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子どもの敏感さに困ったら 児童精神科医が教えるHSCとの関わり方 長沼睦雄

第40回

【HSCの本】なぜ、解離するのか

2018.04.13更新

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5人に1人といわれる敏感気質(HSP/HSC)のさまざまな特徴や傾向を解説。「敏感である」を才能として活かす方法を紹介します。
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なぜ、解離するのか

 不思議なことですが、解離状態にある子は体の深部が冷えて手足が温かい。温かいというより、むしろ熱いくらい。副交感神経が優位な身体になっているのかもしれません。

 解離で生み出される人格というのは、基本的に、自分を助けるために生み出されます。

 これができないから自分がやってあげるんだ、ということで出てくるのです。

 ただ、ちょっと複雑で、たとえばレイプされたとき、解離して本人の意識が外に出ます。

 身体に残っている意識が加害者に対する怒りを持つのは当然ですが、それに加えて、こういうことをされてしまった自分に対しての自責の念を持つ場合があります。

 この人格が、やがて、こっちに戻ってくるのです。本人は解離して外にいたから記憶がない。でも、身体に残った人格は記憶があるから、それと似た場面とかを見せられると、カーッとなって出てくる。本来は自分を救うために生まれた人格であり、怒りは加害者に向かうものなのですが、本人が自分に意識を向けてくれないでいると、今度は、その逆に怒りが本人に向き、本人を困らせるようになります。

 敏感さから生じる心の負担を放っておく場合にも、似たようにいろいろなことが起きてきます。

 HSCの子は敏感だから感情を抑え込んで、自分がなくなってしまいやすい。そして、抑圧した感情が、あとで怒りとして出てきます。抑圧した感情に意識を向けてあげるとよいのです。

 前世の記憶や胎内記憶、「超」五感や直感、さらには隠れた解離。敏感な子たちの中には、大多数が持たない何かを持っている子がいます。私は彼らに出会い、「おもしろい」「すばらしい」「すごい」と素直に感動します。HSC、HSPには裏の意味がある。私はそう思っています。病気や障がいの症状があっても、何か大多数の人にはないものがあったり、大人顔負けの心を持っていたりする子がいるのです。

 敏感な子や障がいのある子は、普通の人が普通にできることができないという部分があるけれども、その代わりに、普通の人にはないものがあるのではないか、障がいのある状態は、凹があれば凸がある、見えないけれど宝がある、と考えるようになったのです。

 サン・テグジュペリの『星の王子さま』に、「大事なことは、目に見えない」という言葉が出てきます。

 敏感すぎて生きづらさを抱えてしまう子どもたちの、目に見えない部分にもっと目を向けてあげよう──。これは私が強く主張したいところです。

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著者

長沼 睦雄

十勝むつみのクリニック院長。1956年山梨県甲府市生まれ。北海道大学医学部卒業後、脳外科研修を経て神経内科を専攻し、日本神経学会認定医の資格を取得。北海道大学大学院にて神経生化学の基礎研究を修了後、障害児医療分野に転向。北海道立札幌療育センターにて14年間児童精神科医として勤務。平成20年より北海道立緑ヶ丘病院精神科に転勤し児童と大人の診療を行ったのち、平成28年に十勝むつみのクリニックを帯広にて開院。HSC/HSP、神経発達症、発達性トラウマ、アダルトチルドレン、慢性疲労症候群などの診断治療に専念し「脳と心と体と食と魂」「見えるものと見えないもの」のつながりを考慮した総合医療を目指している。

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