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第19回

骨盤前傾の矯正 骨盤前傾の人の正しい立ち方と歩き方

2018.10.02更新

読了時間

【 この連載は… 】 テレビ、雑誌などでお馴染みの「姿勢」の第一人者が、疲れない体をつくる知識とメソッドを徹底紹介。医学的理論に基づいた「全身のつながり」を意識した姿勢改善エクササイズで、腰痛や肩こり、慢性疲労などの不調を劇的に改善します。


 壁から5~7cm踵を離して立ったときに、骨盤が前傾するのが「後弯前弯型」です。
 他の「後弯平坦型」と「平背型」にも共通した不良姿勢としては、「猫背で、頭が体の前に出て、顎が上がっている状態」です。
 頭部は通常よりも伸展しています。このことで、首の前の皮膚と筋肉が引っ張られることになり、口を開こうとする力が働きます。首の関節の上部の関節は特に伸展してしまい、下顎の後方変位も引き起こします。
 ひどくなってくると、下顎の関節が後方変位することで、外側翼突筋上部は伸張され、伸張反射が早期の収縮を誘発します。この伸張反射によって、外側翼突筋が付着する関節円板が前方に変位してしまい、顎関節症が生じます。
 さらに、異常な嚥下パターンも生じてしまい、物を飲み込むのがうまく出来なくなるようになります。
 この状態を修正することで、猫背を修正し、頭を体の真上に乗せ、顎が上がっていない状態を作っていきます。

 最初に、「バンザイ筋膜リリース」を行います。
 足を椅子かソファに乗せて、肩甲骨の下端のあたりに丸めたタオルを敷きます。頭は枕に乗せて、顎を軽くのど元に突きつけたままで、バンザイして胸の前を30秒以上リリースします。他のリリースも同様ですが、慣れてきたら90秒以上が理想の時間です。

 さらに両足を床に付けて膝を曲げた状態でも、リリース出来るようにしましょう。ただし、お腹に軽く力を入れて、腰を床に押しつけておくことも大切です。

 次は、「肘付け四つ這いお尻引き筋膜リリース」です。
 左右の肘をくっつけて手のひらを上に向けた四つ這いになります。肘と膝との距離よりも、肩からお尻との距離の方が長い逆台形が理想的です。ここからお尻を後ろに動かしていきます。そのときに左右の肘同士が離れたり、手の平同士が向かい合ってくるのは正しく行えていない証拠です。
 この現象が起きそうになる手前で止めてリリースを行います。お腹には軽く力を入れ、腰が伸展しないように注意しながら、30秒以上リリースします。

 次は、「平泳ぎ肘引き肩回し筋膜リリース」です。
 椅子に座り、背中を丸めすぎないように両肩を前に突き出して、左右の肩甲骨の間を20秒以上リリースします。
 次に両肘を肩の高さのまま後ろに引きます。顔は正面を向くように顎を引いておきます。両胸の間を20秒以上リリースします。
 さらに、顎はのど元に引きつけたまま、両肘を肩より前に戻してから、両手を前に向けるように両方の肩甲骨を引き起こして20秒以上リリースします。このとき腰が反らないように、お腹に軽く力を入れておいてください。

 これらはどの姿勢にも共通な修正方法です。つぎに、骨盤が前傾している後弯前弯型の修正方法を紹介します。

 後弯前弯型では、身長も低くなり、背骨のS字カーブが強くなり、股関節も曲がってきます。年を取ると、膝も曲がってきます。
 骨盤周囲で短縮あるいは優越に働く筋群は、腸腰筋、大腿筋膜張筋、大腿直筋、そして腰部の脊柱起立筋です。逆に延長あるいは弱化しうる筋群は、腹筋群と、お尻の大殿筋、もも裏のハムストリングスです。

