用……役に立つ。効用。はたらき。
(※)落空……心をゆるめる。ぼんやりする。
(※)欺隠……人を欺いて悪事を隠す。

【原文】
閒中不放過、恾處有受用。靜中不落空、動處有受用。暗中不欺隱、明處有受用。

86 問題は小さいうちに気づけば、良い方向に変えられる


【現代語訳】
自分の心が、少しでも私利私欲の間違った方向に向かっているのがわかったら、すぐに正しい方向に変えるべきだ。こうして、心が迷ったらすぐに気づいて、ただちに道を改めるのである。これが禍いを転じて福となし、死へ向かうところを生に戻す起死回生の良い機会となる。決して小さい問題だからと見過ごしてはいけない。

【読み下し文】
念頭(ねんとう)起(お)こる処(ところ)、纔(わず)かに(※)欲路上(よくろじょう)(※)に向(む)かって去(さ)るを覚(さと)らば、便(すなわ)ち挽(ひ)きて理路上(りろじょう)(※)より来(き)たせ。一(ひと)たび起(お)こりて便(すなわ)ち覚(さと)り、一(ひと)たび覚(さと)りて便(すなわ)ち転(てん)ず。此(これ)は是(こ)れ禍(わざわ)いを転(てん)じて福(ふく)と為(な)し、死(し)を起(お)こして生(せい)を回(かえ)す(※)の関頭(かんとう)(※)なり。切(せつ)に軽易(けいい)に放過(ほうか)すること莫(な)かれ。

(※)「纔かに〜便ち〜」……「〜したら、すぐに〜」。なお、『老子』の恩始第六十三に「難(かた)きを其(そ)の易(やす)きに図(はか)り、大(だい)を其(そ)の細(さい)に為(な)す」とある。本項と同趣旨である。
(※)欲路上……私利私欲の間違った方向。本書の前集73条参照。
(※)理路上……正しい方向。道理の方向。本書の前集73条参照。
(※)死を起こして生を回す……死へ向かうところを生に戻す。死にかかった者を起こして蘇生させる。起死回生。
(※)関頭……機会。関門。

【原文】
念頭起處、纔覺向欲路上去、便挽從理路上來。一起便覺、一覺便轉。此是轉禍爲福、起死回生的關頭。切莫輕易放過。

87 自分の心を知る三つの方法


【現代語訳】
静かなところで考えが澄みわたっていると、自分の心の本当の姿を見ることができる。暇なときに気持ちがゆったりしていると、自分の心の本当のはたらきを知ることができる。淡々として何のわだかまりもなく穏やかでいると、自分の心の本当の味わいや好みがわかる。このように自分の心を認識し、本心を理解して正しい生き方をさとるには、この三つの方法が一番良い。

【読み下し文】
静中(せいちゅう)の念慮澄徹(ねんりょちょうてつ)(※)なれば、心(こころ)の真体(しんたい)を見(み)る。間中(かんちゅう)の気象(きしょう)従容(しょうよう)なれば、心(こころ)の真機(しんき)を識(し)る。淡中(たんちゅう)の意趣(いしゅ)沖夷(ちゅうい)(※)なれば、心(こころ)の真味(しんみ)を得(う)。心(こころ)を観(かん)じ(※)道(みち)を証(しょう)するは、此(こ)の三者(さんしゃ)に如(し)くは無(な)し。

(※)澄徹……澄みわたっている。
(※)沖夷……穏やか。沖淡夷曠の意であっさりとして、ひろびろとしていること。
(※)観じ……自分の心を認識し、本心がわかる。なお、『論語』では視、観、察の三つによる他人の本心の観察法を挙げている。
すなわち、「其(そ)の以(もっ)てする所(ところ)を視(み)、其(そ)の由(よ)る所(ところ)を観(み)、其(そ)の安(やす)んずる所(ところ)を察(さっ)する」(為政第二)としている。

【原文】
靜中念慮澄徹、見心之眞體。閒中氣象從容、識心之眞機。淡中意趣沖夷、得心之眞味。觀心證衜、無如此三者。

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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。海外に進出し、日本および日本人が外国人から尊敬され、その文化が絶賛されているという実感を得たことをきっかけに、日本人に影響を与えつづけてきた古典の研究を更に深掘りし、出版企画を行うようになる。近年では古典を題材にした著作の企画・プロデュースを手がけ、様々な著者とタイアップして数々のベストセラーを世に送り出している。著書に『超訳 孫子の兵法』『吉田松陰の名言100-変わる力 変える力のつくり方』(共にアイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術─相手の心を動かす「義」の思考方法』『全文完全対照版 論語コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 孫子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 老子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』(以上、誠文堂新光社)などがある。

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