Facebook
Twitter
RSS
子どもの敏感さに困ったら 児童精神科医が教えるHSCとの関わり方 長沼睦雄

第34回

【HSCの本】学校の環境はどうするのがいいか

2018.03.02更新

読了時間

5人に1人といわれる敏感気質(HSP/HSC)のさまざまな特徴や傾向を解説。「敏感である」を才能として活かす方法を紹介します。
「目次」はこちら

学校の環境はどうするのがいいか

 繊細で敏感な子は、環境が発達に大きな影響を与えます。学校はとても重要な「環境」です。どのような学校がHSCには向いているのでしょうか。

 ある、明るく元気で超敏感な子の話です。小学校6年生ぐらいまで、みんなの人気者でした。人を助ける、気の利くいい子です。

 お母さんがHSPで、お父さんは、そういうものが理解できない人です。お母さんに理解があるから、この子もいろいろなことがやっていけたのです。

 しかし、ある時点から授業を受けられなくなって、保健室で休んでいるようになりました。中学進学を前にして、「普通学級は無理だろう」ということで特別支援学級を選びました。

 ところがそこで行き詰まってしまい、不登校になってしまいました。

 環境を変えてみたらどうかということで、もっと小規模の学校に転校しました。それがよかった。転校してよみがえりました。それまでのような、他の子に気を遣ってがんばらなくてもいい環境だというのが、よかったのだと思います。

 一般的には、敏感な子にとって、刺激が少ないほうが楽です。小規模のこぢんまりとした学校と大人数のマンモス校とでしたら、人数が少なく、のんびりしている環境のほうがよさそうな気がします。しかし、少人数のところはある種、閉鎖空間になりやすい。そこで浮いてしまったり、いじめにでも遭ったら逃げ場がなくなってしまうということも考えられます。

 一方、マンモス校は人数が多い分、いろいろな特性のある子がいます。それだけ刺激も多くなりますが、いろいろな子がいるからこそ多様な価値観が認められやすく、自由に過ごしやすいということもいえます。

 ある子の例ですが、敏感で疲れすぎてしまうため、中学生のとき、地方の少人数の学校に移りました。たしかに少人数で刺激が少なくて、楽にはなったのですが、今度は「学校がつまらない」と言い出した。HSCは早熟で大人びたところのある子が多いのですが、その子にとっては、みんな幼くて物足りない。友だちになれそうな子がいなかったのです。

 それで、不登校になってしまいました。

 ですから、一概にどういう環境の学校がいいと言いきれません。その子どもに合うかどうかを手探りで見つけていくことになります。

 先生との相性もあります。

 子どもはネガティブな印象を持つと、その人のネガティブな面しか見なくなります。これまで味方であっても、一変して敵になってしまったりします。嫌ってしまったら、徹底的に何もかもイヤだということになります。

 敏感な子の場合、ヒステリックで、威圧的で、甲高い声でギャンギャンまくしたてるようなタイプの先生は苦手です。感情をぶつけられるのが一番イヤなのです。

 「安心な環境ではのびのび育つものが、ひどい環境では敏感さが出てくる」ということをアーロン博士も言っています。

 それまでは天真爛漫(てんしんらんまん)だったのに、威圧的で理解のない先生が担任になった途端、おどおどして神経質になり、いろいろなことがうまくいかなくなり、不登校になるようなこともあります。

 先生とうまが合う・合わないというのは、子どもにとって非常に大きな問題です。敏感な子であればなおさらそうだといえます。

「目次」はこちら


【単行本好評発売中!】

この本を購入する
シェア

Share

感想を書く感想を書く

※コメントは承認制となっておりますので、反映されるまでに時間がかかります。

著者

長沼 睦雄

十勝むつみのクリニック院長。1956年山梨県甲府市生まれ。北海道大学医学部卒業後、脳外科研修を経て神経内科を専攻し、日本神経学会認定医の資格を取得。北海道大学大学院にて神経生化学の基礎研究を修了後、障害児医療分野に転向。北海道立札幌療育センターにて14年間児童精神科医として勤務。平成20年より北海道立緑ヶ丘病院精神科に転勤し児童と大人の診療を行ったのち、平成28年に十勝むつみのクリニックを帯広にて開院。HSC/HSP、神経発達症、発達性トラウマ、アダルトチルドレン、慢性疲労症候群などの診断治療に専念し「脳と心と体と食と魂」「見えるものと見えないもの」のつながりを考慮した総合医療を目指している。

矢印