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子どもの敏感さに困ったら 児童精神科医が教えるHSCとの関わり方 長沼睦雄

第25回

【HSCの本】いい子、共感性の高すぎる子が危ない!

2017.12.29更新

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5人に1人といわれる敏感気質(HSP/HSC)のさまざまな特徴や傾向を解説。「敏感である」を才能として活かす方法を紹介します。
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第3章 敏感すぎて生きづらさを抱えてしまう子どもたち

いい子、共感性の高すぎる子が危ない!

 敏感すぎる人は、些細なことも気になってストレスになりやすく、それが引き金になって心身のバランスを崩しやすいという面があります。

 この章では、敏感さが原因で深刻な症状に陥ってしまった子どもたちの例を紹介しましょう。

 こんな症例がありました。

 小学校のときから、学級委員長やクラブ活動のキャプテンを任され、6年生のときには生徒会副会長を務めた子です。成績もいつも上位で、本当に優秀です。

 小学校5年生ぐらいから過呼吸があったらしいのですが、そのころはそれほど苦しくはなかったようです。それが中学生になって過呼吸に加えて頭痛、抑鬱の症状が出て、最初にかかった医師から、広汎性発達障害と診断されます。

 私が診ることになったのは中学2年のときでした。たしかに知能に言語性優位の偏りはありましたが、発達障がいとは思えないなあ、というのが私の見解でした。

 優等生でみんなから頼りにされます。それに対して、イヤが言えない。何でもすべて受け入れてしまう。何かあると放っておけなくて、グループ内の対立などの調整役を担ってしまうのですが、じつはそういうことが心の負担になっているのではないか、私はそう思いました。

 穏やかないい家庭に育っていました。ただ、ご両親ともにHSPです。私は、この子もHSCであるがために、断れずにいろいろ引き受けてしまうことで、過剰なストレスがかかっていると診ていたのです。

 いろいろ話を聞くと、学校で先生が前にした話をまったく思い出せなかったり、以前に書いたノートを見ても自分が書いた記憶がなかったりする解離症状が起きているとわかりました。かなり深刻な心の状況です。

 高校1年のときは、テストで学年一番をとりました。ところが2年になったころから、怒りっぽい、疲れやすい、神経過敏、注意散漫、人の声が悪口に聞こえる、体が動かないなどの症状が次々と出るようになります。それでも、クラブ活動や生徒会などいろいろがんばっていたのですが、がんばればがんばるほど体に変調が出てしまいました。

 本当につらい思春期だったと思います。

 高校卒業後、実家から遠く離れた土地の学校に進学しました。すると、体に出ていたさまざまな症状が消え失せ、ウソのように元気になりました。勉強にサークル活動に精を出しているそうです。「思春期のあれはなんだったの?」という感じです。

 ずっと「いい子」を演じていたけれど、知らない土地に行き、知らない人ばかりの中に入ったことで、もういい子をやる必要がなくなった。しがらみをすべて捨てて自由になれたことで、心が解放されたのではないかと私は思っています。

 解離症状を起こす子どもの対人関係には、幼少期から一定の傾向があるようです。子どもは、相手の思い描くイメージや欲望に同一化しようとし、ひたすら相手の表情と状況を読んで機嫌を損ねないようにします。なので、親からみて「いい子」だと言われます。相手の責任を追及したり、攻撃したり、自己主張したりすることは少なく、相手がどのような欲望や感情を自分に向けているかに関心があります。このような傾向は、相手にだけではなく、その場に対してもみられ、場の緊張や雰囲気や空気を読んで、自己犠牲的に周囲にあわせようとします。

 HSPやHSCは敏感なうえに、他者と自分との境界線が弱いため、マイナス感情を溜込みやすい。基本的な性質として、自分のことを後回しにして、相手の身になって人を癒やし、代わりに自分が傷ついてしまいやすいのです。

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著者

長沼 睦雄

十勝むつみのクリニック院長。1956年山梨県甲府市生まれ。北海道大学医学部卒業後、脳外科研修を経て神経内科を専攻し、日本神経学会認定医の資格を取得。北海道大学大学院にて神経生化学の基礎研究を修了後、障害児医療分野に転向。北海道立札幌療育センターにて14年間児童精神科医として勤務。平成20年より北海道立緑ヶ丘病院精神科に転勤し児童と大人の診療を行ったのち、平成28年に十勝むつみのクリニックを帯広にて開院。HSC/HSP、神経発達症、発達性トラウマ、アダルトチルドレン、慢性疲労症候群などの診断治療に専念し「脳と心と体と食と魂」「見えるものと見えないもの」のつながりを考慮した総合医療を目指している。

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