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よみものどっとこむ

第5回

HSCの4大特性

2017.06.16更新

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【 この連載は… 】すぐにびっくりする。興奮したあとはなかなか寝つけない。服がぬれたり、砂がついたりすると、着替えたがる……5人に1人といわれる敏感気質(HSP/HSC)のさまざまな特徴や傾向を解説。「敏感である」を才能として活かす方法を紹介します。

HSCの4大特性


『ひといちばい敏感な子』の巻末に、「日本語版の発刊に際して」として、アーロン博士が最近の知見を付記されています。敏感さに関する研究が、ここ十年来でいかに進んできているかを教えてくれるものでたいへん興味深く、なかでも、近年、アーロン博士が説明しているというHSPやHSCについての4つの特徴が非常に参考になりました。その部分を紹介します。


(以下引用)


 最近、私はこの根底にある性質には「4つの面がある」と説明しています。つまり、人一倍敏感な人にはこの4つの面が全て存在するということです。4つのうち1つでも当てはまらないなら、おそらくここで取り上げる「人一倍敏感」な性質ではないと思います。この4つを、

 D(深く処理する:Depth of processing)、

 O(過剰に刺激を受けやすい:being easily Overstimulated)、

 E(全体的に感情の反応が強く、特に共感力が高い:being both Emotionally reactive generally and having high Empathy in particular)、

 S(ささいな刺激を察知する:being aware of Subtle Stimuli)で、

 DOESと覚えてください。


(『ひといちばい敏感な子』より。引用ここまで)


 4つすべてが当てはまるのがHSPやHSCだと言いきっておられますから、20年以上にわたる研究の末、現時点でアーロン博士の考えるHSPやHSCの定義は、まさにここにあると言ってもいいのではないでしょうか。

この4つの要素について、私の理解も交えながら簡単に説明しておきます。


①深く処理する(D)

過剰に刺激を受けやすいところがあるとか、些細な刺激を察知しやすいというのは、わりとわかりやすい部分ですが、じつはHSCは情報を「深く」処理しているのだといえます。

その特徴として見られるのが、

 •ものごとの本質を衝くような鋭い質問をする

 •大人の会話を聞いていて、聞きかじりの言葉を使って年齢のわりに大人びたことを言う

 •ユーモアのセンスがある

 •いろいろな可能性を考えて慎重になるので、なかなか決断ができない

 •じっくり観察してから考えるので、行動を起こすのに時間がかかるといった傾向です。

 判断に迷い、戸惑うところは、しばしば「臆病」「引っ込み思案」「優柔不断」のように言われがちですが、それは自分の中で深く処理をしているために起きているわけです。

 最近の研究により、こういうこともわかってきました。


(以下引用)


 HSPの深く処理する性質については、かなりの新しいデータがあります。ヤージヤ・ヤゲロヴィッチらによる研究では、fMRI(磁気共鳴機能画像法)を用いて成人の脳の活動を調べる実験を行いました。わずかに違う2枚の写真を見せて違いを見つけさせた時、HSPはそうでない人に比べて、物事の表面でなく複雑なことや細かいことを認識する時に使う脳が活発に働いていることが分かりました。つまり、「深い」精密な処理をつかさどる脳の部分をそうでない人よりも使っていたのです。


(『ひといちばい敏感な子』より。引用ここまで)


 表情などを読みとる脳内の情報処理能力が高いというのは、私がHSPやHSCを診みて感じているところでもあります。


②過剰に刺激を受けやすい(O)

 私は、敏感な人がたくさん刺激を受けてしまうさまを、魚を獲る地引網になぞらえて説明しています。網の目が大きければ、小さな魚はすり抜けてしまいます。しかし、敏感な人というのは、網目が非常に細かいのです。小さな魚ばかりか、必要のないものまでいろいろ拾ってしまうため、網がとても重たくなってしまう。引き揚げるのにも疲れます。

 それが過剰に刺激を受けやすいという状態なのです。肉体的にも精神的にも負荷がかかり、人より早く疲労を感じてしまいます。


(以下引用)


 HSPが刺激を過剰に受けやすいというデータとして、ドイツの学者フリードリヒ・ゲルステンベルクによる研究があります。この研究では、コンピューター画面にさまざまな向きのLの文字が並ぶ中に、Tの文字が紛れているかどうかを判断するという、いささか厄介な認知作業をさせて比較を行う実験がなされました。HSPは、そうでない人に比べて短時間で正確にできましたが、作業後の疲労も強く感じていました。


(『ひといちばい敏感な子』より。引用ここまで)


 たとえば、楽しませてあげたいと思ってイベントをやったり、どこかに出かけたりしても、ぐったりして元気がなくなってしまったり、「もう帰りたい」と言い出すのは、HSCのひとつの特徴です。楽しくないのではなく、刺激を受けすぎてそれに圧倒され、疲れてしまうのです。

 その他、

 •興奮することがあった日の夜には、いつまでも寝られない

 •痛みに弱い

 •暑さや寒さ、手足についた汚れ、濡れた衣服、足に合っていないくつなどが気になってしようがない

 •サプライズが苦手

 •人に見られたり、実力を試されたりする場面で、ふだんの力を発揮することができない

 といった特徴も見られます。


③全体的に感情の反応が強く、特に共感力が高い(E)

 HSCは、ものごとに対してだけでなく、感情にも敏感です。よく泣くのも、びっくりしやすいのも、怖がりなのも、癇癪を起こしたりするのも、感情的な振幅が人一倍大きいからです。その敏感さは、自分のことだけでなく、他者に対しても発揮されます。

