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よみものどっとこむ

第184回

466話

2017.04.19更新

読了時間

【 この連載は… 】 毎日数分で「東洋最大の教養書」を読破しよう! 『超訳 孫子の兵法』の野中根太郎氏による、新訳論語完全版。読みやすく現代人の実生活に根付いた超訳と、原文・読み下し文を対照させたオールインワン。

466 やむにやまれぬ志を貫きたい


【現代語訳】

子路が孔子先生のお供をしての旅行中、道に遅れて先生を見失った。その時、つえの先にかごをひっかけた老人に出会った。子路はたずねた。「あなたは私の先生を見ませんでしたか」。

老人は言った。「口ばかり動かして体を働かさず、五穀(※)の区別もわからないのを、どうして先生と言えるのか」。そして、杖を地に突き立てて草を刈り始めた。子路は、相手が老人なので手を組み合わせて敬意を表して、次の答えを待った。老人は、その子路の態度に好意を持ったのか、子路をとどめて、その日はもう遅いので、家に連れて帰って泊まらせた。そして、鶏(にわとり)をしめて、きび飯を炊いてもてなし、二人の子供を呼んで会わせ、子路を歓待した。翌日、子路は先生に追いつき、このことを報告した。

先生は、「それは世を避けた隠者だろう」と言われた。そして、子路をもう一度行かせてみたが、老人はいなかった。

子路は家にいた二人の子供に言った。「人が世に出て仕官しなければ、君臣の義はなくなる。昨夜、お父上が二人を私に会わせたのは、長幼の序を重んじられたからだろうが、長幼の序さえ廃すべきでないのに、さらに大事な君臣の義を廃することなどできはしない。ただ乱世のために、その身をけがされないことを欲して、この君臣の大義を乱してはならない。君子が世に出て仕えるのは、名誉やお金よりも、その大義を行うためである。今の世の中に正しい道が行われていないということは、我々もよくわかっているのだ」。


(※)五穀……農産物一般のことで、稲(いね)、黍(きび)、稷(あわ)、麦(むぎ)、菽(まめ)の五つを指すことが多い。


【読み下し文】

子路(しろ)、従(したが)いて後(おく)る。丈人(じょうじん)(※)の杖(つえ)を以(もっ)て篠(かご)を荷(にな)うに遇(あ)う。子路(しろ)問(と)うて曰(いわ)く、子(し)は夫子(ふうし)を見(み)たるか。丈人(じょうじん)曰(いわ)く、四体(したい)勤(つと)めず、五穀(ごこく)分(わ)かたず、孰(たれ)をか夫子(ふうし)と為(な)すや、と。其(そ)の杖(つえ)を植(た)てて芸(くさぎ)(※)る。子路(しろ)拱(きょう)(※)して立(た)つ。子路(しろ)止(とど)めて宿(やど)せしめ、雞(にわとり)を殺(ころ)し黍(きびめし)を為(つく)りて之(これ)に食(く)らわしめ、其(そ)の二子(にし)を見(まみ)えしむ。明日(めいじつ)子路(しろ)行さり、以もつて告つ ぐ。子し 曰いわく、隠いん者じやなり、と。子し路ろをして反かえりて之これを見み しむ。至いたれば則すなわち行(さ)れり。子路(しろ)曰(いわ)く、仕(つか)えざるは義(ぎ)無(な)し。長幼(ちょうよう)の節(せつ)(※)、廃(はい)すべからざるなり。君臣(くんしん)の義(ぎ)は、之(これ)を如何(いかん)ぞ其(そ)れ之(これ)を廃(はい)せん。其(そ)の身(み)を潔(きよ)くせんと欲(ほっ)して大倫(たいりん)(※)を乱(みだ)る。君子(くんし)の仕(つか)うるや、其(そ)の義(ぎ)を行(おこ)なわんとするなり。道(みち)の行(おこ)なわれざるは、已(すで)に之(これ)を知(し)れり。


(※)丈人……老人。

(※)拱……両手を胸の前で組み、親指を支え合わせて恭しくすること。

(※)芸……草を除く。

(※)長幼の節……長者と幼者の間の道徳。「礼」「節」「序」のこと。

(※)大倫……君臣の義。なお、五倫とは「君臣」「父子」「夫婦」「兄弟」「朋友」の間で守る道のこと。


【原文】

子路從而後、遇丈人以杖荷蓧、子路問曰、子見夫子乎、丈人曰、四體不勤、五穀不分、孰爲夫子、植其杖而芸、子路拱而立、止子路宿、殺雞爲黍而食之、見其二子焉、明日子路行以吿、子曰、隱者也、使子路反見之、至則行矣、子路曰、不仕無義、長幼之節、不可廢也、君臣之義、如之何其廢之、欲潔其身而亂大倫、君子之仕也、行其義也、衜之不行、已知之矣、


*466話が長文のため、今回は1話のみの掲載となります。



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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。著書に『超訳孫子の兵法』、『吉田松陰の名言100』、『武士道の名言100』、『真田幸村の凛とした生き方』(以上、アイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術』(誠文堂新光社)などがある。

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