Facebook
Twitter
RSS
子どもの敏感さに困ったら 児童精神科医が教えるHSCとの関わり方 長沼睦雄

第9回

【HSCの本】HSCには、障がいのない子もいる、障がいを抱えた子もいる

2017.07.14更新

読了時間

5人に1人といわれる敏感気質(HSP/HSC)のさまざまな特徴や傾向を解説。「敏感である」を才能として活かす方法を紹介します。
「目次」はこちら

HSCには、障がいのない子もいる、障がいを抱えた子もいる

 私は、自閉スペクトラム症(ASD)の感覚過敏とHSCの敏感さとはまったく関係ないと言っているわけではありません。そこには、重なる部分もあります。

 たとえば、先日お母さんに連れられて初めて私のところに診療に来た子は、自閉スペクトラム症と診断されていました。

 お母さんはこう言われました。

「先生、この子に障がいがあることはわかっています。それはそれとして、感覚の敏感さに本人がとても苦しんでいるようなので、この敏感さにどう対応したらいいかを教えていただきたいのです」

 その子はたしかに、五感にいろいろ過敏さを持っていました。しかし注意すべきは、五感以外の敏感さも持っているということでした。通常、ASDの場合は人とのコミュニケーションが苦手で、マイペースで人にあまり関心を示さないのですが、その子は周囲にとても気遣いを見せるのです。

 私は言いました。

「ASDであり、HSCですね」

 明らかにASDの感覚過敏とは違う敏感さが見られたのです。

 かつて私は、療育センターを受診した神経発達症をもつ15歳までの子ども500名弱の超感覚の有無と時期について、親への問診チェックリストへの記入方式で調査したことがあります。この結果、幼児期の44パーセントは親が「人の気持ちが読める」と感じる子どもであり、子ども全体の22パーセントは「見えないものが見えている」と親が感じていました。また、全体の20パーセント弱は「出生時や赤ちゃんの時の記憶」「自然への特別な感性」があり、3~5パーセントは、これら複数の超感覚をもっていました。

 HSPとは病気や障がいという概念とは別物だということが、おわかりいただけましたでしょうか?

不思議な感覚や力を持つ子たちもいる

 HSPやHSCの中には、現代の科学では説明しきれないようなちょっと不思議な感覚を持っている人たちがいます。

 たとえば、お母さんのおなかの中にいたときのことを覚えていると言う子どもや大人がいます。いわゆる「胎内記憶」の話をするのです。小学1、2年生くらいの子が多いです。

 お母さんの中には、「先生、この子、こんなことばっかり言っているんですよ」と呆れたように言う人もいますが、でたらめを言っているのではありません。そういう感覚や記憶を持っている子が確かにいるのです。

 お母さんの妊娠がまだ判明していないときに、「いま、ママのおなかの中に妹がいる」と言いあてる子もいます。

 臨床例として私に初めて「HSPってこういうことだな」と実感させてくれたのは、当時、高校生だった子でした。だれもが認める「すごくいい子」「すごく頼れる子」だったのですが、敏感さを人に伝えることができず、そのうちにいろいろ身体症状が出て、学校に行けなくなってしまい、紹介されて私のところに来たのです。

 その子は、五感がただ敏感なだけでなく、六感や直感のようなものも鋭いのです。自分の「過去世」も見えるし、周囲の人の過去世もわかるという超感覚を持っていました。

「なんで、そんなことがわかるの?」と聞くと、「なぜかはわからないけれど、自然にそうなんだってわかっちゃう。たぶんそれが私の生まれもった性質なんだと思う」というようなことをさらりと言うのです。一見、特別変わったところのない普通の高校生なのに、人間の本質について何でも知っているなんて、とても不思議でした。

 神経の過敏さとしてまとめられたHSPという概念が大切だと思われる理由のひとつは、チェックリストの中には入ってきていませんが、そういった超感覚的なものを含めているからです。

 精神医学では、いろいろな診断は症状で定義されます。「こういう症状があれば、○○です」と診断する。

 たとえば、鬱だの統合失調症だのと言いますが、何によってそう診断をしているかというと、表面的に見える症状をキャッチして、定義づけしているのです。しかし、その根っこには、症状にはあらわれない感情や感覚、深層心理に流れているものが作用しています。見えない感覚や感情がその人を動かしているわけです。

 しかし、表にあらわれた精神症状だけを治療していても、なかなか本質的な変化にはなりません。もっと深いところ、見えないところまで見ようとしないと、本当の人間の姿はわからない。その症状や言動の裏側のところを扱っているのが、一般に「スピリチュアル」と呼ばれる領域のものではないかと私は思っています。

 そういう奥深いところにあって見えないもの、表にあらわれてはっきり見えるもの、両方を視野に入れて診たほうがいいのではないか、という立ち位置なのです。

「目次」はこちら


【単行本好評発売中!】

この本を購入する
シェア

Share

感想を書く感想を書く

※コメントは承認制となっておりますので、反映されるまでに時間がかかります。

著者

長沼 睦雄

十勝むつみのクリニック院長。1956年山梨県甲府市生まれ。北海道大学医学部卒業後、脳外科研修を経て神経内科を専攻し、日本神経学会認定医の資格を取得。北海道大学大学院にて神経生化学の基礎研究を修了後、障害児医療分野に転向。北海道立札幌療育センターにて14年間児童精神科医として勤務。平成20年より北海道立緑ヶ丘病院精神科に転勤し児童と大人の診療を行ったのち、平成28年に十勝むつみのクリニックを帯広にて開院。HSC/HSP、神経発達症、発達性トラウマ、アダルトチルドレン、慢性疲労症候群などの診断治療に専念し「脳と心と体と食と魂」「見えるものと見えないもの」のつながりを考慮した総合医療を目指している。

矢印