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第4回

全身のセルフ筋膜リリース

2016.10.14更新

読了時間

【 この連載は… 】 テレビ、雑誌などでお馴染みの「姿勢」の第一人者が、疲れない体をつくる知識とメソッドを徹底紹介。医学的理論に基づいた「全身のつながり」を意識した姿勢改善エクササイズで、腰痛や肩こり、慢性疲労などの不調を劇的に改善します。
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 前回、深筋膜には筋外膜から筋線維が入り込むことを説明しました。その深筋膜は、関節を越えて、いくつかの筋肉をつないでいます。そのつなぎ方には14通りの配列があり、それぞれが全身を覆っています。

 実際には、理学療法士が患者様を評価する中で、どの配列に問題があるかをつきとめて治療に至ります。そして、その後で家庭でもできるエクササイズとして、セルフ筋膜リリースを指導します。

 でも、ご安心ください。病院にかかるほどの症状でなければ、自分自身でも充分ケアできます。

 筋膜リリースは筋肉のストレッチングとは違います。ストレッチングは1つの筋肉を一方向に30秒~60秒ほど伸ばしていく方法ですが、筋膜リリースは縦・横・斜めに走行する深筋膜のコラーゲン線維をゆっくり、じっくり、様々な方向に解きほぐす方法です。

 筋膜の一番深い所にあるのは筋内膜で、筋肉の1本1本の筋線維を覆っています。深筋膜がゆるみ、筋肉の表面の筋外膜がゆるめば、筋外膜が連続してつながっていく筋周膜と筋内膜もゆるみます。

 筋内膜がゆるむと、1本1本の筋線維が筋力を復活させ、柔軟性も改善し、運動のパフォーマンスも向上します。

 筋膜をリリースするときは、ゆっくりじっくり行うことが大切です。多方向に走行するコラーゲン線維をリリースするには90秒以上時間をかけるのが理想です。無理せず、勢いをつけず、痛みを我慢せず、その人ごとに硬く緊張している部分に意識を集中して、ゆっくり行いましょう。フライパンの上の固形バターが溶けて薄くなり、周りに広がるようなイメージです。

 1日の中で、朝の寝起きのとき、午後疲れが出始めたとき、そして夜のお風呂上がりなど、何回かに分けて反復することで体がリセットされます。夜まとめてやろうと思っても、疲れが溜まりすぎて、時間はかかりますし、やるのも嫌になってしまいます。

すべての体操を寝起きや午後にやらなくても構いません。仕事で座っていれば、座ってできるリリースを、立っていれば立ってできるリリースを、夜、時間があればいくつかのリリースを、とにかく頻回に行うことが理想です。

 最初は90秒間リリースするのは難しいので、20秒、30秒から始め、楽にできるようになれば時間を延ばして90秒以上できるようにしましょう。自分の体の内部に意識を集中し、自分の体の動きや位置関係に注意を払い、気持ちよくなるように時間を延ばしていきましょう。

 ここでは、縦方向、横方向、斜め方向の筋膜をリリースする方法を紹介します。これが基本になります。その後、自分の気になる部分のケアへと進むのが理想です。各部分に関しては今後の掲載で説明していきますね。

①縦方向:筒状に伸ばすL字型筋膜リリース

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 これは、体の縦方向の筋膜のつながりをリリースするのに効果的です。体を前に傾け、両手をダイニングテーブルなどにのせて体重を支えます。両足が筒のように伸びて床の中に入り込むように意識します。

 続いて、上半身もお尻と一緒に腕の方向に伸ばしていきます。尾骨を中心に上下に筒状に伸ばすイメージです。股関節をしっかり直角に曲げることが大切です。30秒間リリースしましょう。

 これを3回繰り返してください。慣れてきたら時間を90秒まで延ばしていってください。

 腰痛のある人や、ももの裏やふくらはぎの筋肉が硬い人、猫背の人にも効果的です。

 あごが上がる、腰が丸まってしまう、お尻が前に出すぎる、逆に後ろに残っているというのはNGです。

②横方向:「シェーポーズ」筋膜リリース

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 これは、体の横方向の筋膜のつながりをリリースするのに効果的です。片手を、ダイニングテーブルや机、または椅子の背におきます。テーブルについた側と反対側の足をテーブル側に動かして、体の前で交差させます。両足が膝の前後で密着するようにしてください。

 続いて、前に交差した足が床の中に入り込むように意識したまま、片手を頭上に伸ばします。頭上に上げた手をテーブル側へと倒していき、体全体の横側を30秒間リリースします。

 左右をそれぞれ3回繰り返してください。慣れてきたら時間を90秒まで延ばしていってください。

 左右で伸ばしにくい方向を、時間をかけてほぐすようにしましょう。伸ばしにくい方にしっかり時間をかけることで、腰の横側に痛みがある人は楽になっていきます。また、骨盤の左右の高さの違いも整ってきます。

 体の前で交差した足が床から浮いてしまう、その側の骨盤が上がってしまう、交差した両足の膝が前後に離れているというのはNGです。

③斜め方向:「見返り美人」筋膜リリース

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 これは、体の斜め方向の筋膜のつながりをリリースするのに効果的です。歩くときと同じ要領で、左手と右足を前に出します。左手はダイニングテーブルや机、または椅子の背におきます。前に出した膝は軽く曲げ、後ろの膝はまっすぐ伸ばして足全体が筒のように伸びて床の中に入り込んでいくように意識します。そして右手を天井方向に伸ばして20秒間リリースします。両足は床につけたままです。

 次に、上半身を右に回して、右手を右斜め後方へと伸ばしていき20秒間リリースします。視線は右手を見るようにします。

 続いて、左肘を曲げてテーブルあるいは椅子の背に前腕を付けたまま、さらに体を捻って20秒間リリースします。

 左右を逆にして、同じように行ってください。左右をそれぞれ2~3回繰り返します。慣れてきたら時間も長くしてください。左右で伸ばしにくい方向を、時間をかけてほぐすようにしましょう。

 このリリースは、肩こりや腰痛、ふくらはぎの張りだけでなく、歩き方を綺麗に整えるのにも有効です。

 後ろの膝が曲がってしまう、前の膝が伸びてしまう、後ろの踵が浮いてしまう、肘が肩よりも後ろについてしまうなどはNGです。


 これらの3つのリリースは、全身を広く覆っている深筋膜をリリースするのに効果的な方法です。それぞれのリリースをする際に、肩甲骨の周りが引っかかる、腰のあたりが張る、ももの裏が引っかかる、ふくらはぎが張る……など、人によって感想が違うと思います。

 それでいいのです。その違和感によって、自分の体のどの部分の筋膜に問題が生じているのかを、自己診断しているともいえるのです。

 以上3つの筋膜リリースを、是非、試してみてください。2週間続けると、体が軽くなります。さらに2週間続けると、周りの人からも「姿勢が良くなったね」、「若返ったみたい」、「きれいになったね」……など、いい印象が持たれますよ。その後も、できる範囲で継続するようにしてくださいね。

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著者

竹井 仁

首都大学東京健康福祉学部理学療法学科教授。医学博士、理学療法士、OMT。教育機関で学生教育を実践するかたわら、病院と整形外科クリニックにおいて臨床も実践。各種講習会も全国で展開。専門は運動学・神経筋骨関節系理学療法・徒手療法。解剖学にて医学博士取得。「世界一受けたい授業」「ためしてガッテン」「林修の今でしょ!講座」など多数のメディアに出演。著書多数。 

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