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論語 全文完全対照版 野中根太郎

第73回

205話~207話

2016.11.07更新

読了時間

205 自分のためより人のためにお金を使い役立てる姿勢はすばらしい


【現代語訳】

孔子先生は言われた。「伝説の聖王である禹(う)(※)は文句のいいようがないほどすばらしい人だった。自分の食べるものは質素にして、先祖への供物を立派にして孝を尽くした。また、自分の着るものは粗末にして、祭礼服は美しくした。さらに自分の住むところを簡素にして、公共の用水路の整備に力を入れた。このように禹は非難すべきところがなかった」。


(※)禹……夏王朝を建てた伝説の優れた帝王。舜の後、人民の支持でやむなくこれを引き継いだとされる。


【読み下し文】

子(し)曰(いわ)く、禹(う)は吾(わ)れ間然(かんぜん)するなし。飯食(いんしょく)を菲(うす)くして、孝(こう)を鬼神(きしん)に致(いた)し、衣服(いふく)を悪(あ)しくして、美(び)を黻冕(ふつべん)(※)に致(いた)し、宮室(きゅうしつ)を卑(ひく)くして、力(ちから)を溝洫(こうきょく)(※)に尽(つく)す。禹(う)は吾(わ)れ間然(かんぜん)するなし。


(※)黻冕……祭祀に用いる礼服。「黻」が前掛け、「冕」は冠のこと。

(※)溝洫……灌漑の水路。公共の用水路。


【原文】

子曰、禹吾無間然矣、菲飮食、而致孝乎鬼神、惡衣服、而致美乎黻冕、卑宮室、而盡力乎溝洫、禹吾無間然矣、


子罕(しかん)第九


206 利を得ることにも正しい道がある


【現代語訳】

孔子先生は利についてめったに語られなかった。言われる時でも、結局、利は天の命ずるところによるものとされるか、仁すなわち相手の人にとってもよいことになるものとされることが常だった。


【読み下し文】

子(し)、罕(まれ)に利(り)を言(い)う。命(めい)と与(とも)にし、仁(じん)と与(とも)にす。


【原文】

子罕言利與命與仁、


207 できる人は必ず可愛いところがある


【現代語訳】

近くにある達(たっ)巷(こう)という村のある人が言った。「偉大だなあ、孔子は。博学で何でも知っていて、何でもできる。そのために一つの専門のことで名を成すことがない」。

孔子先生はこれを聞いて、照れて謙そんするように言われた。「私も何かで有名になろうかな。御者(馬車を走らせる者)がいいかな、弓(射撃)がいいかな。私はやっぱり御者がいいな」。


【読み下し文】

達(たっ)巷(こう)の党人(とうじん)曰(いわ)く、大(だい)なるかな孔子(こうし)。博学(はくがく)にして名(な)を成(な)すところなし、と。子(し)これを聞(き)き、門(もん)弟子(ていし)に謂(い)いて曰(いわ)く、吾(われ)、何(いず)れを執(と)らん。御(ぎょ)を執(と)らんか、射(しゃ)を執(と)らんか。吾(われ)は御(ぎょ)を執(と)らん。


【原文】

逹巷黨人曰、大哉孔子、博學而無所成名、子聞之、謂門弟子曰、吾何執、執御乎、執射乎、吾執御矣、

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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。海外に進出し、日本および日本人が外国人から尊敬され、その文化が絶賛されているという実感を得たことをきっかけに、日本人に影響を与えつづけてきた古典の研究を更に深掘りし、出版企画を行うようになる。近年では古典を題材にした著作の企画・プロデュースを手がけ、様々な著者とタイアップして数々のベストセラーを世に送り出している。著書に『超訳 孫子の兵法』『吉田松陰の名言100-変わる力 変える力のつくり方』(共にアイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術─相手の心を動かす「義」の思考方法』『全文完全対照版 論語コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 孫子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 老子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 菜根譚コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』(以上、誠文堂新光社)などがある。

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