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第18回

骨盤の不良姿勢

2018.08.17更新

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【 この連載は… 】 テレビ、雑誌などでお馴染みの「姿勢」の第一人者が、疲れない体をつくる知識とメソッドを徹底紹介。医学的理論に基づいた「全身のつながり」を意識した姿勢改善エクササイズで、腰痛や肩こり、慢性疲労などの不調を劇的に改善します。


 骨盤は体の中心にあります。足から体重がかかり、左右の骨盤に綺麗に負荷が分散すればいいのですが(図1)、普段の姿勢の悪さが、骨盤の不良姿勢の原因になります。

図1 骨盤にかかる負荷の分散

 骨盤の不良姿勢は、横から見たときに3種類(図2)あります。

図2 横から見た、3つの不良姿勢

 壁から5~7cm踵を離して立ったときに、骨盤が前に傾く前傾が1つ(後弯前弯型)、後ろに傾く後傾が2つ(後弯平坦型と平背型)あります。3つともに、猫背で、頭が体の前に出て、顎が上がっているのは共通です。
 後弯前弯型(図3)では、身長も低くなり、背骨のS字カーブが強くなり、股関節も曲がってきます。年を取ると、膝も曲がってきます。腰は反り、壁との隙間も広くなります。
 骨盤周囲で短縮あるいは優越に働く筋群は、腸腰筋、大腿筋膜張筋、大腿直筋、そして腰部の脊柱起立筋です。逆に延長あるいは弱化しうる筋群は、腹筋群と、お尻の大殿筋、もも裏のハムストリングスです。

図3 後弯前弯型

 後弯平坦型(図4)では、お尻が壁に付かず、股関節が前方に移動し、膝が後ろに反ってきます(膝の過伸展)。
 平背型(図5)でも、骨盤は後傾していますが、骨盤(寬骨)が普通の人より縦に長く、意識しないでもズボンが腰穿きになってしまいます。仙骨が起き上がることで、寬骨との関節を適合させます。仙骨が起き上がることで、腰が平坦になっていきます。
 骨盤周囲で短縮あるいは優越に働く筋群は、もも裏のハムストリングスで、逆に延長あるいは弱化しうる筋群は、大殿筋、もも前の大腿直筋、お腹の外腹斜筋です。

図4 後弯平坦型

図5 平背型

 骨盤を前後から見たときの不良姿勢は、骨盤の高さの不均衡です(図6)。
 例えば右骨盤の腸骨陵が右の方が高ければ、右の膝は内反(O脚)傾向になり、足は外側で立つことで、骨盤の高さに合わせようとします。
 逆に左側の腸骨陵が低いことで、足の長さが右よりも長くなり、それを短く見せるために、左膝は外反(X脚)傾向になり、足は扁平足や外反母趾になります。
 骨盤周囲で短縮あるいは優越に働く筋群は、右の腰方形筋、股関節の内転筋群や、下腿の腓腹筋内側頭や後脛骨筋です。逆に延長あるいは弱化しうる筋群は、右のお尻の横側の中殿筋、それから下肢の外側の筋群です。
 左側は、これらのそれぞれ反対の筋になります。

図6 骨盤の高さの違いによる不良姿勢

 これらの不良姿勢があることで、様々な障害が生じてきます。後弯前弯型による股関節伸展障害や腰痛。後弯平坦型や平背型による腰痛や膝痛、または股関節痛。骨盤の高さの不均衡による、高い側の腰の横の痛み、内反膝、足関節捻挫。低い側の腸脛靱帯炎や鵞足炎、扁平足や外反母趾。
 これらの機能異常を防ぐことで、健康な体が作れます。これらの機能異常を防ぐために、どんな方法が有効なのか、次回、まずは骨盤前傾の矯正から説明していきましょう。

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【前回(第16回)までで解説した上半身の姿勢改善が、本になりました。】
『疲れない体になるには筋膜をほぐしなさい』

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著者

竹井 仁

首都大学東京健康福祉学部理学療法学科教授。医学博士、理学療法士、OMT。教育機関で学生教育を実践するかたわら、病院と整形外科クリニックにおいて臨床も実践。各種講習会も全国で展開。専門は運動学・神経筋骨関節系理学療法・徒手療法。解剖学にて医学博士取得。「世界一受けたい授業」「ためしてガッテン」「林修の今でしょ!講座」など多数のメディアに出演。著書多数。 

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