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子どもの敏感さに困ったら 児童精神科医が教えるHSCとの関わり方 長沼睦雄

第24回

【HSCの本】<子育てアドバイス>困ったらどこに相談したらいいか

2017.12.13更新

読了時間

5人に1人といわれる敏感気質(HSP/HSC)のさまざまな特徴や傾向を解説。「敏感である」を才能として活かす方法を紹介します。
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■診断名を求めるのでなく、相談できる相手を見つけましょう

 子どもの敏感さに対応できないと思ったとき、どこに相談するのがいいのでしょうか。

 通常は、性格的に「恥ずかしがり屋」「内向的」「怖がり」「引っ込み思案」「消極的」「臆病」などと考えて、様子を見ていることが多いと思います。発達障がい的な特徴があれば、障がいの特徴なのかと考えると思いますが、敏感さの原因が生まれもった神経の過敏性であり、それを言い表す言葉があるなどとは思いもよらないと思います。

 性格というには、あまりにも程度がはなはだしい場合には、やはり、身近な相談場所を通して子どもの専門機関や病院に紹介されると思います。

 HSPの概念を知るまで、私は2000年に翻訳出版された『精神保健と発達障害の診断基準 0歳から3歳まで』(Zero to Three著 本城秀次、奥野光訳 ミネルヴァ書房)に記載された、アメリカの非営利団体が提案した診断基準の中にある統制障害と理解していました。その中に過敏反応(怖がりで用心深い)というタイプ分類があり、「過度の用心深さ、抑制、恐怖感がある。乳幼児期早期の探索行動や自己主張の制限、日課の変化を嫌う、新奇場面での怖がり、しがみつきの傾向で明らかになる」と説明されています。

 そこには特徴的な感覚運動パターンや養育パターンが記述されており、関わり方の参考にしていました。これは、すでに多く使われている発達障害の診断基準とは異なり、神経発達的な視点を採用しており、関わりとコミュニケーションに問題をかかえた子どもの過敏さの理解にはとても有用です。でも発達障がいが疑われない場合はどう考えればいいのでしょう。

 現在のところ、子どもの敏感さを統制障害やHSPなどの神経発達的な視点でとらえてくれる発達の専門家や医師はほとんどいないため、従来から医学で使われている発達障がいや精神障がいの視点で診断されていると思われます。

 トラウマ反応が人間の神経発達や人間の自然治癒力におよぼす影響が次第に明らかになりつつあり、生まれる前の胎児期からすでに大きな影響を発達にもたらしている(恐怖麻痺反射)ことを考えると、遺伝的な素因と胎児期からの環境要因と認知的な発達過程などを総合的に視野に入れて子どもの敏感さをとらえなおしていく必要があります。

 困って行き詰まっているお母さんの中には、とにかく何か診断名を欲しがる人がいます。何なのかわからないよりも、はっきり診断名がついたほうが気持ちが落ち着くのかもしれません。しかし、発達上のさまざまな問題は、簡単には診断名はつきません。発達検査をしたらすぐに診断名がつくと思っている方もいますが、検査でわかるのはどういう特性があるかということです。たとえ診断名をつけられても、それが正しいとも言いきれません。

 困っているお母さんたちに本当に必要なのは、診断名をつけてもらうことよりも、親身になって話せる相手を見つけることでしょう。同じ悩みを抱えた人と情報交換できるような場があって、困っていることを話し合えて、「なんだ、みんなそうなんだね、うちだけじゃないんだ」「なるほど、そうやって対応すればいいのか」と知ることができることなのではないかと思います。自分の子どものことだからとひとりで抱え込んでしまうのがいちばんよくありません。

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    taeko

    69才女性です。妹二人そして私も躁鬱と診断されています。去年10月に年下男性との恋愛がはじまったことをきつかけに、カウンセリングを受けました。人格障害ではないかと言われました。でも私は占いができるし、社会性はあるのです。感覚過敏ではあるのでどうやらこの枠が当てはまるかもしれません。

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著者

長沼 睦雄

十勝むつみのクリニック院長。1956年山梨県甲府市生まれ。北海道大学医学部卒業後、脳外科研修を経て神経内科を専攻し、日本神経学会認定医の資格を取得。北海道大学大学院にて神経生化学の基礎研究を修了後、障害児医療分野に転向。北海道立札幌療育センターにて14年間児童精神科医として勤務。平成20年より北海道立緑ヶ丘病院精神科に転勤し児童と大人の診療を行ったのち、平成28年に十勝むつみのクリニックを帯広にて開院。HSC/HSP、神経発達症、発達性トラウマ、アダルトチルドレン、慢性疲労症候群などの診断治療に専念し「脳と心と体と食と魂」「見えるものと見えないもの」のつながりを考慮した総合医療を目指している。

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