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叢のものさし 小田康平

第18回

タイ仕入れ旅行記

2019.07.11更新

読了時間

【 この連載は… 】 植物選びの基準は「いい顔」をしているかどうか……。植物屋「Qusamura(叢)」の小田康平さんが、サボテンや多肉植物を例に、独自の目線で植物の美しさを紹介します。植物の「いい顔」ってどういうことなのか、考えてみませんか?
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熱帯の植物は一年中休むことなく生長し続け、スケールの大きさには目を見張るものがある。

山のような植物の群れから巡り会う。一度味わったらやめられない感覚。

今年1月にタイ・バンコクへ仕入れに行ったときのことを書いてみる。タイは北半球に位置する国なので1月は一応冬か、くらいに考えていたらびっくりすることになる。日中の気温は35℃を超え、サボテンハウスの中になると優に50℃を超えている。
そんなバンコクでの仕入れは、今回で2度目。バンコク郊外のマーケットをいくつも巡る。現地に精通している植物バイヤーにお目当ての植物を伝え、車で案内してもらう。車窓から景色を眺めていると、バンコク周辺には数え切れないほどの植物のマーケットが並んでいることがわかる。とにかく植物マーケットが連なる。隣も、その隣もマーケット。そのすべてを訪ねることは到底不可能で、植物マーケットをいくつもやり過ごしながらの道中となる。一体、どこにこれだけ多くの需要があるのかわからないが、どこのマーケットにも植物がびっしり並び、そのどれもがきれいに整頓され管理されている。大型の植物、ラン、シダ植物、チランジア、サボテンなどそれぞれの専門ブースがあり、のんびりと時間を過ごすおじさんやおばさんが店番をしている。どの店も慌ただしく動いている人はおらず、そんなに売れまくっている感じがしないのも不思議だ。
なかでも最も大きなマーケットが、チャトゥチャック・ウィークエンドマーケット。そこは名前の通り土日がメインの食品や日用品のマーケットだが、毎週水・木に限っては園芸植物のマーケットに姿を変える。数え切れないほどの園芸植物の露店が、タイ全土からこの日をめがけて集結し、そのどれもが植物を販売するという世界的に見ても大きなマーケットだ。ここ最近では、日本国内の植物ブームにより日本から買い付けに来るバイヤーも多い。そうしたれは火曜の夕方、各店が設置準備をしている時間に前乗りし、いち早くお目当てのものを入手する。当然、僕もその時間に入り込む。日本への植物の輸入は、通常の植物であれば植物の学名と数量を提示し、輸出国(今回の場合はタイ)に植物検疫証明書を発行してもらう。ワシントン条約で守られている植物であれば、追加でCITES植物の輸出申請を行った後、許可を取得する必要がある。やや専門的な作業になるが、今では輸入をサポートしてくれる多くの商社があるので探してみるとよい。
まだ国内では見かけたことのない種類の植物、タイ独特の気候を活かしとんでもないサイズになった植物、はたまた思いつきもしない変わった仕立ての植物など、発見や巡り合いはいくつもある。山のような植物の群れからそれらを引き抜くことは一度味わったらやめられない感覚だ。スムーズにいくと手続きを経て半月ほどで、選んだ植物は空輸で日本にやってくる。届けられた植物は国内で発根させ仕立て直したり、親木になったりして叢の植物となっていく。

バンコク市内のチャトゥチャック・ウィークエンドマーケット。数え切れないほどの園芸植物の露店が並ぶ。マーケットを一通り見るには一日を要する。

道路脇の植栽。ヘルメットを鉢代わりにしている。タイの人々には植物がなくてはならないものなのだろう。

 

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この連載は、「月刊フローリスト」からの転載です。
最新話は、「月刊フローリスト」をご覧ください。

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著者

小田康平

1976年、広島生まれ。2012年、〝いい顔してる植物〟をコンセプトに、独自の美しさを提案する植物屋「叢-Qusamura」をオープン。国内外でインスタレーション作品の発表や展示会を行う。最新作は、銀座メゾンエルメス Window Display(2016)。http://qusamura.com

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