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論語 全文完全対照版 野中根太郎

第16回

43話~45話

2016.08.09更新

読了時間

43 すべては心が込もり、徳があって本物となる


【現代語訳】

孔子先生は言われた。「その人にもし仁の心がなく、徳もなければ、よいものを生み出すことはない。礼儀や音楽においても同じで、見かけが立派であったとしても本物ではない」。


【読み下し文】

子(し)曰(いわ)く、人(ひと)にして不仁(ふじん)ならば、礼(れい)を如何(いかん)。人(ひと)にして不仁(ふじん)ならば、楽(がく)(※)を如何(いかん)。


(※)楽……音楽のこと。当時は礼と並んで人と社会を治めるために重要視された。合わせて「礼楽」ともいわれる。


【原文】

子曰、人而不仁、如禮何、人而不仁、如樂何、


44 礼儀で一番大切なのは誠実な心が込もっていることである


【現代語訳】

林(りん)放(ぽう)(※)が礼の本質をたずねた。孔子先生は言われた。「これは重要な問題である。礼の本質は誠実な心があるということだ。だから儀式においては派手にするより、むしろ質素なほうがよい。喪儀においても、世間体を考えて派手にするよりも、心から哀悼(あいとう)の情があることのほうが大切だ」。


(※)林放……孔子の門人で魯の国の人といわれるが、詳しいことはわかっていない。


【読み下し文】

林(りん)放(ぽう)、礼(れい)の本(ほん)を問(と)う。子(し)曰(いわ)く、大(だい)なるかな問(と)うこと。礼(れい)は其(そ)の奢(おご)らんよりは寧(むし)ろ倹(けん)なれ、喪(そう)は其(そ)の易(ととの)わんより寧(むし)ろ戚(いた)め。


【原文】

林放問禮之本、子曰、大哉問、禮與其奢也寧儉、喪與其易也寧戚、


45 国の秩序を乱してはいけない


【現代語訳】

孔子先生は言われた。「中華の外の野蛮と思っている国にも君主がちゃんといる。今の中華は君主がいないのと同じで乱れている。これではいけない」。


【読み下し文】

子(し)曰(いわ)く、夷狄(いてき)(※)の君(きみ)あるは、諸夏(しょか)(※)の亡(な)き如(ごと)くならざるなり。


(※)夷狄……東夷北狄といって、中華周辺の未開民族を指す言葉。東夷(とうい)、西成(せいじゅつ)、南蛮(なんばん)、北狄(ほくい)と分けることもある。

(※)諸夏……夏は華と同じ。当時の中国人は、自分たちを世界の中心と考えて「諸夏」あるいは「中華」といった。


【原文】

子曰、夷狄之有君、不如諸夏之亡也、

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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。海外に進出し、日本および日本人が外国人から尊敬され、その文化が絶賛されているという実感を得たことをきっかけに、日本人に影響を与えつづけてきた古典の研究を更に深掘りし、出版企画を行うようになる。近年では古典を題材にした著作の企画・プロデュースを手がけ、様々な著者とタイアップして数々のベストセラーを世に送り出している。著書に『超訳 孫子の兵法』『吉田松陰の名言100-変わる力 変える力のつくり方』(共にアイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術─相手の心を動かす「義」の思考方法』『全文完全対照版 論語コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 孫子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 老子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 菜根譚コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』(以上、誠文堂新光社)などがある。

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