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第39回

112〜114話

2020.02.20更新

読了時間

 「超訳」本では軽すぎる、全文解説本では重すぎる、菜根譚の全体像を把握しながら通読したい人向け。現代人の心に突き刺さる「一文超訳」と、現代語訳・原文・書き下し文を対照させたオールインワン。
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112 自分の考える正しい信念や行いを貫く


【現代語訳】
自分の信念を曲げてまで人を喜ばせるくらいなら、信念を貫き自分の行いを正しくして人に嫌われるほうが良い。善いことを行ってもいないのに人にほめられるくらいなら、悪いことを行ってもいないのに批難されるほうがまだましだ。

【読み下し文】
意(い)を曲(ま)げて(※)人(ひと)をして喜(よろこ)ばしむるは、躬(み)を直(なお)くして人(ひと)をして忌(い)ませるに若(し)かず。善(ぜん)無(な)くして人(ひと)の誉(ほまれ)を致(いた)すは、悪(あく)無(な)くして人(ひと)の毀(そしり)を致(いた)すに若(し)かず。

(※)意を曲げて……信念を曲げて。なお、『論語』は「郷原(きょうげん)は徳(とく)の賊(ぞく)なり」とする(陽貨第十七)。「郷原」はまさに自分の信念を曲げて人を喜ばせる者を指している。『孟子』も世にこびる人(八方美人)を「郷原」であって徳の賊と説明している(尽心下篇)。

【原文】
曲意而使人喜、不若直躬而使人忌。無善而致人譽、不若無惡而致人毀。

 

113 親しい友人や仲間が困っているときには、ぐずぐず見過ごさない


【現代語訳】
肉親などの身内が不慮の災難に見舞われたら、落ちついて対処し取り乱してはいけない。親しい友人や仲間が失敗して困っているときには、すばやく適切に動き、ぐずぐずと見過ごすようではいけない。

【読み下し文】
父兄(ふけい)骨肉(こつにく)の変(へん)に処(しょ)しては、宜(よろ)しく従容(しょうよう)たるべく、宜(よろ)しく激烈(げきれつ)(※)なるべからず。朋友(ほうゆう)交遊(こうゆう)の失(しつ)に遇(あ)いては、宜(よろ)しく剴切(がいせつ)(※)なるべく、宜(よろ)しく優遊(ゆうゆう)(※)たるべからず。

(※)激烈……激しい感情。取り乱すほどの心情。
(※)剴切……適切な処置をすること。
(※)優遊……ぐずぐずと見過ごす。優柔不断。なお、本項の内容は日本の武士道のあり方の一つの見本のようなものである。特に後者の文章の内容は、新井白石の『折たく柴の記』や佐賀鍋島藩士・山本常朝の武士道論を聞き書きした『葉隠』にその見本が示されている。

【原文】
處父兄骨肉之變、宜從容、不宜激烈。遇朋友交游之失、宜剴切、不宜優游。

 

114 小さいことに手を抜かず、失意のときも決して投げやりにならない


【現代語訳】
小さいことでも、手を抜いてはならない。人が見ていないところでも、ごまかさない。失意のときでも、決して投げやりにならない。こうあってこそ本当の立派な人物といえる。

【読み下し文】
小処(しょうしょ)(※)に滲漏(しんろう)(※)せず、暗中(あんちゅう)に欺隠(ぎいん)(※)せず、末路(まつろ)(※)に怠荒(たいこう)せず。纔(わず)かに是(こ)れ個(こ)の真正(しんせい)の英雄(えいゆう)なり。

(※)小処……小さいこと。なお、小さいときから手を抜かずに処理することの大切さは、『老子』の恩始第六十三、守微第六十四も述べている。本項の解釈については、本書の前集86条も参照。
(※)滲漏……手を抜く。小事に油断する。
(※)欺隠……欺いて隠す。ごまかす。
(※)末路……失意のとき。

【原文】
小處不滲漏、暗中不欺隱、末路不怠荒。纔是個眞正英雄。

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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。海外に進出し、日本および日本人が外国人から尊敬され、その文化が絶賛されているという実感を得たことをきっかけに、日本人に影響を与えつづけてきた古典の研究を更に深掘りし、出版企画を行うようになる。近年では古典を題材にした著作の企画・プロデュースを手がけ、様々な著者とタイアップして数々のベストセラーを世に送り出している。著書に『超訳 孫子の兵法』『吉田松陰の名言100-変わる力 変える力のつくり方』(共にアイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術─相手の心を動かす「義」の思考方法』『全文完全対照版 論語コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 孫子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 老子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』(以上、誠文堂新光社)などがある。

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