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第32回

発達性トラウマ

2018.02.16更新

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【 この連載は… 】すぐにびっくりする。興奮したあとはなかなか寝つけない。服がぬれたり、砂がついたりすると、着替えたがる……5人に1人といわれる敏感気質(HSP/HSC)のさまざまな特徴や傾向を解説。「敏感である」を才能として活かす方法を紹介します。
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発達性トラウマ

 発達性トラウマという概念があります。近年、注目されるようになってきている概念で、トラウマ心理学ではすでに使われています。

 先ほど説明したように、生まれたときには神経の連絡網になんら異変がなかったはずの人が、強いストレスを浴び続けることで、神経ネットワークの接続の障がいを起こしてしまうというものです。

 厳しいしつけ、身体的・心理的な虐待、過保護や過干渉による心理的束縛、家族内不和、深刻ないじめ、性的虐待、あるいは家族の死による悲嘆などが続くと、子どもは家庭生活で安心感を得ることができず、慢性的なストレスにさらされます。それが発達性トラウマとなり、不安や恐怖、過剰な緊張により心身のバランスを崩し、心の病に陥ってしまうケースも少なくないのです。

 発達の過程で子どもたちが傷つくと、心の基本構造に変化が生じ、次の3つの症状としてあらわれます。

  1.  1 自尊感情の低下(自分を好きになれない)
  2.  2 対人関係、社会性の偏り(友人を作れない)
  3.  3 衝動コントロールの問題(感情のコントロールができない)

 その3つが最初からだったのか、それともトラウマで起こったのかの判断は難しいですが、そういった症状のある子の脳に、神経ネットワークの接続の障がいが起きているということがわかってきたのです。

 自分を好きになるということがとても大事です。自分を好きになれなくなると、友だちとの関係が壊れていく、感情がコントロールできなくなる。そして、心の病を招いてしまうのです。

 ストレスは受ける側の感受性の問題です。ストレス刺激をどう受け取るかで、ストレスになるか、ならないかが決まります。

 敏感で繊細な人は、抑制が強く、また内に溜め込む傾向が強く、ストレスを受けやすくなります。

 「自分が悪いんだ」「これは自分のせいだ」という思考で自分を責めてしまうと、感情を内に閉じ込めてストレスになる。そういうことが長期間にわたって続くと、神経の正常な発達が阻害されるのです。

 敏感な子たちに成長の過程で異変が起きやすいのは、そういう影響もあるのかなと私は思っています。

 敏感で繊細な子が、親や周囲から理解されず、支えを得ることもできないと、本や空想やゲームの世界に逃げたり、感情や感覚を感じないようにしたり、知的に早熟となったりなどして自分を防衛しようとします。傍目には問題がないように見えるため、周囲は気がつきません。しかしそれが続くと、記憶や感情、感覚の抑圧、解離を起こしてしまうのです。

 繊細で豊かな感覚世界やマイナス感情の渦巻く内面世界。その子に接する大人の側に、そういった心理的防衛の知識や理解がなければ、心の目でその子を見ようとしなければ、本質は見えてきません。

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著者

長沼 睦雄

十勝むつみのクリニック院長。日本では数少ないHSPの臨床医。昭和31年山梨県生まれ。北海道大学医学部卒業。脳外科研修を経て神経内科を専攻し、日本神経学会認定医の資格を取得。北海道大学大学院にて神経生化学の基礎研究を修了後、障害児医療分野に転向。道立札幌療育センターにて小児精神科医として14年間勤務。平成12年よりHSPに注目し研究。平成20年より道立緑ヶ丘病院精神科に勤務し、小児と成人の診療を行う。平成28年十勝むつみのクリニック開業。発達障害、発達性トラウマ、解離性障害などの診断治療に専念し、脳と心と体の統合的医療を行っている。著書に『活かそう!発達障害脳 「いいところを伸ばす」は治療です。』(花風社)、『敏感すぎる自分を好きになれる本』『気にしすぎ人間へ クヨクヨすることが成長のもとになる』(ともに青春出版社)、『コミックエッセイ 敏感過ぎる自分に困っています』(宝島社)などがある。

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