 最初に、「腰伸ばし筋膜リリース」を行います。
 これは後弯前弯型に対して、腰の反りを治していくのに効果的です。まず、床に寝て足を曲げ、両膝の後ろで両手を組みます。そして、両膝を胸に近づけてくるようにします。お尻が浮くまで持ち上げて、腰を20秒以上リリースします。
 続いて、両膝を左に倒して骨盤と腰をその方向に回して20秒以上リリース。さらに、両膝を右に倒して骨盤と腰をその方向に回して20秒以上リリースします。
 両膝を倒すときに、肩まで浮いてしまうというのはNGです。

 次は、「腰から股関節の筋膜リリース」です。
 これは後弯前弯型に対して、腰の反りを治して、腰から股関節の前につく筋肉(腸腰筋)を柔らかくしていくのに効果的です。
 両手と右膝を前方につきます。あごを軽く引いたままで、からだと頭は斜め前方に伸びるようにして、左足を後ろに滑らせて伸ばしながら30秒以上リリース。
 さらに左の骨盤を床方向に沈み込ませながら30秒以上リリースします。続いて、反対もリリースします。左右をそれぞれ3回繰り返してください。慣れてきたら時間も長くしてください。左右で伸びにくい側のリリース時間を15秒以上長くして、じっくりと時間をかけるようにして下さい。

 次は、「腰から股関節の片膝立ち筋膜リリース」です。
 右手を椅子の座面やテーブルに乗せます。右膝を曲げて右の足を前に出します。左の膝は後ろにつきます。あごを軽く引いたままで、からだと頭は斜め前方に伸びるようにし、左膝は後ろに引いて30秒以上リリース。  
 次に、左足首を左手で持ち、膝を曲げていきながら30秒以上リリースします。続いて、反対側もリリースします。左右をそれぞれ3回繰り返してください。慣れてきたら時間も長くしてください。左右で伸びにくい側をじっくりと時間をかけるようにしてください。

 次は、「前傾の立ち方治しエクササイズ」です。
 壁から踵を7cmほど離して、壁にもたれかかるように立ちます。膝をまっすぐにしたままで、腰と壁の間の隙間が少なくなるように腹筋と大殿筋に力を入れます。さらに胸を張って両肩を壁に近づけます。胸の真ん中が前に押し出されるように動かすことが大切です。さらに、顎をのど元に近づけるように軽くうなずくようにしながら、頭部を壁にくっつけてください。

 疲れたら休むようにしながら、1日の中でも頻回に行う習慣をつけてください。壁を使ってしっかりできるようになったら、次の段階として、壁を使わないでも普段の立ち姿勢の中でできるようにしましょう。

 次は、「大股歩行エクササイズ」です。
 普段よりもやや大股で歩きます。足を前に振り出すときに、後ろ側の大殿筋にキュッと力を入れましょう。大股で歩くことだけを意識すると、腰は反りがちになってしまいます。そこで、大殿筋と同時におへそを背骨に近づけるように腹筋に力を入れると(Stability)、大殿筋と協力して骨盤を後傾方向に矯正しながら歩く(Mobility)ことができるようになります。ヒップアップ効果にもつながります。
 振り出した足を床につけるときには、踵からつけるようにしてください。ハイヒールばかり履いている人はつま先からつこうとしますが、それはNGです。
 胸の真ん中を前に突き出すようにし、手も前後にしっかりと振れるように歩きましょう。とくに肘を後ろに伸ばしてきれいに振ることで、二の腕のたるみ防止にもなります。

 これらの修正エクササイズを根気よく継続することで、骨盤の前傾が正常に近づいていきます。ぜひチャレンジしてください。次回は、骨盤が反対方向に傾斜して後傾している方の矯正方法を説明しましょう。

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【第16回までで解説した上半身の姿勢改善が、本になりました。】
『疲れない体になるには筋膜をほぐしなさい』

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著者

竹井 仁

首都大学東京健康福祉学部理学療法学科教授。医学博士、理学療法士、OMT。教育機関で学生教育を実践するかたわら、病院と整形外科クリニックにおいて臨床も実践。各種講習会も全国で展開。専門は運動学・神経筋骨関節系理学療法・徒手療法。解剖学にて医学博士取得。「世界一受けたい授業」「ためしてガッテン」「林修の今でしょ!講座」など多数のメディアに出演。著書多数。 

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