第3回
サボテン接ぎ木の具体的手法
2018.04.12更新
【 この連載は… 】 植物選びの基準は「いい顔」をしているかどうか……。植物屋「Qusamura(叢)」の小田康平さんが、サボテンや多肉植物を例に、独自の目線で植物の美しさを紹介します。植物の「いい顔」ってどういうことなのか、考えてみませんか?
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曲がって育った竜神木を台木にして、穂木には金晃丸綴化という突然変異個体を接いだ。接ぎ木したのは一昨年のことだが、すでに穂木の直径は15cmを越えている。たった1年半で10円玉程度のサボテンがここまで大きくなる。タイミングと管理さえ間違わなければ、接ぎ木は爆発的に生長していく。
今回はサボテン接ぎ木の方法を解説する。初めての人でも成功率が高まるように、具体的なコツを書いていく。破天荒な接ぎ木の組み合わせも、純粋に穂木を大きく生長させる接ぎ木も、基本的な知識がないとはじまらない。さまざまな接ぎ木の手法を憶えると、もしかしたら新しい植物の可能性に巡り合えるかもしれない。数週間、数ヵ月後にどんどん生長を進める植物を見ると、植物を育てる楽しさがもっと味わえるはず。一時的な見た目や種類で植物を選ぶこともひとつの要因ではあるが、植物と接していて最も楽しいのは、すくすく生長する様を実感できたときである。
【1】台木の用意
接ぎ木を行う場合、実生(種から育てた)の柱サボテンを使うことが最も望ましい。実生株が入手できない場合は、挿し木のサボテンでも可能。今回は最も接ぎ木しやすい台木のひとつ、竜神木を使用。台木は生長を開始しているものを選ぶ。
写真左のように新たに生長した部分に線ができており、肌に張りがあるものがよい。
【2】穂木の用意
直径2cm程度の株、もしくは、そのサイズの子株が採れそうな群生株を用意する。群生株の場合、接ぎ木が失敗に終わっても、また子株を採り再チャレンジできる。今回使用のマミラリアは特に生長が速く接ぎ木の成果がわかりやすい。
【3】主な道具
- ◎新品のカッターナイフ 2本
- ◎伸縮性包帯(100円ショップで購入できる)
- ◎消毒用アルコール
【4】時期について
数日間晴れが続くような日を待つ。3〜5月が最も成功しやすい。
【5】接ぎ木の作業の流れ
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1:消毒したカッターナイフ(新品の刃)で柱サボテンの上部を切断。手前に引くように切ると水平に切りやすい。
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2:切り口の中央に見える円状のものが、維管束と呼ばれる水や養分を送るパイプの束。
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3:稜を削いでいく。削ぐ長さは2〜3cm程度。水分の多いサボテンの切断面が乾燥で陥没するのを防ぐ。
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4:稜を削ぎ終えた後に、もう一度上部を水平に切り戻す。こうすることで、さらに乾燥による陥没を防ぐ。
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5:切断面がガタガタだと活着しにくいので、スパッと切れているか確認する。台木の準備ができた。
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6:ナイフを新しいものに替えて群生球の子株を採る。この際にできるだけ子株の付け根から切る。
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7:穂木の切断面を水平に切る。
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8:切断面の面取りをする。マミラリアのような肉の柔らかいサボテンは面取りすることで成功率があがる。
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9:面取り後の写真。縁の細かな刺を取り除くイメージ。マミラリア以外のサボテンでも、面取りをするとよい。
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10:もう一度穂木の切断面を切り戻し、切り口を整える。
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11:台木の維管束と穂木の維管束を重ね合わせるようにして、穂木を台木の上に置く。
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12:包帯を適当な長さに切り、真上から穂木に被せるように押さえる。このとき、両側に同じだけの力を加える。
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13:風通しの良い明るい日陰に置く。包帯を被せた後20~30分間扇風機で風を当てると成功率は更に上がる。そのまま10日前後放置する。その間、水やりや移動は禁止。
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14:刺に引っかからないようにゆっくりと包帯を外す。成功していれば、台木とべったりと活着していて、数ヵ月後には花を咲かせたり、子株を吹いたり、生長を加速させる。
この連載は、「月刊フローリスト」からの転載です。
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