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よみものどっとこむ

第166回

431話~432話

2017.03.24更新

読了時間

【 この連載は… 】 毎日数分で「東洋最大の教養書」を読破しよう! 『超訳 孫子の兵法』の野中根太郎氏による、新訳論語完全版。読みやすく現代人の実生活に根付いた超訳と、原文・読み下し文を対照させたオールインワン。

431 人が長く賞讃するのは富でなく徳である


【現代語訳】

〈孔子先生は言われた。「詩経はこう言っている。『まことに富がすべてではない。人が本当に賞讃し続けるのは、常人と異なるほどの高い徳があるからである』」〉。斉の景公は、馬四千頭を持つほどの富があった。しかし、その死後、誰も景公のことを賞讃していない。伯夷、叔斉は首陽山に隠れて餓死してしまったが、人々は今もその徳を賞讃している。詩経の言葉は、このようなことを教えているのだろう」。


【読み下し文】

〈孔子(こうし)曰(いわ)く、誠(まこと)に富(とみ)を以(もっ)てせず。亦(ま)た祇(た)だ異(い)を以(もっ)てするのみ、とあり。〉斉(せい)の景公(けいこう)には馬(うま)千(せん)駟(し)有(あ)り。死(し)するの日(ひ)、民(たみ)、徳(とく)として称(しょう)する無(な)し。伯夷(はくい)、叔斉(しゅくせい)は首陽(しゅよう)の下(もと)に餓(う)う。民(たみ)、今(いま)に到(いた)るまで之(これ)を称(しょう)す。其(そ)れ、斯(こ)の謂(い)いか。


【原文】

齊景公有馬千駟、死之日、民無德而稱焉、伯夷叔齊餓于首陽之下、民到于今稱之、其斯之謂與、


(※注)……冒頭の〈 〉でくくった二文は、288話に間違えて入れられたとされ、この論語に入れて解釈されている。本書でもここに入れて解釈する。


432 君子は特別扱い(えこひいき)しない


【現代語訳】

陳亢(ちんこう)(※)が孔子先生の子である伯魚(鯉)にたずねた。「先生のお子であるあなたは、何か特別なことを教わっていますか」。

伯魚は言った。「いいえ、今まで特にそのようなことは何もありません。ただ、このようなことがありました。ある時、父が縁側に一人で立っていると、その前の庭を小走りで通り過ぎようとしました。その時、『お前は詩経を学んだか』と聞かれましたので、『いいえ、まだです』と答えました。すると、『詩を学ばないと、まともな物言いができないぞ』と言われました。そこで私は、すぐに詩経を学び始めました。また、しばらくして、父が縁側に一人で立っている時、その前を小走りで庭を通り過ぎようとしました。すると、『お前は、礼を学んだか』と聞かれました。『まだ学んでいません』とお答えしました。父は言いました。『礼を学ばないと一人前として世の中で立っていけないぞ』。そこで私はすぐに礼のことを学び始めました。以上の二つのことぐらいです」。

陳亢は退出して、喜んで言った。「一つの質問で三つの有益な教えを聞くことができた。詩の大切なことを教えられ、礼の大切なことを教えられ、そして、君子は自分の子といえども特別扱いをするものではないことを教えられた」。


【読み下し文】

陳亢(ちんこう)、伯魚(はくぎょ)に問(と)うて曰(いわ)く、子(し)も亦(ま)た異聞(いぶん)(※)有(あ)るか。対(こた)えて曰(いわ)く、未(いま)だし。嘗(かつ)て独(ひと)り立(た)つ。鯉(り)、趨(はし)(※)りて庭(にわ)を過(す)ぐ。曰(いわ)く、詩(し)を学(まな)びたるか。対(こた)えて曰(いわ)く、未(いま)だし。詩(し)を学(まな)ばざれば、以(もっ)て言(い)う無(な)し。鯉(り)、退(しりぞ)きて詩(し)を学(まな)ぶ。他日(たじつ)又(また)独(ひと)り立(た)つ。鯉(り)、趨(はし)りて庭(にわ)を過(す)ぐ。曰(いわ)く、礼(れい)を学(まな)びたるか。対(こた)えて曰(いわ)く、未(いま)だし。礼(れい)を学(まな)ばざれば、以(もっ)て立(た)つ無(な)し。鯉(り)、退(しりぞ)きて礼(れい)を学(まな)ぶ。斯(こ)の二者(にしゃ)を聞(き)く。陳亢(ちんこう)退(しりぞ)き、喜(よろこ)びて曰(いわ)く、一(いち)を問(と)うて三(さん)を得(え)たり。詩(し)を聞(き)き、礼(れい)を聞(き)き、又(また)君子(くんし)の其(そ)の子(こ)を遠(とお)ざくる(※)を聞(き)けり。


(※)陳亢……孔子の門人(あるいは子貢の門人ともいわれている)の子禽(しきん)の本名。子禽は字(10話参照)。

(※)異聞……特別な教え。一人だけ聞いたこと。

(※)趨……小股に走ること。目上の人の前を過ぎる時の作法。

(※)其の子を遠ざくる……ひいきにしない。


【原文】

陳亢問於伯魚曰、子亦有異聞乎、對曰、未也、嘗獨立、鯉趨而過庭、曰、學詩乎、對曰、未也、不學詩無以言、鯉退而學詩、他日又獨立、鯉趨而過庭、曰、學禮乎、對曰、未也、不學禮無以立、鯉退而學禮、聞斯二者、陳亢退而喜曰、問一得三、聞詩、聞禮、又聞君子之遠其子也、


*432話が長文のため、今回は2話のみの掲載となります。


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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。著書に『超訳孫子の兵法』、『吉田松陰の名言100』、『武士道の名言100』、『真田幸村の凛とした生き方』(以上、アイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術』(誠文堂新光社)などがある。

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