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子どもの敏感さに困ったら 児童精神科医が教えるHSCとの関わり方 長沼睦雄

第21回

【HSCの本】<子育てアドバイス>勉強でつまずきやすいこと

2017.11.24更新

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5人に1人といわれる敏感気質(HSP/HSC)のさまざまな特徴や傾向を解説。「敏感である」を才能として活かす方法を紹介します。
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■苦手を克服しようとするより、得意をどんどん伸ばすほうがいい

 IQは高いけれども勉強が苦手な子の中には、学習症(LD)がある場合があります。

 学習症とは、全般的な知能発達には遅れはないものの、話す聞く、読む書く、計算・推論するなどの能力の習得や使用に困難がある状態をいいます。

 視覚や聴覚の脳内の情報処理が苦手なことが原因であり、話すと聞く、読みと書き、書きと計算の組み合わせで苦手が起こりやすく、それらが単独あるいは組み合わせて起こります。順番に記憶したり処理したり構成したりする継次処理が弱い子と、一度に同時に行う同時処理が苦手な子がいます。

 しかし、継次処理の苦手な子は、同時処理能力が秀でていることが多い。脳の働きでいうと右脳系です。何かを見てパッと答えるとか、イメージや空想を広げてサッと絵を描くとか、直感的にひらめきを発揮することが得意なのです。

 勉強というのは、どうしても継次処理的なことが多くなりますので、継次処理が苦手な子には、得意な同時処理を活用してあげる必要があります。たとえば、最初に手順やゴールを設定してあげて、全体像を把握しやすくしてあげる、「いまやっているのはこの部分」ということがわかるようにしてあげると、混乱や抵抗感が薄らぐでしょう。

 HSCの子はイメージも感情も感覚も豊かなのでとても記憶力がいいのですが、それは経験の記憶がよいためです。勉強に必要とされるのは左脳的な継次処理による文字・数字・記号の処理ですから、右脳系のタイプは、あまり得意とは言えません。記憶の質が違うのです。

 勉強に限ったことではありませんが、子どもがどういうことが苦手で、どういうことが得意かということがわかってきたら、苦手を克服しようとするよりは、まず得意なものを伸ばすことを考えてあげましょう。

 生まれもって能力に凸凹がある場合、放置すると苦手を避け、得意を伸ばすように自然になっていきます。ですから発達の早期は、苦手を手伝ってあげて乗り越えられるような支援が必要です。やがて得意不得意がはっきりしてきて、食わず嫌いが起きたり、反発が起きるようなら、苦手なことより得意なことで勝負させてあげてください。

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著者

長沼 睦雄

十勝むつみのクリニック院長。1956年山梨県甲府市生まれ。北海道大学医学部卒業後、脳外科研修を経て神経内科を専攻し、日本神経学会認定医の資格を取得。北海道大学大学院にて神経生化学の基礎研究を修了後、障害児医療分野に転向。北海道立札幌療育センターにて14年間児童精神科医として勤務。平成20年より北海道立緑ヶ丘病院精神科に転勤し児童と大人の診療を行ったのち、平成28年に十勝むつみのクリニックを帯広にて開院。HSC/HSP、神経発達症、発達性トラウマ、アダルトチルドレン、慢性疲労症候群などの診断治療に専念し「脳と心と体と食と魂」「見えるものと見えないもの」のつながりを考慮した総合医療を目指している。

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