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よみものどっとこむ

第197回

496話

2017.05.11更新

読了時間

【 この連載は… 】 毎日数分で「東洋最大の教養書」を読破しよう! 『超訳 孫子の兵法』の野中根太郎氏による、新訳論語完全版。読みやすく現代人の実生活に根付いた超訳と、原文・読み下し文を対照させたオールインワン。

堯曰(ぎょうえつ)第二十


496 帝王(為政者)の心得


【現代語訳】

堯(ぎょう)が帝位を舜(しゅん)に譲るとき、次のように言った。「ああ、舜よ。天の命数、すなわち帝位に就くべき順番が、お前の身にめぐり来ている。帝位に就いたら、中庸の道をとるようにせよ。もし、それができなくなって天下の万民を困窮に陥れることがあれば、天がお前に与えた恵みが永久に途絶えることになろう」。舜もまた、これと同じ言葉を禹(う)に帝位を譲るときに与えた。

殷(いん)の湯王(とうおう)が夏(か)の桀王(けつおう)を滅ぼしたときに、次のように言った。「ふつつかな履 (湯王)が、黒の牡牛をお供えし、はっきりと偉大なる天帝に申し上げます。私は天に代わって天威を行い、罪のある夏の桀王を断じて許しません。天帝の臣下たる人民の中から賢なる臣下をおおい隠すことなく採用します。また、誰に罪があり、誰に善行があるかについての選択は、すべて天帝の御心にお任せします。もし、我が身に罪があったときは、天下万民に及ぼしたまわないようにお願いします。また万一、天下の万民に罪があるなら、その罪は私が一身にお受けいたします」。

周の武王が殷の紂王(ちゅうおう)を伐ったとき、天に誓った。「周には天から賜った大きな宝があります。善人がたくさんいるということです。近い親族があったとしても、仁人があることには及びません。もし、天下の人民に過ちがあれば、それは私一人に責任があります」。

国を治めるに当たっては、権(はかり)、量(ますめ)などの度量衡を正しくしなくてはならない。次に礼楽、法制を詳しく定め、すたれた官職を復活させ、官庁を整備しなくてはならない。こうすれば四方の政治はうまくいく。次に滅んだ国を復興させ、絶えた家を継がせて家系を復活させ、世を捨て隠れている賢者を用いるようにすれば、天下の人民も心を寄せるようになる。そして、重んずるところは、人民の食糧、喪、祭りである。さて、最後に為政者のあり方として、四つの徳があることを語っておく。(一)「寛(かん)」である。寛大であれば人望が得られる。(二)「信(しん)」である。信実であれば人民は信任する。(三)「敏(びん)」である。敏活に事を行えばうまくいく。(四)「公(こう)」(公平)である。公平であれば人民は満足するのである。


【読み下し文】

堯(ぎょう)は曰(いわ)く、咨(ああ)、爾(なんじ)舜(しゅん)。天(てん)の暦数(れきすう)(※)、爾(なんじ)の躬(み)に在(あ)り。允(まこと)に其(そ)の中(ちゅう)(※)を執(と)れ。四海(しかい)(※)困窮(こんきゅう)せば、天禄(てんろく)(※)永(なが)く終(おわ)らん、と。舜(しゅん)も亦(ま)た以(もっ)て禹(う)に命(めい)ず。曰(いわ)く、予(われ)小子(しょうし)履(り)(※)、敢(あ)えて玄牡(げんぼ)(※)を用(もち)いて、敢(あ)えて昭(あき)らかに、皇皇(こうこう)(※)たる后帝(こうてい)(※)に告(つ)ぐ。罪(つみ)あるは敢(あ)えて赦(ゆる)さず。帝臣(ていしん)蔽(おお)わず。簡(えら)(※)ぶこと帝(てい)の心(こころ)に在(あ)り。朕(ちん)が躬(み)に罪(つみ)有(あ)らば、万方(ばんほう)(※)を以(もっ)てする無(な)かれ。万方(ばんほう)に罪(つみ)有(あ)らば、罪(つみ)は朕(ちん)が躬(み)に在(あ)り。周(しゅう)に大(おお)いなる賚(たまもの)有(あ)り。善人(ぜんにん)是(こ)れ富(と)めり。周親(しゅうしん)有(あ)りと雖(いえど)も、仁人(じんじん)に如(し)かず。百姓(ひゃくせい)過(あやま)ち有(あ)らば、予(われ)一人(ひとり)に在(あ)り。権量(けんりょう)(※)を謹(つつし)み、法度(ほうど)を審(つまび)らかにし、廃(すた)れた官(かん)を脩(おさ)め、四方(しほう)(※)の政(まつりごと)行(おこな)わる。滅(ほろ)びたる国(くに)を興(おこ)し、絶(た)えたる世(よ)を継(つ)ぎ、逸民(いつみん)を挙(あ)ぐれば、天下(てんか)の民(たみ)、心(こころ)を帰(き)せり。重(おも)んずる所(ところ)は民(たみ)、食(しょく)、喪(そう)、祭(さい)なり。寛(かん)なれば則(すなわ)ち衆(しゅう)を得(え)、信(しん)あれば則(すなわ)ち民(たみ)任(にん)ず。敏(びん)なれば則(すなわ)ち功(こう)有(あ)り、公(こう)なれば則(すなわ)ち説(よろこ)ぶ。


(※)暦数……天の命数。運命の意を表し、帝位に就くべき順番を指す。

(※)中……中庸。

(※)四海……天下を指す。

(※)天禄……天が下し、与えた恵み。

(※)履……湯王の名。

(※)玄牡……黒色の雄牛。夏の時代は黒の色を尊んでいた。

(※)皇皇……広大なさま。

(※)后帝……天帝のこと。

(※)簡……選ぶ。

(※)万方……天下の民。

(※)権量……「権」ははかり。「量」はますめ。

(※)四方……諸侯の国。


【原文】

堯曰、咨爾舜、天之曆數在爾躬、允執其中、四海困窮、天祿永終、舜亦以命禹、曰、予小子履、敢用玄牡、敢昭吿于皇皇后帝、有罪不敢赦、帝臣不蔽、簡在帝心、朕躬有罪、無以萬方、萬方有罪、罪在朕躬、周有大賚、善人是富、雖有周親、不如仁人、百姓有過、在予一人、謹權量、審法度、脩廢官、四方之政行焉、興滅國、繼絕世、擧逸民、天下之民歸心焉、所重民食喪祭、寛則得衆、信則民任焉、敏則有功、公則說、



*496話が長文のため、今回は1話のみの掲載となります。



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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。著書に『超訳孫子の兵法』、『吉田松陰の名言100』、『武士道の名言100』、『真田幸村の凛とした生き方』(以上、アイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術』(誠文堂新光社)などがある。

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