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論語 全文完全対照版 野中根太郎

第74回

208話~210話

2016.11.08更新

読了時間

208 理由を考えて礼を行う


【現代語訳】

孔子先生は言われた。「麻冕(まべん)(赤黒色に染めた麻でつくった冠(かんむり))を用いるのが古礼だが、手間がかかりすぎるので今は純(いと)(白い絹糸でつくった冠(かんむり))になった。これは節約するということなので、私もこれに従う。臣下が君主に対して堂下で礼をするのが古礼であるが、今では堂上で君主と並んで礼をしている。しかし、これは臣下のごう慢な気持から来ているので私は古礼に従う」。


【読み下し文】

子(し)曰(いわ)く、麻冕(まべん)は礼(れい)なり。今(いま)や純(いと)なるは倹(けん)(※)なり。吾(われ)は衆(しゅう)に従(したが)わん。下(しも)に拝(はい)するは礼(れい)なり。今(いま)や上(かみ)に拝(はい)す、泰(たい)(※)なり。衆(しゅう)に違(ちが)うと雖(いえど)も、吾(われ)は下(した)にてするに従(したが)わん。


(※)倹……倹約、節約。

(※)泰……ここでは偉そうに、傲慢にの意味。


【原文】

子曰、麻冕禮也、今也純儉、吾從衆、拜下禮也、今拜乎上泰也、雖違衆、吾從下、


209 孔子の人柄


【現代語訳】

孔子先生は、人が陥りやすい四つの態度をなされない円満な方であった。四つの態度とは、(一)意地を張らない、(二)決めつけない、(三)がんこにならない、(四)我を張らない、の四つである。


【読み下し文】

子(し)、四(し)を絶(た)つ。意(い)するなく、必(ひつ)するなく、固(こ)なるなく、我(が)なるなし。


【原文】

子絶四、毋意、毋必、毋固、毋我、


210 自分の進むべき道に絶対の自信と覚悟を持つ


【現代語訳】

孔子先生が匤(きょう)の国で殺されそうになった。その時、先生は言われた。「周(しゅう)の文(ぶん)王(おう)(※)は既に亡くなっていてこの世にはいない。だが、文王が広めた周の文化は、この私の身にあるではないか。もし、天がこの文化をなくしてしまうつもりなら、後に生まれてきた私にその文化を学び、身につけさせはしなかったであろう。天はこの文化を伝えていくつもりなのだ。だから匤の人たちが私を殺そうとしても、できるものではない」。


(※)文王……周王朝の建国者、武王の父。周の国の道徳文化をつくり、発展させた人物。孔子が尊敬する人の一人。


【読み下し文】

子(し)、匡(きょう)に畏(い)す(※)。曰(いわ)く、文(ぶん)王(おう)、既(すで)に没(ぼつ)し、文玆(ぶんここに)にあらずや。天(てん)の将(まさ)に斯(こ)の文(ぶん)を喪(ほろ)ぼさんとするや、後死(こうし)の者(もの)(※)、斯(こ)の文(ぶん)に与(あず)かるを得(え)ざらしめん。天(てん)の未(いま)だ斯(こ)の文(ぶん)を喪(ほろ)ぼさざるや、匡(きょう)人(ひと)、其(そ)れ予(われ)を如(い)何(かん)せん。


(※)匡に畏す……「匡」は衛の国の地名。「畏」はおそるべき事件のこと。一説によると、孔子が魯の軍務大臣の陽虎に間違えられて、匡の人は敵と思ったらしい。

(※)後死の者……文王より後に死ぬ者のことで、ここでは孔子のことを指す。


【原文】

子畏於匡、曰、文王既没、文不在茲乎、天之將喪斯文也、後死者不得與於斯文也、天之未喪斯文也、匡人其如予何、

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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。海外に進出し、日本および日本人が外国人から尊敬され、その文化が絶賛されているという実感を得たことをきっかけに、日本人に影響を与えつづけてきた古典の研究を更に深掘りし、出版企画を行うようになる。近年では古典を題材にした著作の企画・プロデュースを手がけ、様々な著者とタイアップして数々のベストセラーを世に送り出している。著書に『超訳 孫子の兵法』『吉田松陰の名言100-変わる力 変える力のつくり方』(共にアイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術─相手の心を動かす「義」の思考方法』『全文完全対照版 論語コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 孫子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 老子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 菜根譚コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』(以上、誠文堂新光社)などがある。

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