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子どもの敏感さに困ったら 児童精神科医が教えるHSCとの関わり方 長沼睦雄

第13回

【HSCの本】<子育てアドバイス>皮膚感覚にはストレス反応がよくあらわれる

2017.09.29更新

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5人に1人といわれる敏感気質(HSP/HSC)のさまざまな特徴や傾向を解説。「敏感である」を才能として活かす方法を紹介します。
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■肌の過敏さには、メンタルなものが影響しています。不安の根っこに気づいてあげよう

「HSCの小学生を持つ母です。小さいころから、肌に接触するものが気に入らないと着替えのたびに癇癪を起こして、本当にたいへんでした。でも、小3くらいからあまり文句を言わなくなりました」

「私自身の子ども時代のことですが、お風呂が嫌いでした。お湯が熱くて、体を洗うタオルがヒリヒリと痛くて、洗いざらしたバスタオルのゴワゴワも痛くて、お風呂って修行だなと思っていました」

 これはいずれも「皮膚感覚」の敏感さです。皮膚感覚というのはけっこう大切です。

 肌が過敏な人は、アトピーを起こしやすいという傾向もあります。アトピーがあると、かゆいとか、何かが当たると痛いとか、いっそう過敏さがあらわれます。人から触れられたくない、見られたくないという気持ちも、敏感さを加速させます。

 自閉スペクトラム症でも触覚過敏の人がいますが、よく「シャワーが痛い」とか「扇風機の風が痛い」などと言ったりします。

 皮膚は自分と人とを隔てる境界となる部分、いわばバリアの部分ですから、人に対して不安や恐怖が強い子、対人関係が苦手な子には触覚過敏が多いのです。皮膚と神経というのは同じ外胚葉系なので、反応が似ているのです。

 『子供の「脳」は肌にある』(光文社新書)という本で、桜美林大学教授の山口創はじめさんはこう書いています。

 肌の境界感覚があまりに弱いと、人から影響を受けすぎて自分というものがなくなってしまう。たとえば、自分を主張したり表現することができず、常に他人に合わせることでよい子を演じ続ける「過剰適応」の行動になる。

 逆に肌の境界感覚があまりに強すぎると、自他を隔てすぎてしまって自閉的、あるいは傍若無人な行動傾向が強まる。

 恐怖麻痺反射という原始反射があります。胎児の生き残りのための大事な機能ですが、それが、出生後になっても残存している人がいて、感覚や対人過敏性、姿勢保持の弱さなど発達障がいの状態像に重なるところがあります。

 身体的には背面が固まっていて呼吸や見え方に影響が出てきて、それが発達の土台を揺るがしてしまうのです。

 人間は胎生5週目の早い時期から、母体のストレスを感じて身体を固めて身を守る恐怖麻痺反射が起こります。この反射では、痛みなどの物理的な刺激だけではなく、「雰囲気」なども刺激になって身体が固まる反応を起こします。この反射が出生時までに統合されず、出生後も残存すると、触覚の原始系(防衛)から識別系(積極的なかかわり)への発達が遅れ、危険を回避し防衛する肌の機能を最大化して対処します。

 そのような状況から、外側の肌にエネルギーを集中させるために、前庭・固有感覚などの内部感覚を使うことが難しくなり、深層筋(インナーマッスル)が弱くなり、低筋緊張になるのです。

 前庭感覚、固有受容感覚、触覚(防衛的)、内臓感覚などの無意識的感覚が統合されていない(過敏ないし鈍麻)と、身体のコントロール(姿勢の維持)や動かし方がつかめず、「私は誰か、どこにいるのか」という感覚(自分は自分だという感覚)が弱くなり、私と他との境界(区別)がはっきりと認識できなくなります。

 私の経験的には、固有受容感覚(筋運動感覚)が育ってくると、触覚過敏が薄くなります。

 発達支援コーチの灰谷孝さんの著書『人間脳を育てる 動きの発達&原始反射の成長』(花風社)によると、恐怖麻痺反射から始まる一連の原始反射は、それをしっかり経験して「含んだ上で越えて統合する」ので、消滅するわけではなく、ストレスが再び生じたときには、また反射を使って乗り切ることができるわけです。原始反射はそれをやりきらせて卒業させてあげることで、過敏や鈍麻の状態でなくなり、非常時に必要なものとして残って統合されていくのです。免疫系と似ています。

 恐怖麻痺反射が残っている人は、恐怖感を感じる「雰囲気」で身体の後方(背面)部分の筋肉を固める反応を起こします。母親の胎内で起こした反応なので、出生後も親のもつ「雰囲気」が変わると、敏感に反応します。

 筋肉の緩め方としては、背面の肌への心地よいタッチやタッピングや腹ばい呼吸などが有効で、スキンシップや遊びが発達を促し、過敏性をやわらげてくれるのです。

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著者

長沼 睦雄

十勝むつみのクリニック院長。1956年山梨県甲府市生まれ。北海道大学医学部卒業後、脳外科研修を経て神経内科を専攻し、日本神経学会認定医の資格を取得。北海道大学大学院にて神経生化学の基礎研究を修了後、障害児医療分野に転向。北海道立札幌療育センターにて14年間児童精神科医として勤務。平成20年より北海道立緑ヶ丘病院精神科に転勤し児童と大人の診療を行ったのち、平成28年に十勝むつみのクリニックを帯広にて開院。HSC/HSP、神経発達症、発達性トラウマ、アダルトチルドレン、慢性疲労症候群などの診断治療に専念し「脳と心と体と食と魂」「見えるものと見えないもの」のつながりを考慮した総合医療を目指している。

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