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子どもの敏感さに困ったら 児童精神科医が教えるHSCとの関わり方 長沼睦雄

第6回

【HSCの本】不安の回路が強いと、マイナス思考が強くなりやすい

2017.06.23更新

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5人に1人といわれる敏感気質(HSP/HSC)のさまざまな特徴や傾向を解説。「敏感である」を才能として活かす方法を紹介します。
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みんながみんな内向的ではない


 敏感で感受性の強い人というと、「内気で引っ込み思案」「神経質」「小さなことを気にしすぎ」といったイメージでくくられやすいのですが、必ずしもそうとは限りません。

 HSS(High Sensation Seeking ハイ・センセーション・シーキング)といって、刺激を追い求めるのが好きなタイプの人もいます。

 その特徴はというと、

・好奇心旺盛で新しもの好き

・冒険好き、刺激を求める

・退屈さを嫌う

 HSP全体の中では、いわゆる内向的なHSPタイプが7割、外交的なHSSタイプが3割くらいだといわれています。

 一見、HSPとHSSは対照的なように見えますが、その両面を併せ持つ人もいます。大人では対外的にはHSSの面を出すけれども、ひとりになると本来のHSPに戻ります。子どもでは逆に、外ではHSPの面が出て、家では安心してHSSになったりします。


 私は、「子どもがHSCかどうか」を気にしすぎるよりも、刺激に対する反応の仕方で、HSP的な要素、HSS的要素がどのくらい強いかという視点で見てみるといいのではないかと思っています。

 気質のあらわれ方の違いで、こんな分類ができます。

タイプA【HSP(+)/HSS(+)】

・神経が高ぶりやすい

・刺激に圧倒されやすい

・移り気で飽きっぽい

・新しい経験は求めるが、動揺することや危険は冒したくない

タイプB【HSP(-)/HSS(+)】

・好奇心に満ち、やる気がある

・衝動的で、すぐに危険を冒す

・退屈しやすい

・状況の微細なことにはあまり気がつかないし、興味がない

タイプC【HSP(+)/HSS(-)】

・内省的で静かな生活を好む

・衝動的なことはしない

・危険を冒さない

タイプD【HSP(-)/HSS(-)】

・好奇心があまり強くない

・内省的でもない

・ものごとを深く考えず、淡々と生活している


 こうして見てみると、HSP度も低く、HSS度も低いと、好奇心もあまりなく、ものごとを深く考えることもしない、ちょっとつまらないタイプの人間になってしまうことがわかります。敏感な資質があるということは、とても魅力的なことではないでしょうか。


 

不安の回路が強いと、マイナス思考が強くなりやすい


 このHSP度とHSS度というのは、脳の神経回路で考えると「不安の回路」と「やる気の回路」のことだと言えます。

 人間の脳には、好奇心を呼び起こし、活発に活動するように指令を出す「行動活性システム(冒険システム)」と、次にどんな行動をとるべきか、さまざまなサインに注意して危険を回避しようとする「行動抑制システム(用心システム)」とがあります。

 行動活性システムは、いわばアクセルの働きをし、行動抑制システムはブレーキの働きをします。つまり、行動活性のほうはやる気の回路、行動抑制のほうは不安の回路です。

 行動を活性化するシグナルは、A10神経から発されます。

 一方、行動を抑制しようとするシグナルは、扁桃体が発します。扁桃体は警戒装置なので、情報に対して「これは危ないぞ」とか「怪しいぞ、気をつけろ」といったシグナルを出します。その警戒シグナルが過剰に発されると、不安や恐怖を強く感じ、行動を抑制するだけでなく、思考もネガティブにしてしまいます。

『脳科学は人格を変えられるか?』(エレーヌ・フォックス著 森内薫訳 文藝春秋)という本では、これを「サニーブレイン」「レイニーブレイン」、ものごとを明るく解釈しようとする楽観脳と、暗く受けとめてしまう悲観脳というように名づけていました。

 HSCというのは、この不安の回路がとても強い子たちだと私は考えています。不安の回路がつねに強く働いているため、マイナス思考が強くなりやすいということが言えると思います。

 それが進んでしまうと、激しく自分を責めるようになります。自分がうまくできなかったこと、期待に沿えなかったことを、実際以上に深刻に受け止めて自分を責めたり、激しく落ち込んでしまったりするのです。

 たとえば、𠮟られると、「こんなことをした私を、ママはきっと嫌いになるに違いない。だからこんなに怒るんだ。私はダメな子だ」という思考回路に入ってしまいます。

 あるいは、学校でいじめに遭っても、「自分はこんな人間で、いじめられるような子だから仕方ない」と思ってしまうのです。

 しかし、この抑制システムも働いていないと困ります。不安の回路が弱すぎるというのも、それはそれで問題なのです。

 この不安の回路の発信元である扁桃体部分を破壊してしまうとどうなるか、サルを使って実験を行ったところ、ふだんは怖がって大嫌いだった蛇を、そのサルは平気で食べてしまったといいます。恐怖心や不安感がなくなってしまったのです。

 怖さを感じなさすぎるのもまずい。

 大事なのはバランスです。不安の回路が回りっぱなしになっている子には、やる気の回路が必要です。

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著者

長沼 睦雄

十勝むつみのクリニック院長。1956年山梨県甲府市生まれ。北海道大学医学部卒業後、脳外科研修を経て神経内科を専攻し、日本神経学会認定医の資格を取得。北海道大学大学院にて神経生化学の基礎研究を修了後、障害児医療分野に転向。北海道立札幌療育センターにて14年間児童精神科医として勤務。平成20年より北海道立緑ヶ丘病院精神科に転勤し児童と大人の診療を行ったのち、平成28年に十勝むつみのクリニックを帯広にて開院。HSC/HSP、神経発達症、発達性トラウマ、アダルトチルドレン、慢性疲労症候群などの診断治療に専念し「脳と心と体と食と魂」「見えるものと見えないもの」のつながりを考慮した総合医療を目指している。

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