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子どもの敏感さに困ったら 児童精神科医が教えるHSCとの関わり方 長沼睦雄

第16回

【HSCの本】<子育てアドバイス>褒めても喜ばない子には?

2017.10.20更新

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5人に1人といわれる敏感気質(HSP/HSC)のさまざまな特徴や傾向を解説。「敏感である」を才能として活かす方法を紹介します。
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■褒めることが心の負担になることもあります。必要なのは存在の肯定です

「HSCである娘は、『よくできたね』『すごいね』と褒めても、あまり喜びません。人の心をよく読む子なので、こちらの気持ちを見透かしてしまうようです。褒める代わりにどうするのがいいですか?」

 アーロン博士はこういう資質を「本質を見抜く」という表現をしています。言葉の本質をつかんで、本当にそう思って言っているのかどうかを直感的に見抜く。HSCにはそういうところがあります。

 この一文だけでは、この子がどういう思いを抱えているのかちょっとわかりませんが、繊細なHSCの中には、褒められることがものすごいプレッシャーになる子もいます。

 どういうことかと言うと、褒められるというのは、受けとめ方次第では「そうならないとダメだよ」と聞こえてしまうのです。

 「いい子だね」と言われると、「いつも『いい子』って言われるようにしないといけない」と思ってしまう。「すごいね」と言われると、「いつも『すごい』と言われるようでないと、喜んでもらえないんだ」と思ってしまう。「優しいね」も「頭いいね」も「上手にできたね」も何でもそう。HSCにはとくにこの傾向があります。相手が何を期待しているかを察して、その期待に沿うようにしなくては、とがんばってしまうのです。

 こうなると、子どもは褒められてもうれしいどころか、責任感とプレッシャーで緊張してしまいます。普通の子ならそんなに心配しなくてもいいでしょうが、HSCは共感性が高く人の気分に左右されやすいところがあるので、相手に合わせようとしてしまうのです。

 とくに、子どもは親に好かれたい、愛されたいという気持ちがありますから、親が思っているであろうことを先回りして推しはかってしまいます。

 こういうケースで親御さんに「お子さんは、こうしなくてはいけないという過剰な責任感を負ってしまっているようですよ」という話をすると、たいていの場合、「そんなことを強要したことはありません」と答えが返ってきます。知らずしらずのうちにプレッシャーをかけていることに気づかないのです。こういうパターンは、ソフトな支配のかたち、「やさしい虐待」に発展してしまうことがあります。

 では、褒める代わりにどうしたらいいのでしょうか。

 大事なのは、存在の肯定です。その子の存在そのものを、丸ごと受け入れ、認めてあげるのです。

 「それでいいんだよ。できてもできなくても、ママはいつも○○が好きだからね」

 こういう気持ちを伝えてあげればいいのです。

 それには、言葉をかけるよりスキンシップが何より効果的です。ハグやタッチをするのが一番伝わりやすいと思います。もちろん言葉も大切ですが、やさしく心地よく体の感覚で伝わることは言葉よりもずっと強いのです。

 「わかる」「伝わる」には、思考・感情・感覚の3つのわかり方、伝わり方があります。思考というのは頭でわかる、つまり言葉を通じて頭で理解すること。感情とは、胸、すなわち気持ちでわかること。では感覚とは何かというと、身体つまり肌でわかることなのです。頭でわかるより、気持ちでわかるほうが身にしみます。それ以上に深く身にしみるのが肌感覚。だから、いろいろなものがわかるときに、身体(肌)にまで伝わることが一番身にしみて、深いのです。

 ハグというのは、相手と胸と肌を接触させます。それだけ深く伝わりやすいのです。相手と心を通い合わせたかったら、ハグするのが一番いい。背中に手を回してさすったり、腕に力を入れてギュッと抱きしめてあげたりすると、より効果的です。ギューっと抱きしめることは、究極の存在肯定になるのです。

 心理療法の中にも「ハグ療法」というものがあります。

 生きづらさを抱えて私のところを受診するのは女性が多いため、やたらにハグをするとハラスメント問題になりかねませんから、ふだんハグ療法はあまりやりません。しかし、いろいろなやり方をしてもうまくいかない、もう打つ手がないと思ったときには、「ハグするよ、いいかい?」と聞いて、了解を得てからハグすることがあります。

 「ここは安心できる場所だよ」「あなたを大事に思っているよ」という気持ちでハグをしていると、その人のこわばっていた体が次第にほどけていくのがわかります。本来は、それをやってくれる人が、身近にいることが一番望ましいことなのです。

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著者

長沼 睦雄

十勝むつみのクリニック院長。1956年山梨県甲府市生まれ。北海道大学医学部卒業後、脳外科研修を経て神経内科を専攻し、日本神経学会認定医の資格を取得。北海道大学大学院にて神経生化学の基礎研究を修了後、障害児医療分野に転向。北海道立札幌療育センターにて14年間児童精神科医として勤務。平成20年より北海道立緑ヶ丘病院精神科に転勤し児童と大人の診療を行ったのち、平成28年に十勝むつみのクリニックを帯広にて開院。HSC/HSP、神経発達症、発達性トラウマ、アダルトチルドレン、慢性疲労症候群などの診断治療に専念し「脳と心と体と食と魂」「見えるものと見えないもの」のつながりを考慮した総合医療を目指している。

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