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よみものどっとこむ

第198回

497話

2017.05.12更新

読了時間

【 この連載は… 】 毎日数分で「東洋最大の教養書」を読破しよう! 『超訳 孫子の兵法』の野中根太郎氏による、新訳論語完全版。読みやすく現代人の実生活に根付いた超訳と、原文・読み下し文を対照させたオールインワン。

497 政治にたずさわる者の心得


【現代語訳】

子張が孔子先生にたずねた。「いかにしたら政治にたずさわれますか」。

先生は言われた。「五つの美徳を尊んで、四悪を除けば政治にたずさわることができよう」。

子張は五つの美徳とは何かをたずねた。

先生は言われた。「(一)君子は国民に恵み深いものだが、持っている財産を無駄に労費してはならない。(二)君子は国民に骨折りの仕事をさせるが、うらまれることはない。(三)君子にも欲望はあるが、他人のものを貪(むさぼ)り求めはしない。(四)君子は泰然としているが、おごり高ぶることはない。(五)君子には威厳があるが、他人に猛々(たけだけ)しくはない。以上が五つの美徳である」。

子張は「恵して費やさず」の意味をたずねた。

先生はそれに答えて、そして五つの美徳について説明された。「人民が自分たちの利益になると思っていることをそのまま保護して利益を得させることだ。これが恵んでも浪費しないということではないか。自分で骨折るべきことを選んでそれに骨を折るのだから、一体誰をうらむことがあろうか。仁を求めて仁を得るのであるから、一体何を貪むさぼることがあろう。また、君子は相手が大勢でも少人数でも、大きなことでも小さなことでも、決して相手を侮らず、いつもゆったりとして謙虚である。これが『泰にして驕らず』ではないか。さらに君子は衣冠を正しく身につけ、ものを見る姿も重々しく厳然としているので、人は畏敬の念を持つようになる。これが『威にして猛(たけ)からず』ということではないか」。

子張はさらにたずねた。「では、四悪とは何ですか」。

先生は言われた。「『虐(ぎゃく)』、『暴(ぼう)』、『賊(ぞく)』、『吝(りん)』の四つである。(一)人民になすべきこと、なすべからざることを教えもしないでおきながら、これを殺すのが虐である。(二)十分に指導も警告もしないでおきながら成績を見せろというのを暴という。(三)命令をいい加減にしておきながら、期限に間に合わないとして罰するを賊という。(四)どうせ与えねばならぬのに、出し惜しみをするのが吝である。そして、それが有司、つまり官僚というものである」。


【読み下し文】

子張(しちょう)、孔子(こうし)に問(と)うて曰(いわ)く、如何(いか)なれば斯(ここ)に以(もっ)て政(まつりごと)に従(したが)うべきか。子(し)曰(いわ)く、五美(ごび)を尊(たっと)び、四悪(しあく)を屛(しりぞ)(※)くれば、斯(ここ)に以(もっ)て政(まつりごと)に従(したが)うべし。子張(しちょう)曰(いわ)く、何(なに)をか五美(ごび)と謂(い)う。子(し)曰(いわ)く、君子(くんし)は恵(めぐ)みて費(つい)やさず。労(ろう)して怨(うら)まれず。欲(ほっ)して貪(むさぼ)らず。泰(たい)にして驕(おご)らず。威(い)にして猛(たけ)からず。子張(しちょう)曰(いわ)く、何(なに)をか恵(めぐ)みて費(つい)やさずと謂(い)う。子(し)曰(いわ)く、民(たみ)の利(り)とする所(ところ)に因(よ)りて之(これ)を利(り)す。斯(これ)れ亦(ま)た恵(めぐ)みて費(つい)やさざるにあらずや。労(ろう)すべきを択(えら)びて之(これ)を労(ろう)す。又(また)誰(たれ)をか怨(うら)まん。仁(じん)を欲(ほっ)して仁(じん)を得(え)。又(また)焉(いずく)んぞ貪(むさぼ)らん。君子(くんし)は衆寡(しゅうか)(※)と無(な)く、小大(しょうだい)と無(な)く、敢(あ)えて慢(あなど)(※)る無(な)し。斯(こ)れ亦(ま)た泰(たい)にして驕(おご)らざるにあらずや。君子(くんし)は其(そ)の衣(い)冠(かん)を正(ただ)しくし、其(そ)の瞻視(せんし)(※)を尊(とうと)くす。儼然(げんぜん)として人(ひと)望(のぞ)みて之(これ)を畏(おそ)る。斯(これ)亦(ま)た威(い)にして猛(たけ)からざるにあらずや。子張(しちょう)曰(いわ)く、何(なに)をか四悪(しあく)と謂(い)う。子(し)曰(いわ)く、教(おし)えずして殺(ころ)す、之(これ)を虐(ぎゃく)と謂(い)う。戒(いまし)めずして成(な)るを視(み)る(※)、之(これ)を暴(ぼう)と謂(い)う。令(れい)を慢(みだ)りにして期(き)を致(いた)す(※)、之(これ)を賊(ぞく)と謂(い)う。之(これ)を猶(ひと)しく人(ひと)に与(あた)うるなり。出納(すいとう)の吝(やぶさ)かなる、之(これ)を有司(ゆうし)と謂(い)う。


(※)屛……除き去る。

(※)衆寡……大勢でも少人数でも。

(※)慢……軽んじ、侮る。

(※)瞻視……物を見る様子。

(※)成るを視る……成績を見る。

(※)期を致す……期限を決めて実行せしめること。


【原文】

子張問於孔子、曰、何如斯可以從政矣、子曰、尊五美屛四惡、斯可以從政矣、子張曰、何謂五美、子曰、君子惠而不費、勞而不怨、欲而不貪、泰而不驕、威而不猛、子張曰、何謂惠而不費、子曰、因民之所利而利之、斯不亦惠而不費乎、擇可勞而勞之、又誰怨、欲仁而得仁、又焉貪、君子無衆寡、無小大、無敢慢、斯不亦泰而不驕乎、君子正其衣冠、尊其瞻視、儼然、人望而畏之、斯不亦威而不猛乎、子張曰、何謂四惡、子曰、不敎而殺、謂之虐、不戒視成、謂之暴、慢令致期、謂之賊、猶之與人也、出納之吝、謂之有司、


(※注)……この論語は文章が長く、わかりにくいところがある。だから孔子の言葉を門人たちが集めたものではないかとの見方もある。一方で、政治にたずさわる者や官僚に対しての心得として、実に立派で行き届いているとする解釈も多い。



*497話が長文のため、今回は1話のみの掲載となります。



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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。著書に『超訳孫子の兵法』、『吉田松陰の名言100』、『武士道の名言100』、『真田幸村の凛とした生き方』(以上、アイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術』(誠文堂新光社)などがある。

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