 あるお母さんから聞いた話ですが、「ママ、これでしょ?」と、3歳の息子さんがメガネを手渡してくれた。「えっ? どこにあったの? どうしてママがメガネを探しているってわかったの?」と聞くと、「掃除機かけながらキョロキョロしているから、メガネが欲しいのかなと思った」と答えたそうです。人の様子を観察して、何を求めているのかを察することができるのです。

 こういうことによく気づくのはとてもいい点ですが、一方で、悲しみや不安などの感情も強く受け取ってしまいます。

「他のきょうだい(お兄ちゃん)を𠮟っていると、そばで聞いているだけで泣き出してしまいます。𠮟られた当人は平然としているのに、どうして? という感じです」

「おじいちゃんの容体が悪くなり、会うのが最後になってしまうかなあと思いながら病院に連れて行きました。前にお見舞いに行ったときは平気だったのに、何か緊迫した空気を感じたのか、病室に近づくと固まってしまって、結局、中に入ることができませんでした」

「ペットの死に落ち込んで、数か月たってもいまだにメソメソ状態が続いています」

 といった類の繊細さを見せることもあります。

 心療内科医の森津純子先生は、敏感な人のこうした共感性の高さを「音叉」にたとえています。


(以下引用)


 人は誰しも、心の中に「感情に共鳴する音叉」を持っています。ただ、その数と大きさと性能には個人差があります。例えば、普通の人が「嬉しい。悲しい。楽しい。怖い……」といった感情に反応する小さな音叉を十本くらい持っているとしたら、感受性の豊かな人は千~一万本の大きな音叉を持っています。


(『子供の心の悩みと向き合う本』KKベストセラーズより。引用ここまで)


5_1

 カラダの中で共鳴している音叉の数が圧倒的に違うのだというこの考え方は、HSPやHSCを理解してもらうのに非常にわかりやすいと思います。


④些細な刺激を察知する(S)

 4つ目は、些細な刺激に気づきやすいということ。小さな物音、かすかなにおい、ほんのわずかな味の違い、人やものの些細な変化……普通の人なら気づかないようなちょっとしたこと、「たいしたことではない」と見過ごしてしまうようなことが、HSCはとても気になってしまうのです。

 アーロン博士は、これについて「中には感覚器が特に発達している人もいますが、大半は、感覚器の反応が大きいのではなく、思考や感情のレベルが高いために些細なことに気づくのです。これは処理の深さと区別するのが難しい点です」と言っています。

 些細なことにも敏感に反応する子どもの様子を、お母さん方は日常のさまざまなところで感じているようです。

「うちの子は、いつも食べ慣れているものの味がほんのちょっと変わるだけでもすぐ気づきます。この間は、卵焼きを一口食べて『これ、まずい』と言って食べませんでした。子どもに料理のダメ出しされるって、かなりへこみます」

「お風呂上がりのバスタオル、自分のお気に入りのものでないと使おうとしません。肌触りだと思うのですが、他のタオルだと、全身びしょ濡れのまま、『あのタオル~!』と騒ぎまくります」

「お風呂のボディスポンジを新しいのに変えてから、『痛い』と言って洗わせてくれません。古いのもう捨てちゃったから、いいかげん慣れてよ~という感じです」

「うちは、洋服のタグが全部ダメです。チクチクして痛いと。ヘタに切り取ると、少しだけ残った部分がよけいに肌にあたってイヤがるので、タグを縫いつけてある糸を全部ほどいて取ります。けっこう手間です。ブランドものも、わが家ではたちまちノーブランドになってしまいます」

「においにものすごく敏感で、お店や公共の乗り物の中でも『クサい、クサい』と大声で言い、実際に吐きそうになったりするので、とても困ります」

 その他にも、食べ物の中に入っている化学物質に反応してしまったり、薬にも敏感で、処方箋に書かれているとおり服用すると効きすぎてしまったりするのも、HSCならではの特徴です。

 HSCの子育てはなかなか大変ですが、こんな声もあります。

「私が美容室に行ってくると、一緒にお留守番をしていた主人よりも先に息子が私のヘアスタイルの変化に気がついて、『ママ、かわいくなったね』と言ってくれます」

「夫婦で何か口論になりかけると、子どもがじっとそれを聞いていて、泣きべそをかきながら、『パパ、ママをいじめちゃダメ、ぼく悲しくなる……』と言います。おかげで夫婦げんかができません。『子はかすがい』ってこういうことを言うのかなと思っています」

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著者

長沼 睦雄

十勝むつみのクリニック院長。日本では数少ないHSPの臨床医。昭和31年山梨県生まれ。北海道大学医学部卒業。脳外科研修を経て神経内科を専攻し、日本神経学会認定医の資格を取得。北海道大学大学院にて神経生化学の基礎研究を修了後、障害児医療分野に転向。道立札幌療育センターにて小児精神科医として14年間勤務。平成12年よりHSPに注目し研究。平成20年より道立緑ヶ丘病院精神科に勤務し、小児と成人の診療を行う。平成28年十勝むつみのクリニック開業。発達障害、発達性トラウマ、解離性障害などの診断治療に専念し、脳と心と体の統合的医療を行っている。著書に『活かそう!発達障害脳 「いいところを伸ばす」は治療です。』(花風社)、『敏感すぎる自分を好きになれる本』『気にしすぎ人間へ クヨクヨすることが成長のもとになる』(ともに青春出版社)、『コミックエッセイ 敏感過ぎる自分に困っています』(宝島社)などがある。

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