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子どもの敏感さに困ったら 児童精神科医が教えるHSCとの関わり方 長沼睦雄

第31回

【HSCの本】みんな子どものときから苦しんでいる

2018.02.09更新

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5人に1人といわれる敏感気質(HSP/HSC)のさまざまな特徴や傾向を解説。「敏感である」を才能として活かす方法を紹介します。
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みんな子どものときから苦しんでいる

 自閉スペクトラム症には共通点がふたつあります。

 コミュニケーションが苦手であることと、こだわりが強いこと。新しい診断基準では、このふたつが定義になっています。以前はその他にもいくつかの特徴が挙げられていたのですが、いまは定義から外れました。そうすると、いろいろな意味でその範疇(はんちゅう)に入ってしまう人が出てきます。

 コミュニケーションが苦手というのが定義ですが、自閉スペクトラム症の子どもたちの中にも、人の気持ちが非常によくわかる子たちがいます。また、HSCには、気持ちが敏感すぎて、言葉がうまく出ないことによるコミュニケーションの苦手さというのもあります。このあたりが、HSCが自閉スペクトラム症と間違われてしまうところです。

 ただ、「コミュニケーションが苦手かどうか」だけを見ると難しいですが、自閉スペクトラム症には他のいろいろな特徴があるので、そこでどちらかがわかります。

 表情、態度、運動、そして人の目を見るか(自閉スペクトラム症の子は人の目を見ないことが多い)など、全体的にとらえれば自閉スペクトラム症というのは見ただけですぐにわかるぐらいはっきりしています。

 でも、HSCの子たちはそういうことはありません。人をよく見て、感じています。

 神経発達症の中にも、子どものころは普通で、大人になってから症状が出たと考えられているケースがよくありますが、発達の問題ですから、大人になって突然なるということはあり得ません。普通の生活をするには困難がある症状を抱えていると判明したのが大人になってからだったというだけで、その人自身は、子どものころから何かしら症状を抱えていたのです。

 大学を卒業して12年働いたあと、神経発達症と診断されたある男性は、「いやあ、小さいときもいろいろ大変でした」と言います。彼は、名門といわれる大学を出ています。子どものときからずっと勉強ができ、成績優秀でした。そのため、本人はいろいろつらい症状を抱えていても、周囲は彼が「普通のようにできない」ことや「苦しい思いをしている」ことに気づいてやれなかった、見逃していたのです。

 彼は問診票に、「私たちの感覚過敏や鈍麻は、気になる、気にならないというレベルで表現できるものではない」と書いています。

 診察のときに絵を描いてもらったのですが、顔が描いてあって、上に箱があります。説明として、こう書かれています。

「いろいろな情報がたくさん入りすぎて情報が渋滞するか、統制困難になる。情報が多すぎると頭からあふれてブロークンする」

 情報の過剰摂取というか、過剰に入りすぎて処理できない。キャパシティ・オーバーになって、脳が混乱してフリーズし、アウトプット不能状態になってしまう。これが自閉スペクトラム症のフラッシュバックとか、パニックというものです。ここが神経発達症でも、HSPでも起こるところ、似ているところです。

 私はこの男性を、「自閉スペクトラム症でHSP」と診立てています。感覚の敏感さだけではなく、人の気持ちにもものすごく敏感な方です。彼の敏感さは、自閉スペクトラム症としての感覚過敏と、HSPとしての感覚過敏の両方が合わさったものです。

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著者

長沼 睦雄

十勝むつみのクリニック院長。1956年山梨県甲府市生まれ。北海道大学医学部卒業後、脳外科研修を経て神経内科を専攻し、日本神経学会認定医の資格を取得。北海道大学大学院にて神経生化学の基礎研究を修了後、障害児医療分野に転向。北海道立札幌療育センターにて14年間児童精神科医として勤務。平成20年より北海道立緑ヶ丘病院精神科に転勤し児童と大人の診療を行ったのち、平成28年に十勝むつみのクリニックを帯広にて開院。HSC/HSP、神経発達症、発達性トラウマ、アダルトチルドレン、慢性疲労症候群などの診断治療に専念し「脳と心と体と食と魂」「見えるものと見えないもの」のつながりを考慮した総合医療を目指している。

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