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第21回

骨盤の高さの違いの矯正

2018.12.03更新

読了時間

【 この連載は… 】 テレビ、雑誌などでお馴染みの「姿勢」の第一人者が、疲れない体をつくる知識とメソッドを徹底紹介。医学的理論に基づいた「全身のつながり」を意識した姿勢改善エクササイズで、腰痛や肩こり、慢性疲労などの不調を劇的に改善します。
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 これまでは体を横から見て、骨盤が前に傾いている(前傾)、または後ろに傾いている(後傾)場合の姿勢の修正方法を説明してきました。
 今回は、体を前後から見た場合の不良姿勢の修正方法を紹介します。
 第18回で説明したように、骨盤を前後から見たときの不良姿勢は、骨盤の高さの不均衡です。

図1.骨盤の高さの違いによる不良姿勢

 例えば図1のように右腸骨陵が左腸骨陵より高ければ、右の膝は内反(O脚)傾向になり、足は外側で立つようになります。
 逆に左側の腸骨陵が低いことで、足の長さを右よりも短く見せるために、左膝は外反(X脚)傾向になり、足は扁平足や外反母趾になります。
 骨盤周囲で短縮あるいは優越に働く筋群は、右側の腰方形筋、股関節の内転筋群や、下腿の腓腹筋内側頭や後脛骨筋です。逆に延長あるいは弱化する筋群は、右のお尻の横側の中殿筋、それから右足の外側の筋群です。左側は、これらのそれぞれ反対の筋になります。
 骨盤の高さの不均衡によって、高い側の腰の横の痛み、内反膝、足関節捻挫などが生じ、低い側では腸脛靱帯炎や鵞足炎、扁平足や外反母趾などが生じてきます。

図2.膝と足の変形

(1)腰方形筋のストレッチング

 これらの不良姿勢を修正していく方法を紹介しましょう。まずは、右の骨盤が高くなり、右側の腰方形筋が短くなっているので、その腰方形筋をストレッチする方法です。

図3.右腰方形筋のストレッチング

 体を前に倒してから、体を左に倒しながら、左に回します。ただし、この方法だけだと右の骨盤が浮いてくることがあります。そこで、左のお尻の下に、小さめのタオルを堅く丸めて入れておきます。そのことで、右の骨盤は浮かなくなり、右の腰方形筋がストレッチできます。

(2)股関節外転筋郡エクササイズ-1

 次に、右側の弱くなったお尻の横の筋肉(中殿筋)の強化を行います。

図4.右中殿筋の筋力強化エクササイズ-1

 右足を横側に上げていくのですが、右の腰方形筋を使ってしまい、右の骨盤が早くから持ち上がるような間違った方法になることがあります。その場合は、右の腰方形筋を使わせないように、左のウエストの下にタオルかクッションを敷き、右の腰方形筋を伸ばすようにすることで、右の腰方形筋を使いにくくします。
 右足を横側に上げて5秒間止めてから降ろします。10回からはじめて、20回を3セット行えるようにしたいですね。

 股関節外転筋郡エクササイズ-2

図5.右中殿筋の筋力強化エクササイズ-2

 うつ伏せになり、お腹の下に薄い枕を入れるか、腹筋に力を入れて、お腹をベッドから軽く浮かせておきます。一側の股関節を足の小指が天井に向かうように、横に広げてから上に上げていきます。
 右足を上げて5秒間止めてから降ろします。10回からはじめて、20回を3セット行えるようにしたいですね。

(3)片脚安定性エクササイズ

 片脚立ちが上手にできることで、左右の中殿筋のバランスが整ってきます。

図6.片脚安定性エクササイズ

 壁を背にして立ちます。そこから、筋力が強い側の左側の膝を90゜に曲げて片足立ちになります。右の膝を曲げて、左の膝の手前に足首を載せて膝を上から下に押すようにします。そして、その負荷に負けないように、骨盤の高さが左右で等しくなるように保持します。
 次に、壁から背中を離し、杖でバランスを取りながら同じように骨盤の高さを保持します。
 最終的には、壁から背中を離し、かつ杖もなくして、同じように骨盤の高さを保持します。
 徐々に難しくなりますので、少しずつレベルアップしてください。
 そして、筋力が弱い側の右側も同様に行ってくださいね。

 他にもエクササイズの方法も幾つかありますが、とりあえず、この3つを続けてください。続けることで、バランスが整ってきますよ。
 次回は、骨盤の骨盤底筋群の筋力が弱くなることで生じる、尿もれの改善方法を紹介しましょう。

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  • みんなの感想

    玉井 ひとみ

    医学的に骨盤が高い方が痛みが出るようですが、私は逆です。椎間板も悪いようなので(MRIを撮ったが説明をあまりしてくれない)その影響もあるのかもしれないですが、ステロイドを服用中で圧迫骨折をして筋力がなくなったせいか今までの腰痛が酷くなりました。これを読んでいると癖があってこうなったと理解でき今更ながらですが、訪問リハビリの担当者と相談して姿勢の改善にも取り組みたいと思います。

    返信
著者

竹井 仁

首都大学東京健康福祉学部理学療法学科教授。医学博士、理学療法士、OMT。教育機関で学生教育を実践するかたわら、病院と整形外科クリニックにおいて臨床も実践。各種講習会も全国で展開。専門は運動学・神経筋骨関節系理学療法・徒手療法。解剖学にて医学博士取得。「世界一受けたい授業」「ためしてガッテン」「林修の今でしょ!講座」など多数のメディアに出演。著書多数。 

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