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よみものどっとこむ

第111回

299話~300話

2017.01.04更新

読了時間

【 この連載は… 】 毎日数分で「東洋最大の教養書」を読破しよう! 『超訳 孫子の兵法』の野中根太郎氏による、新訳論語完全版。読みやすく現代人の実生活に根付いた超訳と、原文・読み下し文を対照させたオールインワン。

299 先にやるべきことをやり、得る利益については後回しにする


【現代語訳】

樊遅(はんち)が孔子先生のお供をして雨乞台(あまごいだい)のある広場のあたりを散歩している時にたずねた。「自分の徳を高め、心の奥にある悪を取り除き、心の迷いを解いて明らかにする方法を教えてください」。

先生は言われた。「いい質問だ。自分のやるべきことをまずやって、その後に生ずる利益などのことは後回しにすれば、徳が高まっていくのではないだろうか。自分の悪い点を責めて反省するが、他人の悪い点は責めないようにすれば、心の奥に隠れている悪が取り除かれていくのではないか。一時の腹立ちから、自分を見失って一生を無にするようなことをしてしまい、その災いを肉親にまで及ぼすようなことは、迷いの最たるものではないか」。


【読み下し文】

樊遅(はんち)、従(したが)いて舞雩(ぶう)の下(もと)に遊(あそ)ぶ。曰(いわ)く、敢(あ)えて徳(とく)を崇(たっと)び、慝(とく)を脩(おさ)め(※)、惑(まど)いを弁(べん)ずるを問(と)う。子(し)曰(いわ)く、善(よ)いかな、問(と)いや。事(こと)を先(さき)にして得(う)るを後(のち)にす。徳(とく)を崇(たっと)ぶに非(あら)ずや。其(そ)の悪(あく)を攻(せ)め、人(ひと)の悪(あ)くを攻(せ)むること無(な)きは、慝(とく)を脩(おさ)むるに非(あら)ずや。一朝(いっちょう)の忿(いか)りに其(そ)の身(み)を忘(わす)れ、以(もっ)て其(そ)の親(しん)に及(およ)ぶ。惑(まど)いに非(あら)ずや。


(※)慝を脩め……心の中に隠れている悪を取り除くこと。


【原文】

樊遲從遊於舞雩之下、曰、敢問崇德脩慝辨惑、子曰、善哉問、先事後得、非崇德與、攻其惡無攻人之惡、非脩慝與、一朝之忿忘其身以及其親、非惑與、


300 正しい人が上に立てば、下にいる悪い人も正しくなる


【現代語訳】

樊遅が仁についてたずねた。孔子先生は言われた。「人を愛することだ」。さらに知についてたずねた。

先生は言われた。「人を知ることだ」。何のことか樊遅にはわからないようだった。

そこで、先生は続けて言われた。「正しい人を引き立てて、曲がった悪い人よりも上の位(くらい)に置けば、曲がった悪い人もよくなっていくものだ」。

樊遅が退室してから兄弟子の子夏に会って聞いた。「先生は、正しい人を引き立てて、曲がった悪い人よりも上の位に置けば、曲がった悪い人も正しくなると言われましたが、どういう意味でしょうか」。

子夏は言った。「それは深い意味があるな。昔、舜(しゅん)が天下を治めた時、大勢の中から選んで皐陶(こうよう)(※)を引き立てたため、仁でない者たち(悪い人たち)は遠ざかっていった。また、湯(とう)(※)が天下を治めた時、大勢の中から伊尹(いいん)(※)を選んで引き立てたため、仁でない人たち(悪い人たち)は遠ざかっていった。このことを先生は言われたのであろう」


(※)皐陶……有虞氏。字は庭堅。舜に獄官の長として仕えた。

(※)湯……名は履(り)。殷の始祖。

(※)伊尹……姓は伊。名は摯(し)。殷室創業の功があったとされる伝説の英雄。小説家・宮城谷昌光氏のデビュー作『天空の舟』は、伊尹のことを描いている。


【読み下し文】

樊遅(はんち)、仁(じん)を問(と)う。子(し)曰(いわ)く、人(ひと)を愛(あい)す。知(ち)を問(と)う。子(し)曰(いわ)く、人(ひと)を知(し)る。樊遅(はんち)未(いま)だ達(たっ)せず。子(し)曰(いわ)く、直(なお)きを挙(あ)げて諸(これ)を枉(まが)れるに錯(お)き、能(よ)く枉(まが)れる者(もの)をして直(なお)からしむ。樊遅(はん)退(しりぞ)きて子夏(しか)を見(み)て曰(いわ)く、郷(さき)にや吾(われ)夫子(ふうし)に見(まみ)えて知(ち)を問(と)うに、子(し)曰(いわ)く、直(なお)きを挙(あ)げて諸(これ)を枉(まが)れるに錯(お)き、能(よ)く枉(まが)れる者(もの)をして直(なお)からしむ、と。何(なん)の謂(い)いぞや。子夏(しか)曰(いわ)く、富(と)めるかな、言(げん)や。舜(しゅん)、天下(てんか)を有(たも)ち、衆(しゅう)より選(えら)んで皐陶(こうよう)を挙(あ)げて、不仁者(ふじんしゃ)、遠(とお)ざかる。湯(とう)、天下(てんか)を有(たも)ち、衆(しゅう)より選(えら)んで伊尹(いいん)を挙(あ)げて、不仁者(ふじんしゃ)、遠(とお)ざかれり。


【原文】

樊遲問仁、子曰愛人、問知、子曰知人、樊遲未逹、子曰、擧直錯諸枉、能使枉者直、樊遲退、見子夏曰、鄕也吾見於夫子而問知、子曰、擧直錯諸枉、能使枉者直、何謂也、子夏曰、富哉言乎、舜有天下、選於衆擧皐陶、不仁者遠矣、湯有天下、選於衆擧伊尹、不仁者遠矣、


*299話と300話は長文のため、今回は2話のみの掲載となります。


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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。著書に『超訳孫子の兵法』、『吉田松陰の名言100』、『武士道の名言100』、『真田幸村の凛とした生き方』(以上、アイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術』(誠文堂新光社)などがある。

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