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子どもの敏感さに困ったら 児童精神科医が教えるHSCとの関わり方 長沼睦雄

第30回

【HSCの本】育つ環境が何よりも大事

2018.02.02更新

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5人に1人といわれる敏感気質(HSP/HSC)のさまざまな特徴や傾向を解説。「敏感である」を才能として活かす方法を紹介します。
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育つ環境が何よりも大事

 敏感さが、生きづらいほどひどくなってしまうのは、いろいろな原因が考えられます。

 私は『敏感すぎる自分を好きになれる本』の中で、HSPは、自律神経失調症、パニック発作、うつ病、慢性疲労性症候群など、さまざまなストレス由来の病気にかかりやすいということを書きました。長期間におよぶ慢性に繰り返されるストレスで、交感神経と副交感神経の調整が崩れ、ストレスホルモンが過多の状態になり免疫反応にも異常をきたしやすいからです。

 敏感すぎ気質の人は、大人になっていきなりHSPになるわけではありません。子どものときからずっと敏感だったのです。感じやすく、周囲の影響を受けやすく、傷つきやすい。それだけに、普通の人よりストレスを溜め込みやすい気質です。

 神経発達症は、簡単に言えば、発達の過程で神経の連絡網の形成に不具合が起きてしまう症状です。

 しかし、生まれたときには連絡に問題なかったはずの人が、育つ過程で強いストレスを浴び続けると、連絡網の一部に不具合が生じ、神経発達症と同じような症状が出てくる場合があります。これを「発達性トラウマ」といいます。ストレスホルモンの影響で阻害されるのではないかと考えられています。

 敏感すぎる人は、ストレスを過剰に感じやすいため、そういうことが起こりやすいのです。その過剰なストレスとは何か。

 虐待されて育った、学校時代にいじめがあり不登校や引きこもりになったというようなトラウマを抱えてしまうような出来事です。

 敏感体質であっても、理解され、愛され、肯定されて、穏やかな環境で育っていくと、ストレスは抑えられ、自律神経のバランスも保たれ、病的な症状が引き起こされにくくなる。ところが、育つ環境がストレスフルなものであると、心にかかる負担がキャパシティを超え、ストレス性の病気や症状が出てしまうのです。

 HSCには、敏感さを生かして活き活きと生きている人も多くいます。

 一方で、些細なことが気になってすぐに神経が高ぶり、ストレスが多く、それが引き金になって心身のバランスを崩しやすいという面があります。精神的な危うさもある。

 どちらに傾くかは、周囲がどう受けとめてやるか、環境次第で変わります。

 生育環境がとても大事だと私が何度も言うのは、そういうことなのです。

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著者

長沼 睦雄

十勝むつみのクリニック院長。1956年山梨県甲府市生まれ。北海道大学医学部卒業後、脳外科研修を経て神経内科を専攻し、日本神経学会認定医の資格を取得。北海道大学大学院にて神経生化学の基礎研究を修了後、障害児医療分野に転向。北海道立札幌療育センターにて14年間児童精神科医として勤務。平成20年より北海道立緑ヶ丘病院精神科に転勤し児童と大人の診療を行ったのち、平成28年に十勝むつみのクリニックを帯広にて開院。HSC/HSP、神経発達症、発達性トラウマ、アダルトチルドレン、慢性疲労症候群などの診断治療に専念し「脳と心と体と食と魂」「見えるものと見えないもの」のつながりを考慮した総合医療を目指している。

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