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論語 全文完全対照版 野中根太郎

第10回

25話~27話

2016.08.01更新

読了時間

25 よく観察しなければ人の才能はわからない


【現代語訳】

孔子先生は言われた。「私は弟子の顔回(※)と一日中、学問の話をしても、わかりましたとうなずくばかりなので、まるで愚か者であるかのように見えた。しかし、その後の様子を見ていると、私の教えたことを理解しているのみならず、さらに進めていて、こちらも啓発されるところがある。顔回が愚か者に見えたのは私の見間違いであった」。


(※)顔回……顔淵ともいう。魯の人。孔子の門人で最も優秀で孔子に可愛がられた。孔子より三十歳年少であるが、四十一歳で孔子より先に死んだ。


【読み下し文】

子(し)曰(いわ)く、吾(われ)、回(かい)と言(い)うこと終日(しゅうじつ)、違(たが)わざること、愚(ぐ)なるが如(ごと)し。退(しりぞ)きて其(そ)の私(わたくし)を省(せい)すれば、亦(ま)た以(もっ)て発(はっ)するに足(た)る。回(かい)や愚(ぐ)ならず。


【原文】

子曰、吾與回言終日、不違如愚、退而省其私、亦足以發、回也不愚、


26 人の能力と性質を見抜く方法


【現代語訳】

孔子先生は言われた。「人のことがわかる方法がある。まず、その人の行いをよく視(み)る。次に、その人の行為の動機、原因はどこにあるのかを観(み)る。そして、行為の後、その結果をどう思っているのかを察するのである。この視(※)、観(※)、察(※)の三つで観察すれば、必ず人のことがわかるようになるものだ」。


(※)視……よくみること。

(※)観……広く観察すること。

(※)察……心の中でよく考えて検討ること。


【読み下し文】

子(し)曰(いわ)く、其(そ)の以(もっ)てする所(ところ)を視(み)、其(そ)の由(よ)る所(ところ)を観(み)、其(そ)の安(やす)んずる所(ところ)を察(さっ)すれば、人(ひと)焉(いずく)んぞ廋(かく)さんや。人(ひと)焉(いずく)んぞ廋(かく)さんや。


【原文】

子曰、視其所以、觀其所由、察其所安、人焉廋哉、人焉廋哉、


27 温故知新(おんこちしん)(※)ができて始めて人の師となれる


【現代語訳】

孔子先生は言われた。「昔のことをよく調べて学ぶことで、現在や未来に役立つことがよくわかるようになる。これができて始めて人の師となれる」。


(※)温故知新……故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る。「温(たず)ねて」は「温(あたた)めて」とも読む。昔からのことや歴史をよく学んでこそ、新しい学問や知恵が出てくるということ。


【読み下し文】

子(し)曰(いわ)く、故(ふる)きを温(たず)ねて新(あたら)しきを知(し)れば、以(もっ)て師(し)となるべし。


【原文】

子曰、温故而知新、可以爲師矣、

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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。海外に進出し、日本および日本人が外国人から尊敬され、その文化が絶賛されているという実感を得たことをきっかけに、日本人に影響を与えつづけてきた古典の研究を更に深掘りし、出版企画を行うようになる。近年では古典を題材にした著作の企画・プロデュースを手がけ、様々な著者とタイアップして数々のベストセラーを世に送り出している。著書に『超訳 孫子の兵法』『吉田松陰の名言100-変わる力 変える力のつくり方』(共にアイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術─相手の心を動かす「義」の思考方法』『全文完全対照版 論語コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 孫子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 老子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 菜根譚コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』(以上、誠文堂新光社)などがある。

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