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第20回

骨盤後傾の矯正 骨盤後傾の人の正しい立ち方と歩き方

2018.10.18更新

読了時間

【 この連載は… 】 テレビ、雑誌などでお馴染みの「姿勢」の第一人者が、疲れない体をつくる知識とメソッドを徹底紹介。医学的理論に基づいた「全身のつながり」を意識した姿勢改善エクササイズで、腰痛や肩こり、慢性疲労などの不調を劇的に改善します。


 壁から5~7cm踵を離して立ったときに、骨盤が後ろに傾く後傾として、後弯平坦型と平背型の2種類があります。「猫背で、頭が体の前に出て、顎が上がっている状態」は共通な悪い姿勢です。
 後弯平坦型では、お尻が壁に付かず、股関節が前方に移動し、膝が後ろに反ってきます(膝の過伸展)。
 平背型でも、骨盤は後傾していますが、骨盤(寬骨)が普通の人より縦に長く、ズボンが意識しないでも腰穿きになってしまいます。仙骨が起き上がることで、寬骨との関節を適合させます。仙骨が起き上がることで、腰が平坦になっていきます。
 骨盤周囲で短縮あるいは優位に働く筋群は、もも裏のハムストリングスで、逆に延長あるいは弱化しうる筋群は、大殿筋、もも前の大腿直筋、お腹の外腹斜筋です。
 この姿勢は筋の保持があまり見られない弛緩姿勢ともいえ、各関節部末端(たとえば、靭帯、関節包、接近した関節)の他動的な構造が中心となって安定性をもたらしています。 
 重力の影響、前かがみ姿勢、職場または家庭環境の人間工学的配置の問題(たとえば、キーボードやモニターが不適切な位置に配置された状態での作業など、誤った座位姿勢)、長時間頭部を前方に傾けたり後方に反らしたりせねばならない職業、さらに弛緩姿勢のために骨盤および腰椎の不良姿勢を生じ、頭部前方位姿勢も生じます。この姿勢でくつろぎを感じる傾向にある人、長時間立位で疲労をしたとき、または前述した筋の筋力低下がこの姿勢の原因となります。
 骨盤後傾を修正するには、とくにもも裏のハムストリングスのストレッチングと、外腹斜筋・大腿直筋・大殿筋の強化が重要となります。

 以下、代表的な方法を紹介しますが、最初から全てを実施しようとするのではなく、自分に出来るものから少しずつ始めて下さい。

  1. 1. 椅子に座って行う、もも裏筋膜リリース

     ハムストリングスをリリースしたい場合は、膝を完全に伸ばさないで、軽く曲げておくのがコツです。完全に伸ばしてしまうと、ハムストリングス以外の筋肉や神経が引っ張られて別の痛みが出ることがありますのでご注意ください。

     椅子に座り、足を低めの台に乗せて膝を軽く曲げた状態にします。

     両手を骨盤の後ろに当てます。そこから、からだと一緒に骨盤を前に倒していき、もも裏をゆっくり伸ばしていき30秒以上リリースします。

     左右をそれぞれ3回繰り返してください。慣れてきたら時間も長くしてください。左右で伸びにくい側をじっくりと時間をかけるようにしてください。

  2. 2. ソファやベッドを使って行う、もも裏筋膜リリース

     伸ばしたい側の足をソファやベッドに乗せ、反対の足を床に着き後ろに引きます。乗せた側の膝の下に丸めたバスタオルを敷きます。

     ここから、からだと一緒に骨盤を前に倒していき、同時に床に付けた足を後ろに引いていきます。からだと、ももが一直線になるのが理想です。からだを前に倒していき、もも裏をゆっくり伸ばして30秒以上リリースします。

     左右をそれぞれ3回繰り返してください。慣れてきたら時間も長くしてください。左右で伸びにくい側をじっくりと時間をかけるようにしてください。

  3. 3. 斜め伸ばし閉じ筋膜リリース

     どちらかの骨盤は、骨盤が前に傾いているけど、反対側の骨盤は後ろに傾いているというような左右非対称な骨盤の形の人も結構多いです。
      この場合、「見返り筋膜リリース」も効果的ですが、ここでは、あお向けで行う骨盤調整筋膜リリースを紹介します。
      まずあお向けになり、両手両足をしっかりと伸ばします。そこから、右膝を曲げ、からだを少し起こしながら、左の手の平で右膝の外側を触って滑らせていきます。このとき、右手は上にしっかり上げて、左足もしっかり伸ばしたままで、20秒以上リリース。

     次に、再度両手両足をしっかりと伸ばして20秒以上リリースしてから、左膝を曲げ、からだを少し起こしながら、右の手の平で左膝の外側を触って滑らせていきます。このとき、左手は上にしっかり上げて、右足もしっかり伸ばしたままで、20秒以上リリースします。

     左右はどちらから行ってもかまいません。左右をそれぞれ3回繰り返してください。慣れてきたら時間も長くしてください。左右で動きが上手く出来ない側は,出来る側よりも15秒以上じっくりと時間をかけるようにしてください。

  4. 4. 後傾の立ち方治しエクササイズ

     壁から踵を7cmほど離して、壁にもたれかかるように立ちます。膝をまっすぐにしたままで、股関節を壁の方に引き込むようにして骨盤を前傾させていき、お尻をしっかりと壁に押しつけます。
      さらに胸を張って両肩を壁に近づけます。胸の真ん中が前に押し出されるように動かすことが大切です。さらに、あごをのど元に近づけるように軽くうなずくようにしながら、後頭骨を壁にくっつけてください。
      疲れたら休むようにしながら、1日の中でも頻回に習慣づけてください。壁を使ってしっかりできるようになったら、次の段階として壁を使わないでも普段の立ち姿勢の中でできるようにしましょう。

  5. 5. 外腹斜筋強化運動

     後傾の立ち方治しエクササイズと同様に立ちます。姿勢が安定したらどちらかの手を真っ直ぐ前に出します。その手に対して、反対側の膝を近づけていき、手に触れたところで5秒間止めます。右膝を左手に触れる場合は、左の外腹斜筋を強化していることになります。正しい立位姿勢で行ってこそ効果が上がります。左右を1セットとして、5~10セットの反復から開始し、徐々にセット数を増やしていってください。

  6. 6. もも上げ歩行

     普段よりもももを持ち上げて歩きます。腸腰筋を使ってももを高く上げるときに(Mobility)、腰が丸まらないように腰部の脊柱起立筋とくに腰腸肋筋にも力を入れておいてください(Stability)。また、支持脚側の大殿筋にもしっかりと力を入れてください。
     振り出した足を床につけるときには、踵からつけるようにしてください。胸の真ん中を前に突き出すようにし、手も前後にしっかりと振れるように歩きましょう。とくに肘は伸ばして後ろにきれいに振りましょう。

 これらの修正エクササイズを根気よく継続することで、骨盤の後傾が正常に近づいていきます。是非チャレンジしてください。
 次回は、骨盤の高さが左右で違う場合の矯正方法を説明しましょう。

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著者

竹井 仁

首都大学東京健康福祉学部理学療法学科教授。医学博士、理学療法士、OMT。教育機関で学生教育を実践するかたわら、病院と整形外科クリニックにおいて臨床も実践。各種講習会も全国で展開。専門は運動学・神経筋骨関節系理学療法・徒手療法。解剖学にて医学博士取得。「世界一受けたい授業」「ためしてガッテン」「林修の今でしょ!講座」など多数のメディアに出演。著書多数。 

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