第140回
368話~369話
2017.02.15更新
【 この連載は… 】 毎日数分で「東洋最大の教養書」を読破しよう! 『超訳 孫子の兵法』の野中根太郎氏による、新訳論語完全版。読みやすく現代人の実生活に根付いた超訳と、原文・読み下し文を対照させたオールインワン。
368 うらみには、公平無私の正直さで報いたい
【現代語訳】
ある人が質問した。「うらみに報いる場合に徳でもってするというのはどうでしょうか」。
孔子先生は言われた。「では、徳に報いる場合に何をもって報いたらよいのであろうか。うらみに対しては、公平無私の正直さで報いて、徳には徳で報いるのがよかろう」。
【読み下し文】
或(ある)ひと曰(いわ)く、徳(とく)(※)を以(もっ)て怨(うら)みに報(むく)いたらば何如(いかん)。子(し)曰(いわ)く、何(なに)を以(もっ)て徳(とく)に報(むく)いん。直(なお)きを以(もっ)て怨(うら)みに報(むく)い、徳(とく)を以(もっ)て徳(とく)に報(むく)いん。
(※)徳……ここでは恩恵のことを指す。一般で徳というと人として備えたい立派な人格のことであるが、ここでは単に恩恵、善意を意味する。なお、老子に「怨みに報ゆるに徳を以てす」という有名な言葉があるが、孔子はこの立場をとらない。
【原文】
或曰、以德報怨、何如、子曰、何以報德、以直報怨、以德報德、
369 どんな運命であろうとも、天をうらんだり、人をとがめたりしない
【現代語訳】
孔子先生は言われた。「私を知る人はいないな」。
それを聞いて子貢が言った。「どうして先生を知らないことがありましょうか」。
先生は言われた。「私を国政に生かそうという君主がいなかったということだ。しかし、だからといって、天をうらんだりしない。人をとがめて人のせいにもしない。ただ身近なことから学んでいき、高い領域にまで達してきた。こういう私を本当に知っているのは天だけであろうな」。
【読み下し文】
子(し)曰(いわ)く、我(われ)を知(し)るもの莫(な)きかな。子貢(しこう)曰(いわ)く、何(なん)為(す)れぞ其(そ)れ子(し)を知(し)る莫(な)からんや。子(し)曰(いわ)く、天(てん)を怨(うら)みず、人(ひと)を尤(とが)めず。下学(かがく)して上達(じょうたつ)す(※)。我(われ)を知(し)る者(もの)は、其(そ)れ天(てん)なるか。
(※)下学して上達す……身近な小さなことから学び、だんだんに高い領域に上がっていくこと。
【原文】
子曰、莫我知也夫、子貢曰、何爲其莫知子也、子曰、不怨天、不尤人、下學而上逹、知我者其天乎、
*369話が長文のため、今回は2話のみの掲載となります。
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