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子どもの敏感さに困ったら 児童精神科医が教えるHSCとの関わり方 長沼睦雄

第33回

【HSCの本】見落とされがちなきょうだい問題

2018.02.23更新

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5人に1人といわれる敏感気質(HSP/HSC)のさまざまな特徴や傾向を解説。「敏感である」を才能として活かす方法を紹介します。
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見落とされがちなきょうだい問題

 どこのきょうだいにも、母親の愛情を求めてのせめぎ合いというのがあるものです。親が「どの子もかわいい」「どの子も大切」という姿勢だとあまりトラブルになりにくいのですが、母親からかけられる愛情に大きな偏りがあると、それは子どもの心に影響を与えます。

 たとえば、わりと問題が起こりやすいのが、きょうだいの中に、障がいのある子がいる場合です。重い障がいのある子がいると、親の意識はどうしても障がいのある子のほうに集中してしまいます。他の子が、軽い発達の凹凸があったり、HSCだったりしても、そこまで目が行き届かずに放っておかれてしまうといったことがあります。十分な愛情や適切なケアがなされないわけです。そうすると、その子はストレスを高めます。

 あるいは、障がいの重い子に対して、他のきょうだいが一生懸命、面倒を見る。優しくていい子です。しかし、本当はその子だって愛情を注いでほしいという感情が心の奥底にあります。心の中では、いろいろなことを我慢しているのです。優しい子ほど、「自分はわがままを言ってはいけない」と自分を抑えつけようとする。そしてストレスが溜まってしまう。結果、面倒を見ていた優しい子が、本当のことを言えず、誰にも弱味を見せられなくなってしまうケースもあります。

 HSCの場合でもそうで、感じやすい心を持っているだけに、さまざまな葛藤が生じやすくなります。

 一般に、きょうだい同士では、年齢の上下に関係なく、鈍感なほうが敏感な子に強くあたるパターンが多いです。そうすると、お母さんは敏感なほうにつく。敏感でない子が荒れる。お母さんのいないところで、いっそうきつくあたるというようなことがけっこうあります。

 しかし、こんな例もあります。ある男性は、小さいときから本当に敏感すぎて、怖がりで、親に手を焼かせてしまう子だったといいます。母親は次第に愛想を尽かし、だんだん彼をうとんじるようになって、弟ばかりをかわいがるようになり、強い孤独と人間不信に陥ったと語ります。そういうケースもあるのです。

 子どもの心の問題を診るとき、普通はその子だけを診ます。でも、実際は親も一緒に診ないとわからないのです。そのときに、親とその子の問題だけを診ていてはダメで、きょうだい間の関係がどうか、母親の愛情をめぐってどういう力関係が生じているか、といったことも診なくてはなりません。そういうところが意外と見落とされがちです。

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著者

長沼 睦雄

十勝むつみのクリニック院長。1956年山梨県甲府市生まれ。北海道大学医学部卒業後、脳外科研修を経て神経内科を専攻し、日本神経学会認定医の資格を取得。北海道大学大学院にて神経生化学の基礎研究を修了後、障害児医療分野に転向。北海道立札幌療育センターにて14年間児童精神科医として勤務。平成20年より北海道立緑ヶ丘病院精神科に転勤し児童と大人の診療を行ったのち、平成28年に十勝むつみのクリニックを帯広にて開院。HSC/HSP、神経発達症、発達性トラウマ、アダルトチルドレン、慢性疲労症候群などの診断治療に専念し「脳と心と体と食と魂」「見えるものと見えないもの」のつながりを考慮した総合医療を目指している。

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