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子どもの敏感さに困ったら 児童精神科医が教えるHSCとの関わり方 長沼睦雄

第3回

【HSCの本】繊細さが持ち味になるように育てよう

2017.06.02更新

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5人に1人といわれる敏感気質(HSP/HSC)のさまざまな特徴や傾向を解説。「敏感である」を才能として活かす方法を紹介します。
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5人に1人は敏感すぎ気質


 HSPやHSCは、病気でも障がいでもなく、その人が生まれ持った気質のひとつです。人種・民族に関係なく、どの社会にも15~20パーセントぐらいの比率でいるとアーロン博士は言っています。

 仮にひとクラス30人いたら、クラス内に5、6人はHSCがいるということです。意外と多いのです。

 しかし、社会はその他8割の大多数の人たち向きになっていますから、敏感すぎる人にとっては適応するのが難しい、しんどいことがいろいろあります。5人に1人もの比率でいるわりには、社会の敏感さへの理解はあまり進んでいません。

 お母さん自身もHSPであれば、子どもの様子に「あっ、この子も敏感なタイプかも」と気づきやすいのですが、お母さんが非HSPの場合、子どもがなぜそういう反応をするのか理解できません。それで、「ちょっと育てにくいところのある子」「難しい子」「わがままな子」に見えてしまったりするところもあります。

 ところが、HSCの多くは周囲の人のそういう感情までも敏感に汲み取ってしまうので、「自分はママの期待に沿えていない」と感じることが子どもをますますつらくさせてしまったりします。

 たとえば、誰からも「とてもいい子ですね」と言われるような子が、自分の感情を押し込めているうちに心と体のバランスを崩してしまい、体調不良を起こし、不登校になり、さらには自分が自分でなくなってしまう意識の解離症状を起こすようになってしまったケースを、私はたくさん見てきました。

 敏感すぎ気質を負の要素として抱え込まないようにするには、生育環境への配慮がとても大切です。

 子どものときから、敏感さに対して望ましい対応ができていたら、それほどマイナス感情にはなっていきません。人一倍敏感な気質は生まれつきのものですが、それが長所として育(はぐく)まれていくか短所になってしまうかは、生育過程によって左右されるのです。

 アーロン博士も言っています。「大人になってから過去の傷を癒やそうとするよりも、子ども時代に問題を防ぐほうがはるかに簡単です」と。

 周囲の大人が早く気づいてやり、その気質を「その子らしさ」として受けとめてあげることが必要なのです。


繊細さが持ち味になるように育てよう


 私は、HSCやHSPという気質を、ネガティブに捉えるのではなく「敏感力」「繊細力」というポジティブな力にしていってほしいと考えています。

 HSCには、些細なことが気になってすぐに神経が高ぶってストレスになりやすく、それが引き金になって心身のバランスを崩しやすいという一面がたしかにあります。

 しかし、繊細で気遣いができ、他者への共感力が高いというのがHSCやHSPの長所です。その豊かな感受性や鋭敏さという持ち味を活かして、社会で活躍している人たちもたくさんいます。この気質は、うまく伸ばしてあげればとても役立つ特質になります。

 HSCについての理解をもっと深めてもらい、非常にセンシティブな感受性を持った子どもたちは「敏感すぎて困る」存在ではなく、「繊細だからこそ頼れる」存在であることを知ってほしいと思います。

 HSCへの理解が進み、HSCがほっと安心することのできる居場所、環境づくりがわかれば、どんな風に愛情を注いだらいいのかがわかれば、HSCは生きづらいものではなくなり、いい持ち味、魅力として育んでいくことができます。

 人一倍敏感に生まれついた自分の特質をポジティブに捉えて楽しめるようになるか、それとも生きづらさを抱えて苦悩することが多くなるかは、生育環境がもたらすものが非常に大きいのです。それはアーロン博士も言っていることですし、私自身も臨床経験から実感していることです。

 この本が、感受性の強い敏感すぎる子どもを育てているお母さんや先生方にとって、数々の悩みを吹き飛ばすヒントとなり、敏感すぎる子どもたちの生きづらさを和らげる一助となれば、このうえなくうれしく思います。

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著者

長沼 睦雄

十勝むつみのクリニック院長。1956年山梨県甲府市生まれ。北海道大学医学部卒業後、脳外科研修を経て神経内科を専攻し、日本神経学会認定医の資格を取得。北海道大学大学院にて神経生化学の基礎研究を修了後、障害児医療分野に転向。北海道立札幌療育センターにて14年間児童精神科医として勤務。平成20年より北海道立緑ヶ丘病院精神科に転勤し児童と大人の診療を行ったのち、平成28年に十勝むつみのクリニックを帯広にて開院。HSC/HSP、神経発達症、発達性トラウマ、アダルトチルドレン、慢性疲労症候群などの診断治療に専念し「脳と心と体と食と魂」「見えるものと見えないもの」のつながりを考慮した総合医療を目指している。

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