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子どもの敏感さに困ったら 児童精神科医が教えるHSCとの関わり方 長沼睦雄

第15回

【HSCの本】<子育てアドバイス>悲しみやショックを引きずりやすい

2017.10.13更新

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5人に1人といわれる敏感気質(HSP/HSC)のさまざまな特徴や傾向を解説。「敏感である」を才能として活かす方法を紹介します。
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■負の感情を、思いっきり吐き出させてあげてください

 敏感な子たちの場合、突然の喪失など深い悲しみを味わうと、自分のせいだと思い込んだり、こうしておけばよかったと悔やんだりして、長く後を引いてしまうことがあります。

 たとえば、身近な人の死に遭遇した、飼っていたペットが死んでしまった、あるいは幼稚園や学校でいじめに遭ったというケースでもあります。

 普通の子はそのときに感情を出すので、何日かでケロッとしますが、敏感な子はそのときに固まってしまい感情を出さないので、神経が一回ショック反応(固まる)を示し、それが解けないまま激しく落ち込んで、引きずってしまうのです。

 こういうときは、落ち込んで自分を責めている子どもに、指示や命令や禁止(ダメ出し)や説教をするなど、ナイーブな心を刺すようなことを言うのはやめましょう。大人にははかり知れない子どもの心に同調して、「そうか、そうなんだ」「そう思うんだ」とまずは心を100パーセント受け止めてあげると、固まった心がほどけて中にある怒り、悲しみ、後悔の気持ちが出やすくなります。まずは、安心と安全感の確保が大切です。

 怖いことやショックなことに遭ったときに、人が取る対応はそうたくさんありません。戦うか、逃げるか、すくんで凍りつくか、場合によっては作り笑いもするかもしれません。いじめに遭ったとき、「なんだよ」と抵抗して戦えるようなら大丈夫です。泣いて逃げ出せる子も、トラウマになりません。しかし、何の反応もできずフリーズしてしまう子や笑ってごまかす子は、トラウマになりやすいのです。

 ナイーブで過敏に反応する子でこういう相談を受けた場合、私は「ショックが癒えて、気持ちが落ち着くまで待ちましょう、無理して学校に行かせようとしなくてもいいですよ」と言います。これは「心が弱い」と非難するような問題ではないのです。

 HSCやHSPは、ともすると敏感に反応しすぎる自分を隠そうとして、感情や感覚を途中でブロックしてしまうか、嘘をついてごまかすようになります。これがパターン化して、神経の高ぶりを慢性化させていくのです。どんどん自己抑制し、マイナス感情が自分の内部に澱のように蓄積されてしまうと、それはいずれどこかであふれ、堤防が決壊します。そうならないようにするためには、溜め込ませないことが大切なのです。

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著者

長沼 睦雄

十勝むつみのクリニック院長。北海道大学医学部卒業。脳外科研修を経て神経内科を専攻し、日本神経学会認定医の資格を取得。北海道大学大学院にて神経生化学の基礎研究を修了後、障害児医療分野に転向。北海道立子ども総合医療・療育センターにて14年間小児精神科医として勤務。平成20年より北海道立緑ヶ丘病院精神科に勤務し、小児と成人の診療を行っていた。平成28年9月に開業し、発達性トラウマ障害、HSP、アダルトチルドレン、神経発達症などの診療を専門として取り組む。著書に、『「敏感すぎる自分」を好きになれる本』(青春出版社)、『子どもの敏感さに困ったら読む本 児童精神科医が教えるHSCとの関わり方』(誠文堂新光社)、『大人になっても敏感で傷つきやすいあなたへの19の処方箋』(SBクリエイティブ)などがある。

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